ビシシシバシシシ!!
と、そんなふうに見事なまでの効果音までさせてキョーコからの溢れるように飛び出す逢えて嬉しいわ!!なお花の連打を、慣れたようすの片手でもって叩き落としてみせるのはひとりのデモネス。
唐突に忽然と居なくなったキョーコを心配して探していた、キョーコのはじめての友人であるモー子さんことカナエである。その手には召喚された時にキョーコの落とした愛用の如雨露が密かに握られている。
「ちょっ!あんた、髪とか伸びてるけどキョーコなのよね?あんだけ見つかる前に全力で隠れるか逃げるかしなさいって言っといたのに、なんで噂の魔犬と魔術師とのほほんと手なんて繋いでんのよ!って……離れなさいよっ!」
あんなおっそろしい人外魔術師に目つけられたくないのよ、私を巻き込まないでよ!!と全力全開ぶっちぎりで懐きまくり抱擁しようとしているキョーコをぺしょりと冷たくはたき落とす女悪魔。
いや……あの……と、置いてけぼりに放置された魔術師はどうしたものかと途方に暮れたようにただ棒立ちのまま立ち竦む。だらりと草の上に寝そべったままの魔犬に至っては、ピクリとうるさそうに耳を震わせてみせるだけで目を向けようともしない。
そんな魔術師と魔犬の様子に取り立てての脅威は無しと判断したのか……単に絡み付くキョーコにうんざりしたのか、カナエはぷちっと限界に来たかのような勢いでキョーコへと叫ぶのであった。
「もーーー!!落ち着いてあの魔術師と何がどうなってんのか説明しなさいっ!!」
ずびしっ!と魔術師に向けて人差し指を指しながら。
そんなカナエの勢いに気圧されるようにキョーコは喋り出すのだが……
「えと、あのね、レンは……」
と、とりあえず魔術師としての男の名前まで口に出したところで口ごもってしまう。
なんと説明したものか……だってそうであろう?私の『ごはん』とでも?夢魔としての『食べ方』を思うとなんだかとっても破廉恥でないだろうか?なんて、躊躇うキョーコなのだけれど
「はじめまして、俺は魔術師のレン。キョーコちゃんの『ごはん』になりに来ました。」
キョーコの見事なまでの懐きっぷりに敵に回さない方が良いと判断したのだろう、にっこりと絵に描いたように余所行き爽やかな笑顔でもって魔術師の男は言ってのけたのだった。
はぁぁぁ!?と驚きの表情を浮かべるカナエ。然もありなん。弱肉強食の理の通り、例え魔術師自らが己をキョーコへと差し出そうともだ、食べるというからには相手よりも強者か、少なくとも対等の力と器が無ければいけないのだから。
わざわざ力のないへっぽこサキュバスなキョーコの『ごはん』になるなど余程のことなのだろう……そう判断したのか、キョーコを守るように胡散臭い笑顔の魔術師のへと警戒の色を滲ませてレンへと向き合うカナエ。
そうして、懐かれると実はこっそりと嬉しい癖につれなくしちゃう系保護者兼友人による自称キョーコの『ごはん』な男への、非常にピリついた空気な面接が幕を開けたのであった。
 
 
 
 
 
 
下手に隠し立てしようものならば、キョーコとの間に立ち塞がる障害に……それもキョーコが懐いているので強制的に排除する事さえ不可能な厄介この上ないものに成り得ると判断したからだろう。
嬰児として異能を持ち産まれ、ひとのことわりからつまはじきにされるように魔界へ落ち……そして、キョーコに助けられたことからキョーコに食べてもらうと約束し、約束を守る為に人としての輪廻の輪から外れ落ちアスモデウスの協力を得てまでキョーコを探し出したのだと。
そして、キョーコが他の男を食べるのさえ許せなくてキョーコの夢魔としての力を歪め奪い取った過去も、全てを隠す事なくあかしたレン。
落ちこぼれとバカにされ、キョーコが飢え続けていた元凶とも言える魔術師を前にぞわりとした本気の怒りをその瞳に浮かばせたカナエ。
カナエが自分の為に怒ってくれる事への嬉しさを滲ませつつも、えと、でも私がコーンを食べるって約束したし、コーンも約束守ろうとしてくれてるし……とレンを許し責めずにむしろ庇おうとするキョーコ。そして、カナエの非難の瞳から微塵も目を逸らさずに真剣に受け止めているレン。
はぁぁぁぁっと、デモネスは大きな大きなため息を吐き出すと
「……で?返すんですよね、もちろん。」
小ぶりの赤い角を覗かせる長い黒髪をさらりと揺らし斜に少し首を傾げさせ、その美しい顔立ちにヤケに迫力があるような柄の悪いような表情でもってレンへ向けて吐き出した。過去に男が奪い上げたキョーコの夢魔としての力を返すのだろうと、そうすごみ脅すように。
カナエの視線が指す先には、レンの首に掛けられたままのネックレス。その銀の輪に抱かれたピンク色の宝石。
力の使い方さえ知らないままに、キョーコへの執着で雁字搦めに縛り付け硬められたために当人のレンでさえどうすればキョーコへと返せるのかも不明なキョーコの夢魔としての力の結晶。
 
 
 
 
「返し方さえわからないとしてもどれだけ捻じ曲げられていたとしても……貴方じゃなくてキョーコが持っているべき筈のものですよね?」
 
 
 
 
 
恐喝するかのようなカナエに気圧されるようにコクコクと素直に頷いて、今まで愛しい夢魔の存在を確証してくれるお守りのようにずっと身に付けていたネックレスを首から外すとキョーコの手へと渡す魔術師。
別に返さないつもりだった訳じゃなくてタイミングを逃してただけなのに……と、口の中で呟きながらがっくしと凹むレンをしりめに、カナエはキョーコへと付け足しのように言ってのけたのだった。
あんた、それとは別にちゃんと慰謝料もがっちり巻き上げなさいよ、と。
 
 
 
 
 
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お家な話になかなか辿り着かない……いや、わかってたんです。寧ろこっからですよ、レンくんとカインな設定話とか練り込もうとか思ってましたもの。
だから、今回は前編とかにせず最初っから諦めと開き直りなナンバリングですもの。
いまいちおもしろみのない話でごめんなされぃ。
_:(´ཀ`」 ∠):
 
 
 
モー子さん>キョーコちゃん>レンくん……な、感じでキョコバスちゃんへの執着ゆえにモー子さんに歯向かえないレンくんを自覚してしまったデモネスカナエさん、最強説。
(´∀`=)
 

 
次回、呼んでもいないお客、乱入。←だーれだ?
 

  

↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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