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ж 24 ж ピンポンダッシュ(2)                       
                    投稿日時2010/3/14(日) 午前 7:18  書庫鉄道の間  カテゴリー鉄道、列車

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 「ピンポンダッシュ」と聞いて「ああ、昔よくやったなー」等と懐かしく思う方もいらっしゃるかもしれないが、一応説明しておくと、適当に知らない家の呼び出しチャイムを押して逃げ、物陰に隠れて出てきた家人の様子をうかがって楽しんでしまおう、という子供のいたずらである。高等技術に途中まで逃げたらくるりと向きを変えてそ知らぬ顔で堂々とその家に方に向かって歩き、じっくりと楽しんでしまおう、というものもあった。
 このいたずらはあまり大きな敷地を持つ家には適さない。玄関脇のチャイムを押すのに庭の中の方まで侵入しなければならないからだ。そんなところへのこのこ入っていけばそれだけで見つかってしまう。よって家々が密集していて道路際に玄関があるような家が標的となる。
 このいたずらはすでに過去のものとなっている。現在では治安やセキュリティーの関係でチャイムを押しただけで顔を出す人は少なくなり、下手をすると防犯ビデオでその一部始終を録画されバレバレ、ということになる。子供にも不用意に来客に対して戸を開けるなと教え込まれているのでチャイムを押しただけでは家人が顔を出さないということを知っている。昔は「不用意に戸を開けるな」が7匹の子やぎなどの童話の世界であったのが、悲しい事に現在ではリアリズムの世界になってしまっているのである。
 よって「ピンポンダッシュ」は絶滅してしまったのである。
 と言いたいところなのであるが実は形を変えて現存している。それも昔の比ではなく日常ごく当たり前といった感じで行われているのである。その被害者は「ああ、昔よくやったなー」等と懐かしく思う元悪ガキの方々である。
 20年程前から視覚障害の方の為に電車のドアが開く際「ピンポン、ピンポン、ピンポン」と音が鳴るようになった。
 朝の通勤時間などラッシュ時であれば1つのドアから3人、10両編成の電車であればドアの数は40数カ所。つまり120人以上の人が「ピンポン」の音と同時にヌッと顔を出し乗り換えや会社へと急ぎ足になるのである。帰りの最終電車の頃になればさらにそれは激化し、タクシー乗り場へとそれこそ「ピンポン猛ダッシュ」である。
 私は幸いなことに電車通勤をしていないのでさほど被害は受けていないが、たまに電車を使うと特に急いでいる訳でもないのに、この音を聞くと急がなくてはという気分になる。
 さて、前回乗り換えに対して自信を無くし考え方が変わると書いたが、電車にピンポンがついた頃にはまだ余裕の乗換えができていたのでさほど気にならなかった。乗り換えは苦ではなく、駅の様子を眺めたり買い物をする、一服つける、という余裕があった。
 その様子が変わってきたのは出掛ける時に連れがいる様になってからである。
 連れといっても学生時代の頃の私同様に乗り換えに手馴れた者ではない。そもそもその連れは鉄道そのものに不慣れで複雑な駅の乗り換えともなればそれこそ「ここはどこ?」状態になってしまう。
 私にとって始めそれは疑問であった。乗り換えの時普通に歩いていてふと後ろを見ると姿が無い。「あれれっ?」とよくよく探すと人ごみの中を必死になって歩いているのが見える。やがて追いついて来て「歩くの速い!!」と怒っている。「ごめん、ごめん」といっしょに歩き出して少しするとまた姿が無い。こんなことを繰り返しながら次第に私の歩き方は少しゆっくりになった様で乗り換えがあわただしいものとなってきた。
 そこで乗り換えの計画そのものを変えるようにした。今までの倍の時間を乗り換えに使うようにしたのである。
 前回の上野~東京での新幹線乗り換えで例えれば上野、東京での各ホーム間の移動時間を2分から4分にしたのである。するとそれまでの最短17分が21分となった。
 やがて連れが増えた。その連れは更に始末が悪かった。
 始めその新しい連れは単なる荷物であった。しかし、その荷物の為の荷物が異常に増え、歩く速度が更に遅くなった。
 少し時間が経つと新しい連れは自分で歩き始める。それもまさに這うような速度で階段など一段づつしっかりとポコリポクン、ポコリポクンと登る。移動時間を更に倍にした。これで29分。
 更に時間が経ち新連れが活発に動き始める頃になると更に問題が増えた。トイレである。
 大人であれば乗り換えが忙し時、「新幹線にはトイレが付いているのでそれまで我慢しよう」とする事ができる。だが新連れはそうはいかない。その旨の申告があった場合はただちに対処しないと最悪の事態を迎えかねない。この時間を3分取って32分。
 更に電車に乗ることは好きでも乗っていることは好きではないこの新連れ達を車内でおとなしくしさせておく為のアイテムが必要となる時もある。私だけであれば車内のお供に乗り換えついでに通りかかる売店や自動販売機でビールの1本も仕入れて風景をつまみにしていれば十分であるが、このアイテム購入においてはこんな風にはいかず、「どれがいいの?」とか何とかやっていてこの為の時間が5分。これで37分。
