僕は真っ白な空間にいた。
そこにあるのはまるで何百年の時をそこで見守っていたかのような大樹。
の、ように見える「何か」だった。
あの日からどれほどの時間をここで過ごしたのであろうか。
メシア
僕は、「救世主」に選ばれてしまった、ただの中学生だった。
僕が大樹と出会ったのは世界的規模の戦争の真っ只中だった。
ある日の夕方、さほど戦争被害とは関係のない地域に住んでいた僕は、一応学校にも通えるごく普通の生活を送っていた。
正直、戦争はテレビの中の出来事くらいにしか実感ができない、そんな世界の中、あの日の僕に起こった出来事はあまりにも鮮烈で、あまりにも非日常、いや、戦争の最前線にいたってこんなこと、あるはずのない事だったんだろうと思う。
その日、学校から帰った僕を待っていたのは、いつも不機嫌そうな母親でもなく、誰もいないがらんとした空間でもなく、まるでテレビドラマの中にでもいるような黒づくめの男たちとまるで人形のようにボンヤリと感情も感じられない母の姿だった。
その後は簡単だった。
大きな車に乗せられ、耳と目を封じられ、あらゆる交通手段を駆使して、光が差した、その時にはもぅ、目の前は彼しかいなかった。
つづく
