自衛隊に与えよ「栄誉と報酬」 経費は自腹、衛生面も不安あまりにひどい「予備自衛官」の処遇 志は一緒、体制も含め改善すべき

 

自衛隊には常勤する隊員の他にも、非常勤の自衛官である「予備自衛官制度」が存在する。平時では、一般企業などで働いているが、有事に招集されれば自衛官となり任務を遂行する。

予備自衛官の中には、特に訓練回数が多く、即時に自衛隊員となって作戦行動をともにできる「即応予備自衛官」と、招集された後は駐屯地警備など後方支援の仕事を手伝う「予備自衛官」と2種類の制度ある。

即応予備自衛官と予備自衛官は、どちらも自衛隊にとって重要だ。しかし、即応予備自衛官と違い、予備自衛官の処遇はあまりにひどいことが分かった。

有事になれば即座に常勤自衛官とともに戦う即応予備自衛官は訓練回数も多い。常勤自衛官と同様、個人それぞれに自動小銃や戦闘服などの被服一式が貸与される。

それに対し、予備自衛官は、有事に招集されても限定的な仕事となるためか、制服や自動小銃などが個人に貸与されていない。訓練時も誰かの中古戦闘服や自動小銃を借りて訓練する。即応予備自衛官は有事に招集されればすぐに着替えて小銃を持ち部隊に入れるが、平時から貸与されていない予備自衛官の制服や装備は、どこから持ってくるのか?

陸幕広報室は「予備自衛官の戦闘服備蓄はある」と答えた。あるなら即座に予備自衛官にも支給してほしい。

自衛隊の戦闘服はIR迷彩や耐火性に優れ、隊員の命を守る。中古の戦闘服貸与では、その効果が損なわれかねない。被服の予算がなく、十分な在庫がないとすれば、有事で自衛官の命を軽視しているとも言われかねない。即応予備自衛官は充足率5割、予備自衛官は7割程度だ。低い充足率は、この処遇も影響しているはずだ。

それぞれ個人に制服貸与すらない予備自衛官は訓練出頭時に「制服のクリーニング代、絆創膏などの衛生費用」などを徴収される。予備自衛官は訓練をするため、国からの出頭で集まったのに、最初から自腹経費負担とはあきれる。自腹負担が常態化している自衛隊では、この矛盾に疑問も感じないのだろう。

予備自衛官の処遇では、衛生面でも問題がある。

常勤自衛官用のベッドやマットレスには最低限の配慮はある。だが、予備自衛官には、普段使われない古いベッドが使われる。

「直接寝ると体中がかゆくて大変なことになる。枕などは黄色いシミだらけで、吐き気を催すようなものもある」

予備自衛官も同じ人間であり、自衛隊と志は一緒の仲間であるはずだ。体制も含め、このような処遇に差をつけるようなことは改善すべきだと私は思う。 (国防ジャーナリスト)

おがさわら・りえ 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、「月刊Hanadaプラス」で連載中。2022年、第15回「真の近現代史観」懸賞論文で、「ウクライナの先にあるもの~日本は『その時』に備えることができるのか~」で、最優秀藤誠志賞を受賞。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。