#ギイタク
パラレル
外出の帰りの電車の中、託生が車窓から過ぎてゆく景色を眺める。
「あーあ」
つまらなそうな託生の声に、ギイはうなだれる。
「あの?
デート帰りに、その反応?
萎えますが」
託生がびっくり、の顔をする。
「えっ、デートが終わっちゃうからじゃない。
寮に戻ったら、これも解かなきゃいけない」
と、繋いでいる手を握りしめる。
そして窓の外の空を眺める。
「帰りたくないなぁ…また、ギイのこと好きなの、隠さなきゃいけない」
「まあ、ざっくりとでいいよ。
どうせ、バレてる」
託生が再びびっくり!と、振り返る。
「ええ⁈
僕気をつけてるよ?
なのに何で?」
まぁ、気は付けてるだろうさ。
でも、託生は根が素直だから、好きな人の前で、好きオーラまでは消せない。
目が『ギイ❤️』って嬉しがってる。
ギイといるとご機嫌に、いい顔してる。
あれで知らないヤツいないぞ。
特に元が
『日本語通じない奴』
の葉山託生、だからな。
いきなり喋れるようになったら、皆んな何かあったな、くらい思うさ。
んで、仔犬みたいに、ギイにパタパタしっぽ振って、クンクン言ってたら、あーギイが飼い主になったかー、って周知の事実。
託生は、顔を空いている片手で覆う。
「ヤダ恥ずかしい…」
「そか?
オレといるお前、可愛いからなかなか好感度高いぞ」
「ヤダ釣り合ってない」
「いや、あんだけオレを好きなのは、恐らく皆んなひれ伏すレベルだ。自信持て」
「好きは、自信あるけどー」
ギイが笑う。
「ガッコ戻る前までに、キスしとこーな?」
託生が、それ!と、人差し指を立てる。
「ギイって、えちしたことあるの?」
ギイは託生の口を押さえた。
「もう少しこっそり聞け」
口を塞がれたまま、託生が何度もうなずく。
ギイは、手を離した。
「あるよ。
お前にも聞いたから、オレも答えるべきだよな。ただし、お前と付き合っててなんだけど、女の子としかないよ」
「ふうん」
「なんで?」
「してみたい」
「いや、やめとけ。
お前も言ったろ?
女の子じゃないんだから、だろ?」
「恋とそれは、別モノ?」
「別じゃないけどさ。
ちょいハードル高」
「ふうん。
じゃ、一緒に寝たい」
「機会があればな」
「つくる」
コイツ、ふにゃふにゃしてるくせに、やたら強い時は押しが強いな。
「分かった。
出来たら教えて」
どーやってつくるんだ?
修学旅行じゃあるまいし。
全寮制だぞ?
あれ?携帯出した。
何か打ってる。
画面見てる。
あ、こっち見た。
託生がにっこり笑う。
「OK出たよ」
はあ⁈
「利久が、どーぞ、って」
「はああああ?
お前、片倉に何て言ったんだよ?」
「小さな頃から、お泊まり会したことないんだけど、崎くんとしてみていい?って」
そうだった。
コイツが天然で、幼稚園児なのを一番知ってるのは、同室の片倉だ。
疑いもしてないだろうな。
何の邪推も。
むしろ
「託生ぃ、お泊まりし合うほど、ギイと仲良しになったかあ!」
…喜んでそうだ。
ああああああ。
しまった。
まさか。
まさかだ。
託生がにっこり笑う。
「ホラ、出来たから、教えたよ?
一緒寝ようね」
…神さま、ごめんなさい。
オレの安請け合いを。
今から無かったことにして。
くれません、よね?
託生が繋いだ手をリズムを取って振る。
「嬉しい」
嬉しくないっ。
男子高校生、理性の糸が切れないように、何時間我慢すれば、朝は来るんだ⁈
てか、健康な男子高校生に、それが一晩可能なのか⁈
誰か…逆バイ○グ○、処方して下さい…。
横で、キョトンと可愛い顔、ヤメロ
託生。
悪魔か
お前はっ。