俺が教えてあげるよ?
そんな甘い言葉に
飛びついちゃいけなかった
かもしれない。


「ほら、また足元ばっかり見てる。」


優しい嗜める低い声が
私の耳のすぐそばで


だって
だって、ですよ?
「学校で習わなかった?」
なんて当たり前に聞かれたけど
社交ダンスなんて教わった事なくて
レッスンに通うって言ってみたけど
「どうせ本番は俺と踊るのに?」
って、キュラッて笑顔に押し切られちゃって


身長差を埋める為の高めのヒール
不安定な身体を支えてくれる腕とか
ぴったりと寄り添うみたいに近い身体とか
ふわりとターンの時に香るセラピーな香りとか
ドキドキと煩い鼓動がバレたり……
してないかしら?


教えてもらったばかりのステップ
敦賀さんの足を踏んづけてしまいそうだし
それに……なんだか
いつもより近くにある
神さまに愛された麗しき美貌
なんとなく……
楽しそう?というか嬉しそう?で
そんなにも
優しく笑わないでください
じょっ、浄化されちゃうっ!


マヌケ面晒してるんじゃないかって
つい、また俯いてしまっていた私の頬に
ちゅって……


え!?
思わずに顔を上げれば
酷く、神々しいくせに
企んだみたいな悪い笑顔が


「何度、口頭で注意しても聞かないなら……」


近く、本当に近くに
まるで囁くみたいに


「今度から足元見る度に、キスするよ?」


な、なななななっ!?
なんてことのない甘い笑顔が
さぁ、最初からなんて
私の手を取って
取り乱す私を置き去りにしてしまう


貴方とワルツ。