「じゅんちゃんと遊ぶのは好きだった。レッスンの時もじゃれ合うのは楽しかった 」
まー君は1度下を向いて、それからじっとボクの目を見て話し出した。
かわいいじゅんちゃん。
オーディションなんかなくて、履歴書だけで社長の目に止まった数少ない人。
今だったらわかると思うけど、それってすごいことでさ。当時から別格扱いだった。もちろん子供だった僕らにはそこまでは分からなかった。でも、ちょっと違うなって思ったのは事実。
でもね、バイバイする時にさ僕達が乗るのは黄色い電車。じゅんちゃんは緑の電車。都会の子なんだって見せつけられている気分だった。
いつだったかじゅんちゃんが翔ちゃんと帰った後で『金魚のフンどもがいるぜ』『金魚じゃねぇか緑の魚?そんなんにくっついてる黄色いフンだ』って悪口を言われた。
それでも僕はじゅんちゃんが好きだったし、にのはもうあの頃から達観してるやつだったから、山Pや俊が食って掛かろうとするのを二人で止めたんだ。
でもね、でもね、あの番組でじゅんちゃんはものすごく可愛がられてて、僕は……。
「スーパーアイドル相葉ちゃんって、絶対にアイドルになれないだろうからせめてあだ名だけででもつけてやろうって……どんなに悔しかったか、悲しかったかわかる?」
「そんな……」
「少しでも隙があればそこから人を食い物にする。お前は色んな人に可愛がられてた……それこそ、滝沢が可愛がってるってことが一番だったかな」
翔さんがプルタブを開けた。言いたくないってこと?知ってたってこと?
「うん、そうなの。どんどん、どんどん、じゅんちゃんがキラキラしてった。それと共に僕は……僕は……。じゅんちゃんが憎くなった!
未満の時もそう!足を引っ張りたくて!そんなこと思う自分が嫌で嫌で。けど、ある日さ」
『なあ、相葉……協力してくんないかな』
『なにおー?』
『相葉にだから言うんだけど、俺さ松本が好きなんだ』
ああ、タッキーもかって思った。
『告白……したいんだけど、あいつ櫻井ばっかじゃん。飯に誘うこともできなくてさ。総武線チームと仲良いからお膳立てしてくれないかな』
何となくわかってた。翔ちゃんから簡単に奪える方法。周りでもそういう子知ってたから。
キラキラかわいいじゅんちゃん。
何にも知らず、翔ちゃんが好きなじゅんちゃん。
僕とは違うじゅんちゃん。
汚れちゃえよって思ったんだ。
「松本……」
まー君は泣いてなかった。
ボクは……血が出てるのも気がつかないくらい口唇を噛み締めていた。
まー君はコンプレックスを利用された。
でも、それはきっと、たきざわくんの取り巻きに植え付けられたんだ。