 連れとはもちろん女房と子供。そして乗り換え標準時間の40分とはまさにこの時間なのであった。
 この域に達してしまうとピンポンダッシュとは無縁の世界になる。ピンポンと共に列車を降りようとすると下車する人の流れを妨げてしまって迷惑をかけるばかりでなく危険でもある。だから私達が下車するのはたいてい最後の頃で、終着駅なら車内にもう誰もいないなんて状態になる頃降りる。途中駅なら乗車しようと待っている人達に少し迷惑をかけながら降りる。これが普通になってしまった。
 乗り換え時間だけではない。旅行計画そのものも以前のように一回の乗り換え失敗が後々まで影響を及ぼしてしまうような計画は立てなくなった。そもそもの計画が乗換駅で接続列車の一本後を選択するように組むのである。
 もちろんこれは比較的列車本数の多い線区に限られ、本数の少ないときは非常手段として子供を小脇に抱えて走るという想定もしたが、これとて始めからピンポンダッシュをもくろんだのではなくもろもろの事情により最悪の場合という仮定である。
 そしてだんだんと計画そのものがいいかげんになってきた。どんなに余裕のある計画を立てても家を出る前にもろもろごたごたして一番最初の列車からして乗り遅れる。そうなるともう後は適当に流していくしかない。
 ゆっくり降りてゆっくり歩いてゆっくりと乗る。たとえ目的ホームの階段下にいるときに電車が入ってきても気にしない。そのままのペースで歩いて乗れれば乗るしだめなら次。そう割り切ってしまっている。これは非常に気が楽だし旅行そのものがゆったりとした感じになる。
 以前であれば、子供が「トイレ」と言い出せば時計ばかり気にしていた。子供が生まれる以前でも女房が「ちょっとトイレに寄っていくから」いうのでそちらを見れば入り口まで伸びた行列。すーっと血の気が引く。こんな事も無くなった。
 乗り換えが旅行時の1通過点から旅のアクセントとなったのである。
 すると今まで見えていなかったものが見えてきた。
 上野はかつては最短コースを最短時間で通過するだけのものであった。
 ところが時間を気にせずのんびりと買い物などをしていると思いがけず懐かしいみやげ物などを発見して、「これはまだ売っていたのか。そう言えば私が子供だった頃両親と田舎へ行くときよく買ったよなー。」としみじみして忘れていた何かを思い出したような気分になる。
 そして、つい手が伸びて1つ購入し家族で車内で食べたりする。「昔私の親も同じような思いをしながら乗り換えをしていたのだろーなー。」などと思いながら。
 このようにほぼ無計画とも思われるような旅行をしていては当然事前に指定券を必要とする列車を利用することは難しい。しかし、子供達もだいぶ歩きのペースがつかめるようになりトイレの我慢もきくようになってきたのでそろそろきちっと計画を立てた旅行に戻そうかとも思っている。もちろんその計画にはゆったりとした乗り換え時間を組み込んでの上である。もうそろそろ大丈夫であろう。
 先日東武鉄道を利用して上京した。もちろん行き当たりばったりの無計画行程である。
 区間は佐野から東京メトロを抜けて東急田園都市線青葉台まで。所要は約3時間半。途中館林と北千住で乗り換えを予定。車内のお供はあらかじめ購入しておいた。
 佐野から乗った電車は急行型のお古電車で向かい合わせの座席に旅行気分は盛り上がり早速飲食。
 館林では乗り換え時間を利用して子供をトイレに行かせたが浅草行き準急に乗って数分後に「おしっこ」と言い出した。
 乗車後に飲んだジュースが下りてくるのに館林ではわずかの差で間に合わなかったようなのだが、その辺りで降りてしまうと次の電車まで1時間待たなければならない。
 東武動物公園まで行けば列車本数は格段に増えるので「あと20分我慢して」となった。
 もじもじする子供を励ましつつようやく電車が東武動物公園に近づいたところでドアの前に待機。そんなこちらの気など知らぬときばかりにのろのろと電車は駅構内を進みやっと到着。ドアが開くと同時にトイレへGO。
 まだまだ油断はできない。


--第24号(平成17年4月3日)--

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 コメント(2)

 

 

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真夏に汗だくになって和式トイレで子供を抱え・・・
最近はキレイ&洋式、さらには「多目的」トイレが増えて(都市部だけですが・・)助かります。  
2010/3/15(月) 午前 1:47  哲ちゃん+Mc169
 
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哲ちゃん+Mc169さん
昨今のトイレはずいぶんと綺麗になりましたね。
そのようなトイレが当たり前と思っている我が息子はまれに昭和国鉄標準型トイレにあたると入るのをためらいます。(笑)  
2010/3/16(火) 午後 7:04  NEKOTETU