無たちは、医務室で静かに女たちの手当てを受ける。
医務室には、既に玉藻の姿があった。
皆、意識を失っている。
意識があるのは、無と看護師の女たちと道長のみだった。
看護師の1人が無に尋ねる。
「コーヒーか紅茶飲みますか?」
「あ、コーヒーでお願いします」
無がそう言うと看護師が紅茶が入ったカップを持ってきた。
無はお礼を言ったあとその紅茶を口に運ぶ。
「美味しいですか?」
紅茶を運んできた看護師が無に尋ねる。
「あ、はい」
無は、苦笑いを浮かべる。
「必要なモノがあるのなら遠慮しなくても言っていいぞ?」
道長が、豪快に笑う。
「なんかイメージと違うな」
「なにがだ?」
「道長、お前はもっと極悪人かと思っていた。
だが、こうやって接してみると普通のおっさんだな」
「ワシは、敵には容赦ないが敵ではないやつには慈悲深いぞ?」
「そうなのか?」
「ああ……」
2人が、雑談をしていると玉藻がよろよろと歩きながら無の元に近づいてきた。
「道長様、すみません」
玉藻が、今にも泣きそうな顔で謝った。
「気にするな……
とは言わないが、亜金を奪われたのは主だけの責任ではない。
ワシの責任でもある。
主の次の仕事は、このモノたちと手を組んで亜金の奪還だ」
「……はい」
「亜金奪還後は、主が四六時中見張るのじゃ」
道長がそう言うと無が眉間にしわを寄せる。
「ちょっと待て亜金は学校に通わせると言う約束のはずだが……?」
道長が、笑う。
「ああ。
通わせる。
だが、玉藻も学校に通わせる。
ちょうど亜金と同じ歳だしな。
そっちの方が都合がいいじゃろう?」
「そうだが……」
「これは、護衛じゃ。
玉藻も日々精進しておる。
亜金を護る術をこの戦いで開花させろ」
「わかりました」
玉藻は、頷いた。