お正月休み、結局ずっと脳がアルコールでひたひたなまんま。
おとなりでわんこな話の一人称な続きがうまく書けなくて……行き詰った猫木の現実逃避な思い付き妄想にございますとさ。
_:(´ཀ`」 ∠):
 


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ふんふんふふーんと、ご機嫌な様子で鼻歌を歌う少女がひとり。
手馴れた手付きでてきぱきと畳まれ古びた皮のトランクに詰め込まれていく着古したドレスたち。
高価な調度品などはなくともポプラやお手製の刺繍に飾られたクッションなどが素朴ながらも愛らしいこの部屋の主人たる彼女は、ただいま嫁入り準備真っ最中なのであった。
「…………お嬢さま、本当によろしいのですか?」
上機嫌なキョーコとは対照的に、眉を寄せ不満気な様子でそう声をかけるはモガミ家にただひとり残されたメイドのカナエである。
「もちろんよ!だって、あのツルガ様がこんなモガミの家名しか残ってやない私を貰ってくださるのよ?感謝しなくちゃ罰当たりだわ!!」
持参金だって弾んでくださって……これでみんながこの冬に飢えることもないし、モー子さんに退職金だって渡してあげられるんだもの。と、歌うような声で続けてみせるキョーコ。
彼女、モガミ・キョーコは古くからこの国にある公爵家のひとり娘……なのだけれど、枯れ果てた鉱山地区と僅かばかりの麦畑を抱えたモガミ家は領地運営だけで精一杯の青色吐息な貧困っぷり。貴族とは名ばかりなまでの落ちぶれたものなのであった。
そんな落ちぶれたモガミの家に舞い込んだ求婚。
それが、近頃社交界で名を馳せるツルガの党首であるレンからの申し出であったのだ。
男爵家ながらも、香辛料から果ては絹糸な輸入に至るまでの幅広い交易を営み莫大な富を築き上げているツルガの家。
そして、何よりも輝くげばかりの整った美貌と優雅で紳士的な立ち振る舞いで世の乙女たちの視線をその一身に集めたる社交界で一番のモテ男と名高き遊び人。
そんなレンのハートを射止めたとは……微塵たりとも思ってもいないキョーコ。
「大丈夫よ。だって、私がレン様の名ばかりの妻だってちゃんと解っているもの。」
この縁談に不服そうな素振りのカナエへと、へにょっと笑ってそう語ってみせるのであった。
婚約を約束されていた幼馴染みに裏切られ、地味で色気のない自分には恋愛にはこりごりであると身に沁みたとそう事あるごとに言ってみせていたキョーコ。
そんなキョーコに舞い込んだレンからの求婚。それはきっと、富もない貧乏貴族であるモガミの侯爵としての家名だけが欲しいがだけの形式上な婚姻に違いないと、キョーコは語るのである。
「だって、レン様よ?どんな名家のご令嬢に想いを寄せられても、心に決めた方がいるってお断りばかりだった方だもの。」
だから、持参金さえ持たせられぬ侯爵家の家名だけのキョーコを名ばかりの妻に迎え……レンはその心に決めた方を愛人として囲うに違いないのだと。
「んふーふ!侯爵家の名が欲しいレン様と恋愛なんてしたくない私。需要と供給の一致!正に理想の旦那様!!こんな地味な妻を社交へと出そうともなさらないでしょうし……毎日のご飯とモガミへの僅かばかりの援助金さえお約束してくださるなら、愛人をどれだけ作っていただいても文句のひとつも言いませんとも!」
きゅらっと大きな紅茶色の瞳を夢見るように輝かせながら語るには不釣り合いな、未来の夫の愛人ウエルカムで冷え切った家庭内別居を決定付けたような内容である。
……本当の本当にそうなのか?と、疑問府を浮かべるカナエ。
ツルガへと嫁入りした後も、形ばかりのお飾りの妻として今と変わらぬ庶民的な生活を続けるのだと信じて疑わぬまま、荷造りの手を止めずにケラケラと笑ってキョーコは言うのだ。
だって、レンとキョーコが顔を合わせたのなどほんの片手で事足りるほど。
更には、春の陽射しのようなやわらかな笑みを絶やさぬと有名なあのレンが、キョーコへと求婚を告げる席では笑顔のかけらもない無表情で固まりっぱなしだったのだから…………キョーコへ、女としての興味なんてこれっぽっちもないに決まっていると。
給金もろくに払えなくなったモガミの家に最後の最後まで残ってくれていたメイドにして、キョーコにとって親友のように姉のようにさえ思えるカナエとの別れを惜しんで、絶対っ!絶対に手紙書くからね!!モー子さんもお返事ちょうだいね!?なんて手をぎゅうっと握っては涙ぐんでいるキョーコ。
そんな彼女がツルガへと嫁入りするのは二日後の予定。





戸籍上なだけの冷え切った名ばかりの妻となる気まんまんでいるキョーコ。
想い人を前に照れ隠しに無表情になってしまうような初恋を拗らせた男が、ツルガにて愛しい愛しい花嫁がやって来てくれるのを今か今かとそわそわしていて……
愛人の影かたちもなければ、キョーコを溺愛する甘ったるい新婚生活が待ち受けているなどとは、まったく知らないままでいるのであった。




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拗らせ蓮くんが愛しいお嫁さんもらった!ってはしゃいでたら……愛人の方はどちらに?もちろん、お邪魔は致しませんから!なんて、名ばかり妻で新婚早々に家庭内別居する気バリバリなキョコさんがやって来ちゃった…………とか、楽しいんじゃないかと、なーんて。
ただそれだけな妄想にございましたとさ。
( ´艸`)


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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