米・国防総省が恐れる中国の「生物化学兵器」

アメリカの国防総省は8月17日、「中国の生物兵器は深刻な脅威だ」と規定する軍事ガイドラインを公表した。中国が意図的に生物兵器を使って全世界で活動中の米軍の活動を攪乱するおそれがあると判断したからだ。

ガイドラインの正式名は「Biodefense Posture Review(BPR)」だ。BPRでは致命的な病原体を作る能力を保有する国として、中国・ロシア・北朝鮮・イランなどを挙げているが、最大の脅威とみなしているのが中国だ。

BPRは、「中国は生物学を『新たな戦争領域』と呼んでいる」とした上で「米軍は緊急に対策を講じなければならない」と強調している。

BPRの発表を受けて、8月17日付米ワシントンポストは「中国は過去10年間、危険な病原体をテストできる実験室に莫大な投資をしてきた。生物学の分野でも『軍民融合(民間技術の軍事転用)』政策を強力に推し進めている」と報じた。

「中国が来年までに攻撃的な生物兵器を保有しても驚かない」とする専門家の見解も伝えている。

根強いコロナ「武漢研究所」流出説

アメリカでは新型コロナの起源について、野党・共和党議員を中心に中国の武漢ウイルス研究所から流出したとする説(武漢ウイルス研究所説)を訴える声が根強い。

BPRも「生物兵器が偶発的に流出する可能性がある」として武漢ウイルス研究所流出説に間接的に言及している。日本では大きく報じられなかったが、海外では今年4月以降、新型コロナの起源に関する報道が相次いでいる。

バイデン大統領が3月20日に「米情報機関が集めた新型コロナ関連の情報を機密解除して公開することを求める法案」に署名したことが背景にある。共和党はこの法律をテコに米国民に情報を開示し、中国の責任を問う世論を喚起する狙いがあると言われている。

米ウオール・ストリート・ジャーナルは4月18日「米上院保健教育労働年金委員会が新型コロナの起源について調査した結果、『中国の研究所から流出した』と結論付けた」と報じたが、最も充実した内容の記事を報じたのは、6月10日付サンデータイムズ(イギリスの日刊紙「タイムズ」の週末版)だった。

次々と認定される中国・流出説

サンデータイムズは、情報公開請求で確保した米国の情報機密文書や各種の科学論文、関係者の間でやりとりされた電子メールなどを検討した結果、「中国軍と武漢ウイルス研究所が生物兵器として新型コロナウイルスを開発したものの、管理が不十分だったために流出した」と結論づけた。

サンデータイムズによれば、遅くとも2017年から中国軍事医学科学院と共同で秘密裡にコロナウイルス研究を実施していた武漢ウイルス研究所は、アメリカの非営利団体「エコヘルス・アライアンス」を介して65万ドルもの米連邦資金を得ていたという。(なお、米国政府は7月17日、武漢ウイルス研究所の米連邦資金へのアクセスを停止する決定を行った)。

しかし、この8月、さらに衝撃的な事実が明らかになったのだ――。

後編記事『習近平の大誤算…!現実味を帯びはじめた「新型コロナ“武漢研究所“流出説」で、米トランプが公言する中国への「巨額賠償」、その悲惨な中身』では、ついに中国体制派の専門家もその可能性を指摘し始めた「流出説」の深層を紹介していこう。