MIHOシネマさんの記事を以下に転載致します。
http://mihocinema.com/akira-1233


『AKIRA』あらすじ&ネタバレ考察・ストーリー解説

大友克洋の同名漫画を大友本人の手によってアニメ映画化。第三次世界大戦後の近未来の東京を舞台に、アキラと呼ばれる強大な超能力者を巡り軍隊やゲリラ、暴走族たちが戦いを繰り広げる。

あらすじ

AKIRA』のあらすじを紹介します。

第三次世界大戦によって廃墟になった東京だが、2019年には復興も進められネオ東京として蘇っていた。そんな中職業訓練生の鉄雄は友人の金田たちとバイクを飛ばしていた所、突然現れた奇妙な子供に驚き事故を起こす。そして鉄雄は軍に連れ去れてしまう。実は軍部は子供の姿のままのエスパー実験体を研究しており、先の子供のその内の1人だったのだ。そして鉄雄も同様に実験体となり、恐るべき超能力に目覚めてしまう。その力は、かつて余りの危険さゆえに封印されたエスパーアキラに匹敵し、その封印をも解き得る程だった。

一方で金田は偶然出会ったゲリラの少女ケイと協力し、鉄雄を救うべく軍の施設に侵入する。しかしそんな金田を鉄雄は超能力でもってはねのけると、アキラが封印されているオリンピックの会場建設場に向かう。最早軍を持ってしても鉄雄を止めることは出来なくなっていたのだ。金田や軍、ゲリラまでもが鉄雄を追ってくるが、ついに鉄雄はアキラの封印を解いてしまう。しかしそこにあったのはアキラの脳神経だけであった。軍は鉄雄を攻撃するが、鉄雄の力は暴走し全てを飲み込んで行く。ついに金田も吸収されようとした時、エスパーの子供たちがやってくると自分たち諸共鉄雄を他の次元に飛ばし、未来へと希望をつなぐのだっった。

動画紹介

ネタバレ考察・ストーリー解説

『AKIRA』について、2つ考察・解説します。※ネタバレあり

ネオ東京の正体

戦争後復興を遂げたネオ東京は一見高層ビルが立ち並ぶ立派な未来都市だが、一方でゴミやホームレスで溢れた荒んだ街だ。見かけに反してその実は空っぽなのだ。そこに住む人々の多くも同様に空虚な存在として描かれる。日和見主義の政治家たちに新興宗教団体。イマイチ市民の支持を得ているようにない東京オリンピックもその1つで、それを隠すかのように箱ものだけが巨大化している。これらには未来へと向かう力がない。最たる例がアキラの封印だろう。アキラには全てを変える力が秘められているにも関わらず、人々はかつての暴走を恐れ封印している。全ての可能性を諦め腐っていくしか道が残されていない街、それがネオ東京なのだ。

ラストの意味

暴走した鉄雄を止めるためエスパーの3人は鉄雄を異次元へと連れ去る。可能性の芽は失われてしまった。しかしその時エスパーの1人はこのような言葉を残す。「でもいつか私たちにも」。いつか私たちもアキラの力を得ることが出来ると言うのだ。その力とは、超能力というよりは未来を切り開いていく力のことなのだろう。崩壊した街を背景にモノローグは続く。「もう、始まっているからね」と。崩壊は逆説的に再生や希望を彷彿させる。生き残った金田たち若い世代が、新しい世界を作り上げる未来を予感させる終わり方だ。

まとめ

原作者本人が監督を務めるという珍しいケースだが、それ故に大友の世界観を見事に表現している。荒廃したサイバーパンク的世界観は見事で、80年代的エッセンスを効果的に使用した美術や衣装は今見ると逆に新鮮味があって良い。活劇に対するこだわりは異常なほどで、冒頭のバイクでの暴走シーンや、ラストの崩壊するスタジアムの破壊描写は圧巻。当時としては異例の10億円という制作費もうなずける出来映えだ。

一方でストーリーは詰め込み過ぎでやや分かりにくいものになっている。全6巻の原作を2時間で描くのであるから当然ではあるが、SF的なストーリーとメッセージ性が密接につながっている点も本作を難解にしている。音楽は芸能山城組が担当。独特の世界をうまく表現している。

転載以上