EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は2月23日、業務に使用する端末からショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」をアンインストールするよう、全職員に対してメールで通知した。TikTokは中国のアプリ開発大手の字節跳動科技(バイトダンス)が運営している。
欧州委員会には約3万2000人の正職員と契約職員が所属している。上述の通知によれば、職員たちは3月15日を期限に、欧州委員会のモバイル端末向け業務系システムに接続可能な公用および私用のスマートフォン上でTikTokを利用するのをやめなければならない。
仮に3月15日までにアンインストールしなかった場合、その職員は業務規定に違反したと見なされ、欧州委員会の電子メールボックスへのアクセスや、委員会専用のビデオ会議アプリなどの利用ができなくなる。
欧州委員会が別途発表した声明によれば、TikTokの利用を禁止した理由は、ネットワーク・セキュリティ上の脅威を回避し、欧州委員会の業務システムに対するサイバー攻撃を阻止することにあるという。なお、欧州委員会はTikTok以外のSNS(社交アプリ)の安全性についても、継続的な審査を続けるとしている。
テキサスでは州立大学でも禁止
同じく2月23日、カナダ政府はTikTokのプライバシー保護に関する調査に着手すると発表した。TikTokが個人情報を収集、利用、公開する際、ユーザーから有効な合意を取り付けているかどうかを調査する。特に若年ユーザーの個人情報の収集・利用について、手続きの透明性をきちんと確保しているかどうかが焦点だという。
EUやカナダに先行して、TikTokの利用禁止を進めてきたのがアメリカだ。例えば、2022年12月23日にアメリカ議会が可決した2023年度の政府歳出法案のなかには、バイトダンスが開発したTikTokを含む各種アプリやサービスを連邦政府の電子端末から排除する条項が盛り込まれた。
アメリカのメディアの報道によれば、2023年2月下旬の時点でアメリカの50州のうち32州が、政府のシステムに接続する端末にTikTokをインストールすることを禁じている。さらに、テキサス州では州知事の行政命令により、複数の州立大学で校内ネットワークに接続する端末でのTikTokの利用が禁止された。
(訳注:本記事の原文が配信された後の2月27日、カナダ政府は公務員が政府支給のモバイル端末でTikTokを利用するのを禁止すると発表。同じ日に、アメリカ政府も同様の指示を職員に通知した)