<ж41ж 奥さんには内緒で                             おまけ Vol 30>

ж 10 ж 北温泉

 投稿日時 2011/1/9(日) 午前 6:58  書庫 大浴場  カテゴリー 旅行
 

 


 2008年8月14日午前5時出発。天候は曇り。山頂からの展望が期待できないのは残念だがカンカン照りよりはいいかも知れない。
 今日の目的地は那須茶臼岳。近年ハイキング程度の登山に興味を示している奥さんの発案である。
 国道294号線を利用して7時前に那須一軒茶屋着。コンビニで昼食と飲み物を仕入れて7時20分那須ロープウエイ山麓駅着。駐車場に車を停める。
 駐車場はもう少し登った先にも県営のものがあるが、帰りはロープウエイを利用する予定なのでこちらにした。まだスペースには若干の余裕がある。
 ちょっとロープウエイを下見。ちょうど次の便の改札が行われていて結構多くの人が乗り込んでいった。
 トイレを済ませて表に出れば先のゴンドラがスイスイと山を登って行くところ。天候は回復して青空の下に山頂駅と茶臼岳山頂がくっきりと見える。
 ロープウエイがいとも簡単に山頂駅に着いたところで、7時40分こちらも出発。駐車場からすぐに始まる登山道へと向かった。
 もっともここはまだ県営駐車場への散策道みたいなもの。息子たちもスイスイと勝手知ったる道と進んでいく。
 実は私は茶臼岳は初めてである。
 息子たちは学校行事で登山済み。奥さんもウン十年前にやはり学校行事で登っている。なので本日の先達は息子たちとなった。
 県営駐車場のある峠の茶屋を出れば本格的な登山道。樹木に囲まれた上り坂をフーフーと登る。運動不足だなー。
 20分ほどで樹木が途切れ眺望が開ける。道は土から石ころに変わった。右手の切り立った山は剣が峰だ。
 少し進むと第1の目標、峰の茶屋の避難小屋が見えてきた。そこへ続く登山道もづうっと見える。ぽつぽつと登る登山者も見える。目標が見えるのは楽しくもあり、うわーまだあんなにあるのか、と苦しくもあり。
 風景と足元の小さな花々などを堪能しつつポクポクと足を進めれば徐々にではあるが確実に避難小屋が近づいてくる。日影が全くないので暑い。
 8時40分峰の茶屋着。小休止。垂みを超える風が気持ちいい。ここで道は三つに分かれる。左は墳煙上げる茶臼岳。右は剣が峰で、まっすぐ進めば三斗小屋温泉だ。
 10分ほどの休憩で出発。次の目標は牛ケ首。山頂の下をくるりと回る形になり高度はほとんど稼げない平坦な道が続く。
 平坦なのはかつて無限地獄で採れた硫黄を運ぶ為の軌道跡の道だからだ。峰の茶屋から麓までは索道であった。その遺構の木組みがいまだに残っている。
 ほどなく無限地獄着。轟々と音を立てる大規模なものから、ポワポワと湯気を上げる小規模なものまで無数の噴気孔がそこかしこに。こびりついている硫黄を拾おうと地面に触れてみれば地面そのものがかなり熱い。
 無限地獄を過ぎたあたりからガスが湧きはじめ眺望がきかなくなってきた。峰の茶屋から30分ほどで牛ケ首着。小休止。地熱と日光が無くなったので肌寒くもある。
 牛ケ首からすれ違う登山者の様相が変わった。軽装の人が増えてきたのである。しばらく進むと点在する岩に腰かける軽装登山者が更に増えた。そんな人たちに混ざって私たちも大休止。コンビニで買ったおにぎりなどを広げる。
 10時を少し回って出発。すぐにたどり着いた尾根はどこが道か解らない広いザレ場で人がいっぱい。そしてその多くが手ぶらの軽装。中にはサンダル履きの人も。ロープウエイで登って来た人たちである。
 ザレ場が尽きた所で渋滞発生。岩場にとっつく急な登山道を前の人にくっつくようにして登る事少々。10時30分。茶臼岳山頂着。ガスは切れ日差しが戻って来た。
 もう少しゆっくりしたかったが、人の多さに辟易して20分ほどの滞在で下山開始。まず火口跡を回る。眼下に無限地獄と登山道。
 ここで長男が一言。
 「ロープウエイじゃなくて歩いて降りようよ」
 彼は高所恐怖症である。
 一方私は今回の目的の一つに未乗の那須ロープウエイ制覇があるので意見が対立。でも先達は彼。徒歩での下山となった。
 帰り道は山頂からまっすぐ峰の茶屋へ下る道。途中でガスの中に山頂駅がちらりと見えた。峰の茶屋方面はくっきりといい天気。
 トントン拍子に下って峰の茶屋。見上げる剣が峰の向こうにはポワポワのガスとは違う力強い雲がモクモク。ムムムこれはいかん。
