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JINのブログ

映画好きです(ネタバレ注意!)
きままにいろいろ…

すごい、時刻表なみの上映回数です

鬼滅の時を思い出して懐かしいw

あの時は、コロナの緊急事態宣言の一時解除された合間で

映画興行として、あれだけの回数を確保するのは

思い切った決断だったと思います

そして、その読みは当り

娯楽に飢えていたせいもあるけれど、なんというか

映画館に異様な熱気がありました

 

では、「すずめの戸締り」にそこまでの熱があるかというと

ちょっと足りないかな

作品として非常に良くできていた「君の名は」に比べても

やや小さくまとまっている感でしたね

しかし、見やすいし、相変わらず絵や音楽が美しいし

登場人物は魅力的、また3・11に対して向き合って

力強いメッセージを送っているところが

とても良いと思いました

 

●ネタバレしますので、ご注意ください

 

岩戸鈴芽(CV原菜乃華)は、通学の坂の途中ですれ違った

イケメン宗像草太(松村北斗)から、廃墟の場所を尋ねられ

教えるが、どうしても気になって後を追う

途中で遭遇した不思議な扉をくぐって、反対側にあった

奇妙な石を抜くと、子猫に変わって逃げてゆく

その扉から、何か恐ろしいエネルギーが出てこようとするのを

止めようとする草太を手伝う鈴芽

二人はなんとか扉に鍵をかけ、一息つくが

鈴芽が要石を抜いた事を知った草太は顔色を変える

彼は、地震の扉を閉めて回る技を継承する「閉じ師」の

大学生だった

ところが、再び現れた子猫が、草太を椅子に変えてしまう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「君の名は」では、主人公の瀧クンと三葉の関係が

体と精神の入れ替わりという形で、丁寧に深まっていきます

二人は最初は反発したり、いがみあったりしますが

だんだん互いを理解して、思いやるようになる

瀧君には、アルバイト先に憧れの年上女性がいますが

それがまたスパイスとなって、三葉への本気の想いを

自覚するようになるなど、匙加減が絶妙でした

 

「すずめの戸締り」はそこが弱い

鈴芽は、草太に最初から一目ぼれみたいに

惹かれてしまうし、草太もあっさり鈴芽を好きになる

過程が短かすぎる上、草太の登場時間のうち、ほとんどが

イスの姿なのはどうなのか~とw

鈴芽が実は、3・11の過去のトラウマを背負っているのに

対して、草太は「閉じ師」の家に生まれた葛藤のような

描写もあまりなくて、陰影が薄い

 

クライマックスで、鈴芽は

「草太がいない世界が怖い」といい、彼の身代わりに

なってもいい覚悟を見せますが

いったいいつの間に、そこまで深く好きになったのか

ちょっとエピソード不足すぎて納得いかないかな~

 

イスに変えられた草太と鈴芽は

逃げた子猫を追って旅をしながら、いろいろな人と

出会っていくロード・ムービーの形になってゆきます

この構成が良かったのかどうか…

出会う人達も、皆が良いひとたちで気持ちいいのですが

二人の関係よりも、他の人たちとの触れ合いに焦点が

いってしまい

ただの人情話になってしまっているようにも思います

 

後半は、鈴芽と迎えにきた親代わりの叔母・環(深津絵里)と

草太の友人芹沢(神木隆之介)との3人で

すずめの家があった福島へとスポーツカーで向かう

別のロードムービーが始まります

このパートも、車内に懐メロが流れたり

ルーフ屋根が故障していて閉まらなかったのが

閉まるようになった場面では、映画館に笑いがひろがったり

それなりに面白いのですが

草太は既に囚われの身になっていて、このドライブには

出番がなく、余計に影が薄いですね

むしろ芹沢の方が、完全に目立って面白いし

主役のようです

 

「君の名は」でも、瀧と三葉の周囲には、町の人達や家族

友人など、たくさんの人々との関係がありますが

二人が主役である座は、しっかりと揺るぎが

ありませんでした

「すずめの戸締り」だとその中心がぶれて

お話がいくつかに分離してしまってる印象なのが

惜しいと思います

 

鈴芽は、故郷の大震災で母を失ったトラウマと向き合い

草太(と自分)を救おうとします

過去と未来が錯綜するこの場面は、ハウルの動く城の

扉の向こうのハウルの内面世界を思い出しました

泣きながら立ちすくんだ過去の幼い自分に、母の思い出の

椅子を渡し、鈴芽は呼びかけます

自分は、あなたの未来だと

 

今は真っ黒な波しか見えなくても、時と共に人は回復して

必ずまた前を向き、大切な人と出会ってゆく

そんなメッセージを感じました

 

作品の中で、3・11を扱うことは

なかなか難しい事と思いますが、今回新海監督は

ファンタジーの形で、被災者と観客の心に誠実な

エールを送ってくれたと思います

 

それにしても、「君の名は」の時の先輩女性といい

今回の叔母さんといい

監督の描く年上女性は色っぽい

鈴芽ももちろんカワイイし、スナックの女性たちも

生き生きしている

監督は、女性描くの上手ですね

叔母さんと芹沢の間に、ロマンスが生まれそうな展開

だと思ったのに、何もなかったのが少し残念でしたw