全体的にグレーっぽいのには理由アリ

 レーダーなどに映りにくい、いわゆるステルス性を持っている軍用機は、なぜか黒やグレーっぽい色をしていることが多いです。しかも、機体色だけではなく、国籍マークも同様に目立たない色になっています。これはステルス性を維持するのに、塗料も重要な役割を持っていることが関係しているからです。

日本の航空自衛隊が運用しているF-35。日の丸はグレーになっている(画像:航空自衛隊)© 乗りものニュース 提供

 基本的に軍用機は作戦エリアで敵からの視認性を低くするために、いわゆる迷彩塗装が施されていることが多々あります。なにも迷彩塗装は緑や茶からなるものだけを指すわけではなく、青主体の「洋上迷彩」や灰色メインの「制空迷彩」なども含まれます

 このようにこのように軍用機は用途に応じて、最適と思われる塗装が施されますが、ステルス機は塗料そのものも特殊となっています。現在、アメリカ軍で運用されているステルス戦闘機F-22「ラプター」や、アメリカほか各国の空軍が導入し、日本の航空自衛隊でも運用されているF-35「ライトニング II」などには、レーダー波吸収材を含んだ塗料が用いられているとされています。

 この塗料の効果により、レーダー波は熱へと変換され、レーダー反射断面積を低減する効果を発揮します。また、今のステルス戦闘機の塗装は3つの層に分かれているともいわれ、1層目はレーダーの反射波を低減するとともに外部の水分や空気との接触を断絶し、機体を長持ちさせ、2層目はレーダー波を、3層目は赤外線それぞれ吸収する役割を持っているそうです。

 そのため、色を塗るのもかなりの精度が求められます。F-35を導入している国のひとつ、オーストラリアでは、塗装を請け負った会社が、F-35用に専用の塗装ブースを設置し、作業する際の厳しい条件をクリアしています。

 このような特殊な塗料のため、塗り終わった後も大変で、機体を電波暗室に入れてレーダー電波の反射計測をやる必要性があります。そのため、通常の塗装よりもかなり高価となり、オーストラリアでは、高温乾燥という気候に同機の塗料が長く持たないことも指摘されていたことに加え、機体そのものの維持費も高いことから、導入前だけでなく、運用開始後に、再び批判が出たこともありました。

 なお、ステルス機の機体色は絶対に黒やグレーでないといけないという訳でもないようで、ミラーのようなスキンを施したF-22やF-35のテスト機もアメリカでは目撃されているといいます。

 ちなみに、F-35には武装を増加させるための「ビーストモード」と呼ばれる仕様があります。これはステルス性を犠牲にするかわりに、翼などにハードポイントを設置し、それによって、ミサイルや爆弾の搭載量を4倍に増やすというものですが、仮に対地攻撃などで常時このモードの機体が出た場合は、迷彩塗装が施されるかもしれません。