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ж 33 ж 「三猫」

 投稿日時 2010/6/20(日) 午前 6:52  書庫 猫の間  カテゴリー
 

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 日光東照宮に三猿というのがあります。なんて書くまでもないですね。有名な「見ざる言わざる聞かざる」の彫り物です。
 一応説明しますと、東照宮の表門を入った先、神厩舎の長押上にある八つの神猿彫刻のうちの一つで、人の生涯を馬の守り神である猿で表現しているものです。
 三猿は左から2番目、子供の時は余計な事を見ない、言わない、聞かない、つまりまっすぐに育てよ、という事なのですが、今は多くの大人が社会的問題に三猿になっていますね。神厩舎自体が他の建物に比べて地味なので陽明門に気を取られていると
「あれ?三猿は何処にあったの?」
という事になります。
 三猿に表される様に、子供とはとにかく何にでも興味深々ですぐ影響されます。これは人に限った事ではなく、猫も同じ。子猫の時の環境がその後の性格にかなり影響されるようです。
 「こてつ」と「リラ」の両親は他所の家の猫でしたが生まれは我が家というチョット変わった経緯の持ち主。母猫の「おしま」が外出中に産気づき実家へ帰ろうとしたのですがたまたま実家は外出中で入れず、更にたまたま在宅していた我が家へやって来て出産。そのまましばらくの間我が家で過ごし、おちついた所で実家へ親子ともども御連れして、乳離れする頃に改めてもらって来た、というものです。
 同じ頃に他の兄弟たちもよそへもらわれて行ったので手の空いた「おしま」はちょくちょく我が家へ来ては子供達をかまう様になりました。(出産前も度々来てはいましたが)
 やがて子離れの時期。「おしま」はからんで来る子供達にカーッ!!と威嚇するようになりました。
 すると「リラ」は一発でカーッ!!のお返しをしてあっさり親離れ。しかし、「こてつ」はかまわずおっぱいにしゃぶりつきつづけ「おしま」より大きくなってもチュウチュウ。
 そして、「リラ」は他の猫とは少し間を置く生活、「こてつ」は「おしま」にべったりという生活が「おしま」が次の子供を産んで親子共々飼い主と一緒に引っ越してしまうまでの1年程の間続けられたのでした。
 結果、「リラ」はそのまま少し独立感の強い猫、「こてつ」は甘えん坊となりました。
 次に我が家にやってきたのは「ジュニア」。彼の親はノラで出産して隠してある場所を発見しブッブッと小さいながらも威嚇してくるやつをさらってきてしまいました。
 いきなり闖入して来た子猫を見て「リラ」はカーッ!!と威嚇して、近寄って来なければいいわよ、という態度。それに対して「こてつ」は一緒になって遊んでいました。おそらく「ジュニア」の父親はかつて「こてつ」と大バトルを繰り広げていたこれもノラの「トラ」と思われるのですが(ガラがそっくり)そんな事はお構いなしです。
 で、当の「ジュニア」は兄弟達と食べ物を奪い合うという幼少を過ごしたのでしょう、食への執着が強く私達が食事をしていると傍へやって来ておかずをさらっていく、時にはまだ幼かった子供の端先から苦労してつまんだおかずをもぎ取って行くという事もやらかしました。
 結局彼は半ノラ性格が抜けず家を空ける事がしばしばで、やがてめったに帰ってこなくなり、最後に帰って来た時は何処かでひどい喧嘩でもしたのか牙は折れ病気にもかかっている様で目やにがひどく鼻水もたらしていました。
 医者に連れていくと、長くはない、との宣言。しばらくは家で養生していましたが病気はどんどん悪くなり、ほとんど歩けなくなった頃姿を消してしまいました。
 「はな」は捨て子でした。良家のお嬢さんだったのでしょうか、すっきりとした容姿に落ち着いた性格。「リラ」と「まめてつ」の様に
「ご飯ちょうだい。ご飯ちょうだい。ご飯ご飯ご飯!!」
と大騒ぎする事はありませんし、食事時も1歩下がってガツガツ連中の食事が済むのを待っています。
 かといって全く他の猫を相手にしないかというとそうでもなく、気が向けば「まめてつ」にじゃれついきに行って十分遊ぶとカーッ!!と追い払ってしまい、孤高の猫になっていたりするというまさにわがままお嬢様です。  
 そんな「はな」の娘が「まめてつ」の母親の「マロニー」で兄弟達の中で唯一母親のすっきり容姿を受け継がなかった子。その為か兄弟達はすぐにもらわれていったのに「マロニー」だけは売れ残って我が家で暮らしていました。
 幼少時は何不自由ない生活と「こてつ」爺やにも面倒を見てもらったせいか、売れ残りなど気にぜずおっとりとした性格でした。しかし、そんな性格でも子供を産むと我が家の息子達からのおもちゃ化攻撃に耐えられず子猫達を連れて家出してしまいました。
 が、その子猫達の中で唯一家出に付き合わなかったのが「まめてつ」です。
 「マロニー」の初産は2匹、2回目は1匹で、3回目は4匹で「まめてつ」はその時の子供です。
 初産の子供の内1匹はすぐに行方不明になってしまい、残った子「太郎」は母親べったりとなって「フレンドリーミー」とあだ名が付くほど他所猫だろうが何だろうが一切の争い事をしない性格でした。次の子は一人っ子の「クリ坊」。やはり同い年の兄弟がいないので「太郎」と一緒に母親べったり。
 で、「まめてつ」ですが、彼には兄弟がいたのでさほど母親独占べったりとはならず、だだのほほんとした性格だけが強く現れました。そして、「マロニー」がみんなを連れて家出した時も一人残されたのです。と言うより、「マロニー」が家出する時他の子供達は
「ママー」
と付いて行ってしまったのに「まめてつ」だけはボケッと昼寝でもしていたのかもしれません。彼は一度寝てしまうと叩こうが引っ張ろうが目を覚ましませんから。
 という訳で「まめてつ」はその幼少環境から我が家に残る事となった様ですが、彼の三猿ぶりは大きくなってからも顕著でした。別の意味でです。
 「リラ」は名前を呼ぶと、何?、という顔でこちらを見ます。「はな」も、何?かまわないでちょうだい、という顔で振り向きます。しかし、「まめてつ」は呼んでも振り向かないのです。全くもって「見ざる」なのです。
 「はな」も振り向かない時がありますが、全くの無反応ではなく耳だけはピクッと動かして無視を決め込んでいます。しかし、「まめてつ」は耳も向けません。耳が不自由な訳ではありません。興味ある音に対しては敏感に反応するのです。しかし、たいていの音は右耳から左耳へと素通りしてしまっているのです。「聞かざる」です。
 「リラ」と「はな」は抱っこされているのが嫌になってくると「ニャーニャー」と抗議の声を出していやがります。しかし、「まめてつ」は嫌になって逃げたくてじたばたしても声は出しません。「言わざる」になります。
 抱っこされて白目向いて嫌がっているのに声も出さず爪も立てません。
「嫌なら嫌と言いなさい」
としつこく抱っこしていてもじたばたするだけ。で、ぽいと離してやるとその場でボーとするノホホン性格。三猿ならぬ三猫です。
 彼のこの性格はとても癒されます。しかし、最近もう一人三猫が現れました。それは中学生になった我が息子。呼びかけても聞いているのだかいないのだかで、こちらを見ず、話さずで、
「見猫(見ねー子)言猫(言わねー子)聞猫(聞かねー子)」
になって来ました。ウ~ン、こちらは癒されないぞ。   


--第30号(平成18年10月1日)--

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