 少し足を速めて、その結果山麓駅には12時半に着いた。空がかなり暗くなってきている。
 あ~、楽しかったね。さぁ、次は登山後のお約束、温泉だ。
 満車の駐車場から車を出す。すぐに待っていた車が私たちの後に入った。これから登るの?
 山麓駅から10分とかからず北温泉着。とは言っても着いたのは温泉近くの駐車場。道はそこでどんずまりになっていて車は宿の前までは入れない。
 徒歩で谷へと下る。つづらを1つ曲がると趣のある宿の建物が見えた。建物の手前に広がるため池の様なものは温水プール。いや特大露天風呂と言った方がよいであろう。子供が泳いでいる。あ~、水着を持って来れば良かった。と息子たちが悔しがる。
 玄関をくぐると正面に長火鉢。火が入っていて炭の燃える臭いがする。
 右手の券売機で日帰り入浴券を買って帳場へ。帳場を守っているのはご主人?と一匹の猫。
 雰囲気と言い、とても平成の世とは思えない。
 それもそのはずで建物の大半は安政時代のもの。その割には旧家の一室の様な休憩室にはインターネットも使えるパソコンもある。新旧がうまい具合に溶け合っている感じだ。
 荷物をロッカーに預けて早速温泉。
 休憩室前の階段を昇って奥さんは左手の女性専用湯「芽の湯」へ。私たちは右手へ折れて「天狗の湯」へ。
 暗く狭い廊下のところどころに怪しげな置物があり、暗さもあいまって息子たちが怖がるかと思ったが、もうそういう年ではないようだ。
 幾度か廊下を曲がると前方が明るくなって外へ出てしまう手前が脱衣場。廊下との区別はなく、「えっ、ここで服脱いでいいの?」とちょっと戸惑う。
 脱いだ衣類を置く棚がある反対側が浴室。こちらも廊下とのかくこたる隔たりはない。
 先客1人。挨拶して湯に浸かる。少々熱め。天狗の面が睨んでいる。
 登山の疲れが溶け出していったところで隣のうたせ湯へ。建物と言うか小屋が別になっていて裸で外を歩いて移動。外へ出たとたん雷鳴がとどろいてちょっとびっくり。
 うたせ湯は浅い湯だまりの中央に樋から湯が落ちている。いざ、と足を一歩湯だまりに突っ込んで飛び上った。アチッ!
 大変魅力的なうたせ湯なのだが、熱くてそこまでたどり着けない。立って、座って、寝ころんで、といろいろ楽しめそうなのにたどり着けない。
 諦めて、更に隣のぬる湯へ向かう。先程と同じ様に外を歩く。雨が落ちてきた。
 ぬる湯はその名の通りぬるめの湯でのんびり浸かるには良い。しかし、ガタイの大きくなった息子たちと三人で入るには少々狭い。
 交代でのんびりと浸かって、次は河原の湯。こちらは宿のほぼ反対側にあり廊下を通って行かなければならないので裸では無理。服を着て迷路の様な廊下を進む。
 河原の湯は新しい露天風呂。しっかり男女別になっていて脱衣所もちゃんとある。
 湯はぬるめ。余笹川を見下ろす大変気持ちの良い風呂なのだが、強くなってきた雨脚を避けらる程の屋根は無い。
 まぁ、雨の露天風呂もまた風流。と雨に打たれながら浸かってはいたが、雷が落ちないかちょっと心配。
 落雷は谷底故さほど心配でもないが、それ以上に気になるのは、すぐ上流に宿よりも高くそびえる砂防ダムだ。
 数年前余笹川は大洪水を起こしている。もし、今あの砂防ダムを超えるような鉄砲水が来たら裸のまま那珂湊まで流されちまうなー。
 それでも湯をゆっくりと堪能して、さぁ帰ろうかと廊下を戻るとゴーッと不気味な音。帳場まで戻って外を見れば叩きつけるような雨となっていた。
 珍しく奥さんの方が長湯。居合わせた人と長話をしていたとか。
 なかなか雨は止まず、牛乳を飲んだり長火鉢に手をかざしたりして雨宿り。帳場横の土産物売場を覗けばこちらも歴史がありそうな品々がゴロゴロ。
 そんな品々を眺めていたら、そんな客を眺めている猫が一匹。帳場にいたのとは別のやつ。はじめは警戒していたがすぐに慣れて喉をゴロゴロ。
 猫たちに接待してもらっているうちに、すぅーっと雨が上がった。が、いつまた降り出すか解らない。急ぎ足で坂道を登って車へ。雨上がりは涼しく、急ぎ足であっても、もう一度風呂に浸からなくてはとはならなかった。
 坂の途中から振り返えれば雨にしっとりとした宿が更に魅力的に見えた。今度はぜひ泊で訪れよう。むろん部屋は安政の建物を指定して。   


--第41号(平成21年8月30日)--

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