「おい、お前!」
今日から剣術の授業には人が増えた。
邸内の使用人の子供たち。
三宅様を独り占めにできるわけもなく、いずれ潤様を守る立場になるであろう者たちと一緒に稽古をする。
教えてくれる先生もべつのひとだ。
「お前、なんで特別扱いなんだよ」
稽古着に着替えている時に同年代の者から声がかかる。
見れば、僕は囲まれていた。
「特別?」
「そうだよ、本邸に部屋があって三宅様から勉学を習って」
「食事だって若様と一緒」
「この、剣術の授業だってお前のために本邸の道場を使ってる。
普通だったら俺たちは町の道場に通ってある程度実が伴うまで来ることなんか出来ない」
「お前、何者なんだよ!」
特別。
何者。
「なんか喋れよ!
馬鹿にしてんのか!」
焦れた1人が僕を突き飛ばす。
後ろの人の手が突き飛ばし返す。
2度、3度と突き飛ばされながら僕は口を開いた。
「それが特別扱いだろうと、僕が何者であるかと言うことも、全部潤様が決める事。
このお屋敷の全ては、潤様の采配で動いているのだから。
君達はこれから潤様にお仕えしていく身だと言うのに、そんなことも分からないの?」
シンっとなる控え室。
「先に行きます。
遅れたらいけない」
他の子供を置き去りに道場へと急ぐ僕は、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながらこのやり取りを見ていた年長者2人に気がつかなかった。
続