トランプの「奇跡の1枚」で追い詰められたのは、習近平だ…!米中関係に不安を抱く中国人識者が明かした「一抹の不安」

トランプ狙撃と米中関係

NATOは、7月9日から米ワシントンで首脳会議を開催し、翌10日に「中国はウクライナを侵略しているロシアの『決定的な支援者』だ」と批判する首脳声明を発表した。

前編「トランプ銃撃のウラで…「NATOの重大発表」に中国が怯える深刻な事情――「対中包囲網」のヤバすぎる展開」でお伝えしたように、NATOが中国の脅威と対抗する姿勢を鮮明に打ち出し、中国がこのところ世界各地で軍事的なプレゼンスを拡大していることを牽制した。

銃撃されたトランプ大統領 Photo/gettyimages

銃撃されたトランプ大統領 Photo/gettyimages© 現代ビジネス

米国のおひざもとキューバでもまたアジアでも活動を活発化させる中国軍に対して、アメリカの敵愾心は高まるばかり。中国の学会でも「米中関係に改善の余地がない」との認識が広がっている。

こうしたなか、7月13日のトランプ元大統領の狙撃事件は、世界を震撼させた。

負傷したトランプ氏がシークレットサービスに囲まれながら星条旗の前でガッツポーズする勇敢な写真は、トランプ氏の再選への大きな足掛かりとなったかもしれない。

しかし、対中批判を繰り返すトランプ氏のボルテージが上がっていけば、米中対立は、引き返せないところまで行きかねないだろう。

「もう米中関係は限界かもしれない…」

とくに、筆者が注目したのは、中国の学会でも「米中関係に改善の余地がない」との認識が広がっていることだ。

6日に北京で開催された清華大学主催のフォーラムで発言者すべてが「米国との2国間関係は激動期に入った」との見解を語った(7月8日付ロイター)。

パネリストの主な発言は、「2国間関係を安定させるのはもう限界かもしれない」「米大統領選のキャンペーンのせいで貿易摩擦が軍事的な対立にまで発展しかねない状況にある」「南シナ海が米中関係の最も危険な部分になりうる」などだ。

絶大な効果があったとされるパンダ外交を中国政府は米国に対して再開しているが、「パンダ人気は相変わらずでも、中国の好感度の向上には貢献しない」との評価だ。

なにをやっても嫌われる習近平

中国に留学している米国人が10年前の約1万5000人からわずか900人に激減している状況を踏まえ、習近平国家主席は昨年11月に訪米した際、「米国との関係を安定化させるために5万人の米国人を中国に招く」と宣言した。

米中の民間交流を促進しようとしているが、裏目に出ている…Photo/gettyimages

米中の民間交流を促進しようとしているが、裏目に出ている…Photo/gettyimages© 現代ビジネス

この公約を受け、中国政府に関係する複数の団体が今年6月、福建省で開催された1週間の青少年フェステイバルに約220人の米国の若者を招待した。

米国人参加者の多くは米国に次ぐ世界第2位の経済大国を訪問できたことに感謝したものの、「このイベントには台本があり、オープンな対話が欠けていた」と冷ややかだ。

イベントが開催された場所が台湾と南シナ海という米中が軍事的に対立する地域に近いことを意識する参加者も少なからずいたという(7月10日付ブルームバーグ)。

バーンズ駐中国大使は6月末のウォールストリートジャーナルのインタビューで、「米大使館が昨年11月以降に主催した61の行事を中国当局が妨害した」と述べたように、米国では「習氏の公約に反して中国当局が両国の交流を妨げている」との批判が出ている。

 

「チャイナ・ガール」と呼ばれる火薬

一方、中国から米国に留学する若者も減少し始めている。

不動産バブルの崩壊で米国留学中の子供に仕送りできなくなった家庭が急増していることが主な理由だ。国内の大卒者が就職難にあえぐ中、大金をかけて米国に留学してもろくな就職先がみつからなくなっている事情もこの傾向に拍車をかけている。

北米と中国を結ぶ航空便の回復も遅れている。今秋までの計画フライト数は、新型コロナのパンデミック前の2019年同時期の2割にとどまっている。

米中間の交流の縮小が続く状況下で両国関係が改善するはずがないだろう。

「米国社会を蝕む薬物問題に中国政府が関与している」との認識が米国内で広がっていることも気かがりだ。

米国の昨年の薬物の過剰摂取による死者数は5年ぶりに前年割れとなったが、依然として10万人を超えている(推定値は10万7543人)。

中でも、麻薬製鎮静剤(オピオイド)の一種「フェンタニル」が問題視されている。フェンタニルを米国に持ち込んでいるのはメキシコの麻薬組織だが、その原材料を供給しているのは中国であることから、米国では「チャイナ・ガール」と呼ばれている。

米国政府は取り締まりを強化している。司法省は6月18日、メキシコの麻薬組織のマネーロンダリングを支援した容疑で、中国の「地下銀行家」を起訴している。

火種はますます大きくなる…

米国政府は何度も取り締まりの強化を要請しているが、中国政府は「厳正に対処する」と述べるだけで事態は一向に改善しない。

豪を煮やした米連邦下院の中国共産党に関する特別委員会は今年4月、「中国政府がファンタニルの原材料を製造する企業に資金援助を行い、米国の中毒危機をあおっている」との報告書を出している。その後もワシントン界隈で「中国政府が米国社会のアキレス腱を狙い撃ちしている」との警戒感が高まるばかりだ。

追い詰められているのは中国なのかもしれない…Photo/gettyimages

追い詰められているのは中国なのかもしれない…Photo/gettyimages© 現代ビジネス

そんな中でのトランプ元大統領の狙撃は、はたして米中関係にどのような摩擦を引き起こすだろうか。

中国政府がこの問題に直ちに対処しない限り、米国との対立は後戻りできないレベルにまで悪化してしまうのではないだろうか。

さらに連載記事「「中国EV」が欧州の港で大量ストップ…!止まらない欧米の中国包囲網は「プラスチック」へと飛び火!習近平「経済無策」の悲惨な代償」でも、世界から総スカンされる中国の現状について詳しくお伝えする。