団四季『恋におちたシェイクスピア』を観に行く予定がある。

恋シェをより楽しむための助けになるかと思い、シェイクスピア関連の作品を読んでみることにした。


観劇はだいぶ先のことなので、ぼちぼち読みながら感想をつづっていこうと思う。

 

 

 

 

恋シェのためのその① 

 

まず読んでみたのがシェイクスピアの戯曲「マクベス」。

シェイクスピア初心者なので、分量が少なく展開がシンプルで読みやすそうという理由でこれを選んだ。

大正解。

めちゃめちゃ面白かった。

 

さて、世界一有名な作家と言っても過言ではないシェイクスピア。

数多の翻訳本がある中から選んだのが、松岡和子さんの訳。 

 

 

内容紹介(上記ウェブサイトより)

スコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と、激しい夫人につき動かされ、かねてからの野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し、王位を奪ったが、その地位を失うことへの不安から次々と罪を重ねていく…。四大悲劇の一つを新訳で。



小田島雄志さんの翻訳もいずれ読んでみたいと思っている。

 

以下、引用は一部を除いて『シェイクスピア全集3 マクベス/松岡和子訳(筑摩書房)』より。

 

なんとなく心に引っ掛かった台詞を抜き出してみる。

 

 

グレイのあの台詞 

 

『ゴースト&レディ』のときめきの欠片がまだ残っている今日この頃だが、劇団四季のグレイではなく。

 

『黒博物館 ゴーストアンドレディ』のグレイが、フローを迎えに来たとき口にしたのがこちら、

 

きれいは汚い、汚いはきれい

(第一幕第一場)

(原文)Fair is foul, and foul is fair

 

魔女たちの有名な台詞。

不気味で美しい魔法の呪文のようなこのひと言が、『マクベス』の世界観を表している。

 

いろいろ考えなくても「あー、なんかわかるわ」と感じる台詞である。
価値の逆転、魔女から「王になる」と予言されたマクベスの内面の葛藤、魔女の予言が果たして現実の出来事だったのかどうかという曖昧さなどが示唆されているらしいが、曖昧で割り切れない矛盾した内面を抱える人間の性質が詩的に表現されているなと思う。

 

 

身に覚えがありすぎる 

 

ダンカン王の暗殺を前に、良心と野心の間で揺れるマクベスの台詞。

やってしまって、それでやったとけりがつくなら、さっさとやるに限る

 

(第一幕第七場)

(原文)If it were done 'tis done, then 'twere well It were done quickly

 

「殺してしまえばすぐに終わるなら、すぐにやってしまいたい」と思いながらも、実際にはその報いを恐れている。

 

この「やってしまえば終わる」という思考と衝動、すごーく身に覚えがある。

やってしまったあと困ったことになると冷静に考えれば分かるのに、どうしてか、やってしまうこととは。

 

それは衝動買い。

 

我慢できずに四季のチケットをポチる自分の姿を見ているようで笑える…いや笑えない。

 

(今月、チケット買いすぎじゃね?)(でも観たい)(交通費もかかるよね?)(でも観たい)(家族の目が痛い)(でも観たい)(仕事休める?)(でも観たい)(もういいやなんとかなる)※0.3秒


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古今東西オタクが好きなもの 

 

拍手拍手闇堕ち。


ダンカン王を暗殺して王になったマクベスが、自身の地位を失うことを恐れ、友人であるバンクォーの暗殺を決意する場面での台詞。 

バンクォー、貴様の魂が天国へ飛んで行くなら、
今夜じゅうに道をさがせ

 

(第三幕第一場)

(原文)Banquo,  thy soul's flight,  

                 If it find heaven, must find it out tonight

 

冷酷で血なまぐさいのに詩的で美しい。

 

ダンカン王の暗殺はマクベス夫人(マクベスの妻)に焚き付けられた側面もあるが、バンクォー暗殺はマクベスの独断。

バンクォー暗殺によって、マクベスの内面は違うフェーズに行ってしまった感がある。

 

 

ひとこと「ごめんなさい」を言えば済むのに 

 

血の川にここまで踏み込んだからには、

たとえ渡り切れなくても 戻るのもおっくうだ。

先へ行くしかない。

 

(第三幕第四場)

 

もはや理性的な判断ができなくなっているマクベス。

引き返して罪を認めその重さに苦しむよりも、先へ進んで(=罪を重ねて)いくことを彼は選ぶ。破滅を予感しているのに。

 

ねぇ 謝っちゃいなさいよ

引き返しましょう オズの陛下は 許してくれるはず

 

(劇団四季『ウィキッド』より)

 

どこからかグリンダ様の声が…

引き返さないエルファバの強さも良いが、引き返せないマクベスの弱さにとても共感する。

 

マクベスのやっていることは極端(殺人と王位簒奪)だけど、ひとこと「ごめんなさい」を言えば済むのに言い出せないことは現実でもよくある話。

普遍的な心理が極端に描かれているからフィクションとして面白く、いつの時代の人間にも刺さるんだろう。

 

 

シェイクスピアって、異世界転生した現代人なのでは… 

 

いまは時代が悪い。知らない間に謀反人にされてしまう。

脅えがあるから流言蜚語を信じるのだが、

何に脅えているのかその正体が掴めない。

 

(第四幕第二場)スコットランド貴族・ロスの台詞

 

だって誓ったり嘘をついたりする人は数が多いんだから、逆に正直な人を縛り首にできるじゃない。

 

(第四幕第二場)マクダフ夫人の息子の台詞

 

SNS のデマ拡散とか、陰謀論を想起させる台詞。

嘘つきや誓いを破る人間が多数を占めれば、正直者は少数派となり、かえって追い詰められる。

いつになっても人間というやつは変わらないということか。あるいは異世界転生説。

 

「正直者がむしろ危険にさらされる世界」の風刺を子どもに言わせる皮肉。

こんなことを幼い子に言われたら、私は何も返せる気がしない。

 

 

弱いのにかっこいい 

 

あとがきで訳者が真っ先に言及しているように、マクベスとマクベス夫人は密接な関係にある。

最初は、ダンカン王の暗殺に迷いを見せるマクベスに対し、夫人はむしろ彼の野心を強く後押しする。

だが、ふたりの内面は次第に逆転していき、夫人は罪の重さに心を病み、夢遊病に冒され、マクベスより先に死んでしまう。

殺人の重荷を一緒に背負っていた妻に先立たれ、マクベスは決定的に孤独になった。

 

恐怖がどんな味なのか、ほとんど忘れてしまった。

(中略)

どんな恐ろしいことも人殺しの俺の胸には昔馴染みだ、もうぎくりともしない。

 

(第五幕第五場)

 

ここから逃げても、ここに踏みとどまっても、無駄だ。

陽の光もうとましくなってきた。

いっそ宇宙の秩序など目茶目茶に崩れてしまえばいい。———

警鐘をならせ!――― 風よ、吹け! 破滅よ、来い!

 

(第五幕第五場)

 

良心は消え失せ、絶望的に孤独、破滅へと突き進むマクベスの叫びが震えるほどかっこいい。

弱さを乗り越えられず自らが招いた破滅で、言ってしまえば自業自得。

それなのに惨めな結末だと感じさせず、むしろかっこよさに昇華させるシェイクスピアって、すごい。


おわり。