「今のお姉様に必要な資料各種ですわ♡ぜひ、お勉強なさいませ!」



それはとても可愛らしくも奇妙でシュールな風景であった。
場所は、ラブミー部の部室であったり最近はじめたばかりのキョーコの一人暮らしの部屋であったりといろいろ。
そして、現在ふたりは豪邸とそう言い切ってしまえる広大な敷地と豪奢な邸宅の一室でそれが行われていた。
真っ赤な顔で、もじもじと指先と視線を彷徨わせ恥じらいに恥じらうキョーコが小さな小さな声で言った。
「あ、あのね?……こ、ここここの前…見せてくれた、雑誌とかって……借りたり…しても……いいかな?………マリアちゃん。」



こんな事、誰に相談していいのかわからない。ぐるぐると曲解思考に迷い込む恋愛拒絶思考回路搭載のラブミー部のラスボスは、紆余曲折を経てその厄介な恋愛を実らせた。
抱かれたい男NO.1という、よく考えたら恥ずかしいような称号を持ってしまえる彼女の彼氏となる彼。
その彼との、微笑ましいにも程があるような交際。稚拙なその交際について若葉マークべったりなキョーコが相談出来る相手………愛に生きるお祭り男な愛の伝道師の孫であるマリアだけとなっていた。
それというのも、親友であり呪われしラブミーピンク仲間のモー子さんこと琴南奏江や雨宮千織には「惚気なら他所でやってちょうだい。」「ラブミー部だからわからないわ。」と早々に匙を投げられたし、他の同年代の女友達にはふたりの交際は秘密事項であったし、交際相手本人な蓮に聞くのはなにかそら恐ろしいような悪い予感がするからしたくなくて………恋愛ごとになら嬉々として首を突っ込むお騒がせ社長に至っては論外であったため………溺れるキョーコが掴んだワラは、幼いが頼りになる小さなラブモンスターとさえ言えるマリアであったのだった。
「一緒にいるとドキドキして心臓が壊れそう」だの「いい匂いがするから、いつもまぬけ顔になっちゃう」だのと言った砂でも吐きそうな惚気から「最近、敦賀さんといるとズダムッ!!とかって打撃音みたいな音が良くするんだけど………ラップ音かな?でも、神の寵児のおそばで心霊現象?」と言った謎なものまでのかわいらしい恋愛相談も、お付き合い期間が半年にかかろうとした頃から先行き怪しい雲行きとなっていっていた。
「一緒にいてくれるんだけど……敦賀さん私が近づくと無表情になっちゃうの」「最近は手も………つないでない。」そんな甘々なふたりの空気と蓮の溺愛と言っても過言ではない執着心を知る者からすれば首を傾げてしまう様な、停滞したふたりの仲。それは、キョーコの不安をグシグシと容赦無く煽るものだった。
「マリアちゃん………お付き合いするってなんだろうね?何をすればいいのかな?」
うにゅぅと眉を落としたキョーコにマリアが差し出したもの………それは、ティーンエイジャー向けのとある雑誌。
可愛らしいファッションな話題に混ざって、その特集が組まれていた。
『彼とのはじめての♡♡♡特集』なるその記事。それをちらりと読んだキョーコは、茹蛸のごとく真っ赤に真っ赤に染まると素晴らしいその肺活量を活かした悲鳴をあげて
「マリアちゃん!!こんなの見ちゃダメっ!!」
と、マリアの目を手で塞ごうとした。
キーンとする耳鳴りにちょっとだけくらくらと眩暈がしたマリアだったが
「あら、これぐらいどうということありませんわ。お姉様用にと、初心者向けですのよ?」
と、その愛らしい幼い顔にニッコリと笑みを乗せて答えたのだった。
結局、その時には「こんな破廉恥なの読めない」と、半泣きでそう断ったキョーコであったが…………
後日、件の雑誌を借りるべくマリアの元を訪れたのだった。
「こうなるかと思いまして用意しておきましたわ。」
マリアがキョーコへと渡したその袋は、あからさまに雑誌一冊以上の何かが入ったものとなっていたのだけれど。




そして、それはふたりに嵐を巻き起こす種となるものとなった。




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暴走?いいえ、当初の妄想の通りにございます。
( ´艸`)
え?うん。いや………たぶん、そうだよね?どうだろう?←混乱中
。(;°皿°)


さて、どんなことにしてやろっかなぁ?


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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