母には友人が多かった。


中でも昔一緒に働いていた人からは母が認知症であることを伝えると、信じられない!と言う反応と同時に目に涙を浮かべながら、仕事をしていた時の事を懐かしそうに話す人ばかりだ。


昨日、母に会いに同僚だったと言う女性と初めて会った。

聡明ではっきりとした物言い、いつもあっけらかんとしていた母とは似ても似付かないといった第一印象。


ところが、認知症に至るまでの経緯と私達家族の今の状態をザッと話した後、彼女から(私の知らない)母の全盛期の思い出話しへと移り、話を聞いていて涙が止まらなくなった。


その人曰く、母はまるでなんでも受け入れてくれる菩薩のようだった。


職場では、時間との戦いで殺伐とした空気があり、主任ともなるとキツイ人がほとんどだった中、母だけはいつも明るく忙しいながらも楽しく仕事が出来たのだと言う。


一緒に組む人が母だと、仕事が楽しく捗り笑いながら1日があっという間に過ぎる感じで、その日に仕事に行くのが楽しみだったらしい。


ただふざけて笑うのではなく、仕事もテキパキとこなし新人の人にも丁寧に教えてあげる忍耐もあったそうだ。


いつも母の周りは明るく、居るだけで雰囲気が変わるような人…


だから、皆んな悩み事や相談などは第一に母にしていたと言う。


それを聞き、グーっとあったかい気持ちが込み上げ涙が押し出された感じだった。


そういえば、私が小さい頃も色んなわがままきいてくれたっけ

その度に嫌な顔ひとつせず、


-お安いご用!!


と言って聞いてくれた。


私が母になり、子供達がわがままを言う。

仕事で家事で疲れている私には、全然お安いご用ではないのだ。


逆にお願いだから、休ませて!

とわがまま返しをしてしまう。


昨日、一日母に叶えてもらったわがままを思い出しながら、止まらない涙で目をパンパンにはらせながら今なお尽きない思い出に涙する。