ヒゴスミレ:つのる思い
「おじゃましま~す。あ、ただいまかぁ~」
鍵を開けると、1番のりで部屋に入って行く、J 。
真っ先にしたのは、キッチンのシンクにあった2人分のマグカップを洗うこと。
ちゃんと片付いてないのが大っ嫌いな J は、朝、ぎりぎりになってしまって洗えなかったマグカップと食事に使ったお皿が気になってたらしい。
「そんなのいいから、こっちで飲みましょうよ」
「すぐだから、待って。もしなんならカズ先に飲んでていいよ?」
「そんなのイヤですよ。一緒に打ち上げしましょうよ」
「じゃあ、おつまみ作るの手伝ってくれる?」
手を泡だらけにして、ワタシに向かって小首を傾げててくるから、微笑ましいその姿に逆らうことなく、J の隣に並んでまな板を取り出した。
「トマト、切ってくれる?」
「え?あったっけ?」
「昨日ボクが買って来たのがあるの。カプレーゼでもつまみながらお酒飲もうよ」
「はいはい」
洗い終わった食器をきれいに拭いて、棚に戻す J の形の良い後頭部を見ながら、キスしたい衝動に駆られてしまった。
もちろん、親友だから、そんなことはできないけどね。
「どうしたの?」
「ん?何でもありません。みんな J のこと誘いたかったのに、ワタシん所で良かったのかな~って」
「言ったでしょ、かずがいいの。かずの代わりはいないの。まあ、翔くんの代わりも、相葉くんの代わりも、大野さんの代わりもいないけどね」
クスって笑って、ワタシの手から包丁を取り、手際よく料理を作りあげた。