#ギイタクパラレル



幸せ慣れしてない僕は


こんなに一緒にいたい人が出来て、正直怖くて。


だって幸せは、あるか、失うか、二つに一つだ。


いきなり無くなったら、悲しくて絶望しそうだから


だから、少し幸せと距離を置く。


そしたら、薄くてもいいから、少し長く幸せが傍にいてくれないかな。

崎さんが綺麗な眉をひそめる。

「え、しばらく会わない?」


僕は膝を抱えた。

膝に顎をのせて、崎さんを見る。

「これ以上あなたを好きになったら、離れた時死んじゃうから」


崎さんの手が僕の首の後ろに回った。


そのまま引き寄せられて唇を重ねる。


優しい唇。

温かな舌が、僕の舌を舐める。

「ん…あ」


崎さんの手のひらが、僕の胸から脇腹を撫でる。


僕はされるまま目を閉じてしまった。


崎さんの唇は、僕の頬から首へと降りて、キスから違うものに変わる。


「やだ、止めてください」

崎さんは僕のウエスト辺りから、上目遣いに僕を見た。

「嫌?ちゃんと感じてると思うけど…」

そっ、と僕の脚の間に手のひらを乗せる。

「あ、っ」

「舐めようか。

 したい気分じゃないなら、気持ち良くなるだけ」


僕は崎さんの肩を押し返す。

「し、しません」


崎さんは首を傾げた。

「何故」


「こんなのに慣れたら、ずっとして欲しくなるじゃないですか」


「だから、してるのに」


「えー」


「タクが、私のセックスに依存して欲しいのに。

 本当は、私に依存して欲しいけど」

崎さんは、僕を抱きしめた。

「私無しじゃ生きていけなくなってよ」


そんなの困る。

あなたはいつまでもいてくれる人じゃない。


だって太陽じゃないか。

太陽は皆んなに等しく降り注がないといけないのに。

「タクは、私を神さまか何かかと思ってるでしょ。

 私は俗人だよ。

 あまり自由にしたい事を出来ないけど、好きな人くらい自由に好きになりたい」


ぺろ、と僕の胸を舐める。

「好きな人と、セックスくらいさせて」


僕は泣きそうだった。

「これに終わりは来ないの?」


「来させない。

 私が、タク無しに生きていきたくない」


崎さんが僕にぎゅっとしがみつく。

「ずっと、家の決めるまま、習い事、勉強、家業の引き継ぎ、何もかも従ってきた。

 あの家に産まれた以上、仕方ないし、そんなに嫌でもなかった。

 でも」


崎さんの腕に力がこもる。

「人は、やろうと思って好きになれるものじゃない。私はタクを自由に好きでいたい」


崎さんが、舌を出す。

「タク舌出して」


「え」


「私は、タクの体液無しに生きられないんだよね。

 セックスしたくないなら、キスして」


「体液?」


「そう、タクは私のごはん。

 タクいないと飢え死にするの。

 ほら、タクは私を放っておけないでしょ?」


僕は笑った。

そんなこと言ってまで、僕といてくれようとするの?

ますます好きになるじゃない。

そんなの。


あなたは、不思議そうに目を丸くした。

「あれ?冗談と思ってる?

 タクも私としばらく会わないでみなよ。

 お腹空いてたまらなくなるよ」


…は?