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ж 4 ж 伊香保温泉                             
                        投稿日時2009/11/14(土) 午前 7:49  書庫大浴場  カテゴリー旅行

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 上州に名湯がある。
 開湯は約2000年前とも言われ万葉集にも詠われた由緒有る温泉である。
 ところが有名温泉と言われている割に知名度が低いような感じであり、人に聞いても「聞いた事有るけど行った事無い。どこにあるの?」と言う人が多い。
 古くから有る有名温泉なのに有名なのは名前だけで実際に行った事がない人が多いのはどういう事なのだろう。
 という事で今回は地図で見れば群馬県のど真ん中に有る伊香保温泉。
 ど真ん中に有るだけあって、交通の便はとても良い。上越線の渋川駅や関越自動車道の渋川I.Cから20分位しかかからない。
 確かに新幹線の最寄駅となると高崎か上毛高原になってしまうのだが、この距離であれば新幹線を利用しなくとも在来線の特急で上野から1時間半しかかからないし、本数も多い。東京からの直通バスもある。
 それなのに行った事のある人が少ない。それはなぜなのだろう。
 ヒントはこの特急列車の名前にある。その名は「草津」。
 そう、群馬県にはもう一つ有名な温泉地「草津」があってそちらへ行ってしまう人が多いのである。そして一度草津温泉に行ってしまうとあの辺には行った事あるから今度は別の方面へ行ってみようという事になり、伊香保温泉が忘れられてしまう。
 草津温泉は伊香保温泉のずっと奥にあるのだが、渋川までのアクセスは同じで草津温泉に向かうと必ず「伊香保温泉はこちら」という看板を見かけてしまうので行った気になってしまうのであろう。
 そして帰りは鬼押し出しから軽井沢へと抜けてしまい、それでこのあたりはおしまい。もういいや。という事になる。
 ではなぜ皆決して交通の便が良いとは言えない草津へ行ってしまうのであろうか。
 それは伊香保が団体客に不向きで草津が団体客向きであると言う事に他ならないと思う。どのような点で向き、不向きかと言うと、それは地形的な問題。
 草津温泉は白根山の麓にある盆地で土地に余裕があり、観光の目玉である湯畑も大人数で押しかけてもまだゆとり有る広さである。
 一方伊香保温泉は狭い山の斜面に密集した温泉地であり、観光の目玉は温泉街の中心に有る石段。ここで団体客が記念写真を撮ろうとすると全面的な交通規制をしかなければならない。
 交通規制と言ってももちろん階段であるので車が通る事は出来ないのだが、その石段近辺の道路も、人が旅をするのに徒歩しか手段が無かった時代に作られた街なので、小型の車が通れるかどうかの狭さで中心街の旅館の駐車場はかなり離れた場所に有る。
 つまり、団体客に嫌われたのではなく、団体客を運ぶバスに嫌われたのである。
 そんな伊香保温泉に行ったのは平成12年の夏。
 交通至便のおかげで伊香保に着いたのはまだお昼だった。
 いくらなんでも早すぎるのでそのまま温泉を素通りして榛名湖まで足をのばす。
 湖でボートを漕いでお昼を食べて、と時間をつぶしても3時頃には温泉に戻って来てしまった。伊香保から榛名までは20分程である。
 予約した旅館は青山旅館と言って伊香保温泉のど真ん中に有る。しかし、もらった案内には駐車場がずいぶんと離れた所にあり、そこに車を停めたら連絡をしてください、とある。
 その駐車場は伊香保榛名道路から曲がってすぐ、それでも急坂をグイッと登った所にあった。
 ただの空き地のような駐車場の隅には古ぼけた電話ボックスのような物が有り、そこから旅館への直通電話をかけると程なくワンボックスカーで迎えに来てくれた。
 その車で更に坂をぐいぐい登る。始めはちゃんとした道路であったが温泉街に入ると道は急に狭くなって「ここ車通っていいの?」と言うほど車幅ぎりぎりの道を通って例の石段を横切ると宿であった。
 さすがに歴史を感じさせられる建物で通された部屋はフロントからすぐのアウトバストイレの和室。広さは十二分であったがおそらくこの宿では低いランクの部屋ではないかと思われる。実際超低料金で予約していたので当然と言えば当然ではあるが窓を開ければ階段の真上、土産物屋の二階部分の様。でも窓辺に腰を下ろせば石段の全景と浴衣姿で散策する人達が見て取れ、古き日本の温泉情緒を満喫できる部屋であった。
 今の温泉地では建物の中に様々な施設を持ち込んで客を外へ出させず、旅館内だけで金を落とさせるという方向になっている。よって温泉街であっても外を出歩く人は少なく動くものはバスや車ばかりしか見えないという所が多い。
 しかし、ここでは多くの人達が散策を楽しんでいる。他所の温泉街であれば寂れてしまっている土産物屋や駄菓子屋、射的場なども多いに賑わっている。
 早速私たちもタオルを引っさげて散策に出掛けた。
 石段の最下部に石段の湯という共同浴場がある。ここも大勢の人で賑わい、着ている浴衣には様々な旅館の名が記されていた。
 湯に浸かってから宿に戻るべく石段を登るとまた汗をかいてしまう。そこで土産物屋で飲み物を所望したのだが、普通湯上りはビールであるはずなのになぜか手が伸びたのは牛乳。周りの人達の多くもアルコールではなく、牛乳やラムネの瓶を傾けている。
 宿に戻り内湯も堪能してまた窓辺に腰を下ろし道行く人々を眺めているうちに夕方となり人通りも減ってきた。そろそろ食事の時間である。
 大広間での囲炉裏を囲んだ食事を済ませて部屋に戻るころにはまた人通りが増えて来た。石段を行き交う人の談笑する声やゲタのカラコロという音が部屋の中まで聞こえてくる。
 それに誘われて夜の温泉場の雰囲気に浸りにまた外へ出た。
 さほど明るくは無い電灯に照らされた石段街はまるで祭りの夜のようだ。
 酒屋で缶ビールを求め人通りの流れの淵のような所でゆったりするようなうきうきするような妙な気分で麦の香りを味わう。
 さしもの祭りも十時をすぎる頃には静まっていった。これが都会の歓楽街であればこれからという所であろうが、斜面の町は眠りにつこうとしている。
 人影も途絶え、店じまいする土産物屋の傍らでは「やっと俺たちの時間になったか」と言うかの様に猫が姿を現わし遅い夕涼みを始めた。

--第16号(平成15年10月4日)--

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 コメント(2)

 アイコン0伊香保と草津の間にある「四万温泉」は、数年前あのノリピーの朝ドラでブームとなり、
「川原湯温泉」は今“八ッ場ダムで全国区になりました。・・個人的には草津のとなりの万座温泉が(特に冬季)風景とか泉質とかGoodです。

2009午前 8:06  哲ちゃん+Mc169

 

アイコン0万座温泉はいよいよ旬の時期なのですね。ぜひ訪れてみたいです。

2009午後 5:34  NEKOTETU