亜金は、玉藻を探した。
しかし、どこをどう探せばいいかわからない。
亜金は、神社の中を走り回った。
亜金の携帯が鳴る。
セバスチャンからだった。
亜金は、電話に出る。
「大樹という青年確保ですぞ!」
「あ、ありがとう」
「玉藻さんは、確保できましたか?」
「うんん。
クララって女の子に足止めされて……」
「絶対王政の能力者ですね」
「うん。
でも、それは吾郎さんがどうにかしてくれた」
「そうですか……」
「他の皆はどうしてるんだろう?」
「雑魚たちも沢山侵入しているので、そちらの討伐を任せていますぞ」
「そっか……
侵入者は、沢山いるのか……」
「そうですぞ」
「じゃ、玉藻はもしかしたら他の場所に連れていかれた可能性も……」
「あるでしょうね」
セバスチャンが、低い声で言う。
するとクララが亜金の後ろに立つ。
「クララ……?」
亜金が、クララの方を見る。
すると吾郎が、薫と由香も連れて現れる。
「クララちゃんが、亜金に話があるようだ」
「え?なに?」
「あの……
玉藻って人、きっとあそこにいるですわ」
「あそこ?」
「うん、橘邸」
「え?」
「さんかく山にあるの……」
「さんかく山?」
亜金は、首を傾げる。
「さんかく山は、さんかく山ですぞ!」
セバスチャンが、電話の向こうでそう言った。
「どこ?
俺、その山しらない……」
「なら、俺が案内する」
亜銀が、そう言って現れる。
すぐ近くには千春もいた。
「あ、助かる!」
亜銀は、下っ端と思われる男を投げ飛ばす。
「では、ここは私どもに任し亜金様たちは、玉藻を追ってください」
セバスチャンは、そう言って電話を切った。
「私も行きますわ」
クララがそう言うと亜銀がクララを睨む。
「お前を信用しろというのか?」
クララは、そう言って泣きそうな目になる。
「大丈夫だよ」
亜金が、そう言うとクララの頭を撫でる。
「大丈夫という根拠は?」
「ニートの勘かな」
「一番信用できない勘だな」
亜銀が、ため息をつく。
吾郎が、笑う。
「若いっていいな」
「え?」
「とりあえず道を出よう。
車をすぐに用意する」
吾郎が、そう言ったので亜金たちは山元神社を出た。
そして道に出ると吾郎は指をパチンと鳴らした。
すると一瞬で車が出た。
「愛車のウイングウェィだ」
「車を出したのか?」
亜銀が目を丸くさせて驚く。
「僕の能力は、自由にモノを出し入れすることができるんだ。
さぁ亜金君、亜銀君、クララちゃん。
玉藻ちゃんの救出頑張ってね」
「吾郎さんは行かないのですか?」
亜金が吾郎に尋ねると吾郎は苦笑いを浮かべた。
「子供たちをここに置いて行くわけには行かないからね。
それにウイングウェィは、5人乗りなんだ」
「じゃ、子供たちも連れて……」
「帰りに玉藻ちゃんを入れると重量オーバーにならないかい?」
「あ……
そうですね……」
「おい!
早くしろ!今からベルゼブブの拠点に殴り込みをかけるぞ!」
既に運転席に座っている亜銀が、亜金に言うと亜金たちはすぐに車の中に入った。
そして、亜銀は車を発進させた。
「で、玉藻をさらったヤツの名前はわかるか?」
「月六って呼ばれてたよ」
「稲妻の月六か……」
「知ってるの?」
「アイツは、能力さえなければ普通のおっさんだ。
戦闘能力は低いはずだ」
「え?
滅茶強かったよ?
素早いし……」
「脳内信号を雷の速さで伝達している。
あれは、体に負荷がかかるから長期戦には向かん。
長期戦に持ち込めば倒せるはずだ。
厄介なのは、黄河大樹だ。
アイツのボマーは――」
亜銀がそこまで言いかけると亜金がニッコリと笑う。
「大樹って人は、セバスチャンが倒してくれたよ」
「そうか……」
亜銀が、頷く。
「そろそろさんかく山よ、結界があるから気を付けてることですわ」
「気を付けるってどうやって?」
亜金がクララに尋ねる。
するとクララが胸を張って言葉を放つ。
「結界よ、私たちを通しなさい」
クララがそう言うと森の中が一気に明るくなる。
「これは?」
「ここから先が、ベルゼブブ本部よ。
勤や月六がそこにいると思う」
クララが静かな口調でそう言った。
「ここからは、歩いた方がよさげだな」
亜銀が、そう言って車を止めた。
「どうして?」
「車を発見されれば帰りの足を無くしてしまう。
それは、厄介だからな」
「あ、そっか……」
「ここからだと3キロ先に屋敷がありますわ」
クララが、そう言って先頭に立つ。
「わかった」
亜金が頷くと亜銀と共にクララのあとに続いた。