そして……。
「ニノ……潤を頼むよ」
そう言って深く帽子を被り直して歩き去ろうとするのは、
「しょーさ……」
動けない。
オレは一度伸ばした手を自分からポケットに入れたんだ。
目をそらして俯けば、
「あーもう、やめやめ!」
「やめだね、やめよう」
「そうですね、やめましょう。
この人たちの面倒見切れません」
え?え?何を言ってるの?
「J、あなたが大好きなのは本当です。
翔さんの揺れている気持ちも私達にはわかりすぎるほどわかっていたんです。
だから、あなたの覚悟を知りたかった。
滝沢君がどうとか、翔さんはオレの事を心の底から思ってくれないとか、そんな事だけで終らせられる気持ちなら最初っからやめるべきだったんです。
あなたが本当に、未来永劫翔さんと添い遂げる気がないならね。
だから、私達は一計を高じました。
あなたと翔さんを引き裂こうとしていたんです」
言葉が出ない。
「み、みんな?好きだって言ってくれたのは?」
「好きですよ、大好きです。
でも、Jは俺達を見てくれないじゃないですか。
あなたの幸せだけを祈ってるって言ったのも本当の事です。
だからね、」
だから?
「翔さん!今ここで、Jと別れるか決めてください」
翔さんは……何て答えるの?