中国の習近平国家主席は19日、北京の人民大会堂で、アントニー・ブリンケン米国務長官と会談した。習氏は「世界は安定した中米関係を必要としている」と述べ、ブリンケン氏も冷え込んだ米中関係を改善させる意向を示した。一方、ブリンケン氏が中国高官と行った会談などでは、台湾問題をめぐって応酬が続き、国防当局間の対話再開も実現しなかったという。米中両軍が、台湾海峡や東・南シナ海で〝異常接近〟する事態が発生しているが、緊張緩和につながるかは不透明だ。

習氏は、ブリンケン氏とにこやかに握手を交わし、約30分間会談した。

「二大国は万難を排除し、相互尊重、平和共存、協力、ウィンウィン(相互利益)の正しい道を見つけることができると信じている」「両国間に存在する共通の利益は重視されるべきだ」

習氏は会談でこう語った。

ブリンケン氏は、米中関係を管理することが両国の「義務と責任」であり、「世界の利益」にもなるとの考えを示した。米国務省が会談後、明らかにした。

ただ、台湾問題などでは、米中の意見は平行線だった。

ブリンケン氏は18日に秦剛国務委員兼外相と、19日に王毅共産党政治局員と会談し、台湾海峡や東・南シナ海での中国の挑発的な行為について懸念を伝えた。

これに対し、王毅氏は台湾問題で「妥協や譲歩の余地はない」と語り、米国を牽制(けんせい)したという。

米中間では今月3日、台湾海峡を通過していた米海軍のミサイル駆逐艦に、中国軍艦艇が異常接近した。5月26日には南シナ海上空で、中国軍の戦闘機が米空軍偵察機の正面を横切り、飛行を妨害する危険行為もあった。

米中両政府は、年内を視野にジョー・バイデン米大統領と習氏の首脳会談を調整する。今回のブリンケン訪中をどう見るか。

中国事情に詳しい評論家の石平氏は「米中の関係改善を望んでいるのは習氏や中国の方だ。経済面などで、米国などの対中制裁が効いており、今回も『米国に挑戦する意図はない』と腰を低くして、ブリンケン氏との会談に臨んだ。『核心的利益の核心』と公言している台湾問題だけは譲れないが、それ以外での対話は進めたいのが中国側の本音だろう」と分析した。