台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は2日夜、台湾対岸の中国福建省沖で操業していた台湾漁船が中国海警局の公船に拿捕(だほ)されたと発表した。台湾人船長ら6人は中国側に連行された。駆けつけた海巡署公船が漁船の解放を求めて、中国側とにらみ合う場面もあった。

 海巡署や台湾メディアによると、2日午後8時(日本時間同9時)過ぎ、台湾・澎湖諸島所属の漁船が福建省晋江市沖でイカを取っていたところ、近づいてきた海警局公船2隻に乗船検査を受け、拿捕された。

 現場は晋江市から約11カイリ(約20キロ)沖合で、福建省沖に浮かぶ台湾の離島・金門島の東に位置する。台湾メディアによると中国の領海内だが、長く台湾漁船の操業が黙認されてきた海域だという。

 漁船には船長や外国籍の船員5人が乗っていた。当時通報を受けた海巡署公船が現場に急行し、放送で漁船の解放を求めたが、中国側はこれに応じず、午後10時ごろに船長らを中国に連行したという。

 金門島周辺では今年に入ってから、台湾が中国船の立ち入りを禁止・制限するよう設定した海域に海警局公船が侵入する事案がたびたび発生。台湾の実効支配を形骸化させる狙いとみられている。海巡署は今回の拿捕について「政治問題化させず、速やかに漁船を解放する」よう求めている。【台北・林哲平】