マネージャーの車の中、俺はポケットの中身を指で確かめるように触る。
そこには小さな青いガラス細工のキーホルダーが付いた鍵が1つ。
今では当たり前のように使っていたけど、これを渡された時の事は忘れられない。
『これ、かず、持ってて』と差し出された鍵。
『え?でも・・・』
『かずに持ってて欲しいんだけど・・・ダメ?』
『嬉しい、よ、智』
えへへ、と笑った智は『はぁ~緊張した』と俺にkissを落とした。
最初に鍵を使ったのは翌日の収録後。
あの日は すっごい疲れて、家に帰りたくなくて、気がついたら智の部屋に足が向いていた。
部屋に入っても智の姿はなくて、ベットにあった布団にくるまると智の香りがした。
スゴく安心して眠りに付いたのを覚えている。
「かぁず、寝てるの?」柔らかい声で呼ばれ、眼を開けると智の姿。
一瞬自分が何処にいるか解らなくて「ホンモノ?」なんて頓珍漢な事を言って智に笑われたっけ。
初めて智と結ばれたのもあの部屋。
・・・思い出は尽きることはない。
この部屋の鍵を返すときが来るなんて思いもしなかった。
「でも、ケジメ、だから・・・」呟く胸に込み上げてくる物。それは、この先も消えることはないんだろう。潤を選ぶってことはそう言うことだ。
さとし・・・さよなら