俺は今日一日の事に思いを巡らせていた。
横ですやすや眠るミズキの背中を見つめながら。
とても綺麗な肌だ。すべすべで絹のような。
みずきと俺はまだ出会って間もない。
でも、俺は直感的にこの子しかいないと感じた。
出会いはアプリだ。そう最近よくあるアプリでの出会いだ。
1日一緒にいた。
カバンも買ってあげたし好きな物を買ってあげた。
そしてその後、俺達はひとつになった。
みずきは俺のことが好きなんだろう。
みずきのためならなんでも買ってあげる。みずきのためならみずきのためなら……
そしておもむろにTwitterを開く。
トレンドは、っと。
(オンリー ワン ナイトが直木賞受賞、か)
何やら直木賞受賞作品の名前らしい。
(オンリーワン ナイト、特別な、夜)
おれはそう日本語に訳した。
ふっ、少し微笑む。
俺とみずきの今の状況にピッタリじゃないか。
この夜がずっと続いて欲しい、そう心から願う。
(オンリー ワン ナイト)
そうもう一度頭の中で繰り返し、男は深い眠りに落ちた。

私は今日一日の事に思いを巡らせていた。
横ですやすや眠る男の背中を見つめながら。
年相応の体つき。おじさん。まあよく見なれてるわ。
この男とはまだ出会って間もない。
でも、直感的にこの男は金になると思った。
好きな物なんでも買ってくれる。お金もくれる。
かなり深く入れ込んできそうね。
だったらダメよ。そうなったらおしまい。今日で終わり。
バイバイ、好きな物買ってくれたことだけは感謝してる。
ホテルから急ぎ足で外に出た。朝日が眩しい。
歩きながら本屋の前を通り過ぎる。
平積みしている店頭を一瞥する。
(オンリー ワン ナイト)
一瞬だったので定かではないが、確か直木賞受賞とポップが書いていた気がする。
(オンリー ワンナイト、ただの、一夜
ふっ、ただの一夜の関係、まさに私とあの男の関係みたいね)
(オンリー ワンナイト)
そうもう一度頭の中で繰り返し、女は颯爽と街を歩き去るのだった。