ずっと動けないでいるボクとボクの胸に手を当てたまま身じろぎしない翔。
長い時間こうしているような気がする。
翔は瞳を閉じたまま。
僕はその翔の顔を見つめている。
ふぅっと翔が息を吐いた。
「なぜ・・・」
しょう?
「・・・帰る」
「あ、あの・・・」
ボクは・・・。
翔はボクを拒否するんだ・・・ボクのヘビはわかってもらえない。
ボクは潤にはなれない。
ごめんねおにーさん。
おにいさんが残った方がよかったみたい。
ボクがあのお化けと一緒にいけばよかった。
涙が流れる。
戻ろう、御師様のところに。
もう、和にもまぁ君にも智君にも会えない。
翔に拒否されたら、ろーかんどーには戻れない。
何にもなくなっちゃった。
ボクの生きてる価値、なくなっちゃった。
翔がボクに背を向けて歩き出す。
ボクは翔と反対側に歩き出す。
さよなら。
もう、潤って名前も要らない。
御師様、約束守れなくてごめんなさい。
おにいさん、お願い叶えてあげられなくてごめんなさい。
「っ!」
下を向いて歩き出したボクの腕をものすごい力で掴んだのは・・・
「しょう?」
「どこへ行く」
「え?あの・・・」
「朧凵艟はそっちじゃない」
「でも・・・」
「お前が帰る場所はあそこしかないだろう?
俺もまた、帰る場所はあそこだ」
しょう?
「お前は俺の知っている、俺の愛した潤じゃない。
けれど、お前の中にあるそのかけらに俺の中の蛇が反応する。
なら、お前は潤なんだろう」
「ボ・・・ク・・・じゅん・・・だ」
「なぜこうなったのか、何が起こったのか俺に教えてくれ。
お前の言葉で教えてくれよ」
涙の温度が変わった。
心臓に絡み付いたヘビが顔をもたげてる。
「帰ろう」
腕を掴んだまま翔が歩き出す。
ボクは翔に腕を掴まれたまま付いていく。
あの温かい場所に戻れるんだ。
翔と一緒に・・・。