シロクマの数は過去最高に近い

 北極の一見かわいらしいシロクマは、脅威派のアイドルだった。生態学者の故ボブ・カーターが取材のときにこう感想をもらした。「連中はイメージキャラクターがほしかった。科学とは無縁の話です」。

 実のところ、いまシロクマの数は史上最高か、最高に近い。個体数が減るというモデル計算の予測は事実に合わない。シロクマは適応力の強い動物なのだ。

 シロクマ研究の権威、進化生物学と古動物学を専攻するカナダ・ビクトリア大学のスーザン・クロックフォード博士が、論文にこう書いた。「シロクマは過去1万年、いまより高温の時期を何度も生き延びてきた。机上のモデル計算は恐怖のシナリオを吐き出すけれど。北極圏が少しくらい暖まっても、シロクマもその食糧も、何ひとつ影響は受けない」。彼女の調査によると、「夏に海氷が減ってもシロクマは平気」。だから、暗い未来予測を退ける。「北極の海氷面積は毎年9月に極小を迎えるが、シロクマにとって9月は大事な時期じゃない。交尾も出産も子育ても、9月から外れた時期のことなので」。

 米国魚類野生生物局の調査だと、195060年代にシロクマの数は50001万頭だった。2002年に北極圏を調べた米国地質調査所が、シロクマの数を「史上最高レベル」と結論。2016年には国際自然保護連合がシロクマの数を2200031000頭と見積もり、クロックフォード博士は「過去50年間の最高値」とみる。

 クロックフォードは2016年に書いた。「さしあたりシロクマが苦しんでいる証拠は何もない。個体数は1993年以降も増え、見積もりの最大値が1993年の28370頭から現在の31000頭になっている」。

 地質学者ドン・イースターブルックの声も聞こう。「いまシロクマは1970年代の5倍もいるから、温暖化で苦しんでいるはずはありません。また、過去1万年の気温を振り返れば、現在より0.55も暖かい時期を生き延びたため、いま問題があるはずはありませんね」。

 アイスランド大学の第4期地質学者オラフル・インゴルフション教授も、シロクマ受難物語をあっさりと退ける。北極圏と南極圏のフィールドワーク経験をもとに、テレビでこう発言した。「10万年前から地球上にいるシロクマは、少なくとも一度の間氷期を生き延びました。間氷期はいまより2くらい高温。・・・すると、近ごろ北極圏が温暖化傾向にあるとしても、シロクマを気にかける必要はありません」。

 2012年にロサンゼル・スタイムズは書いた。「シロクマ絶滅の危機という話を聞いて、(場所によっては)人間よりシロクマのほうが多いカナダ・ヌナブト準州に住むイヌイットは大笑いする。・・・アル・ゴアが2006年の映画『不都合な真実』に使ったCG(浮氷にしがみつく哀れなシロクマ)も、物笑いの種でしかない」。

(前編)「偽善の『CO2削減』活動家に踊らされてはいけない」

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58462

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供 『「地球温暖化」の不都合な真実』(マーク・モラノ著、渡辺正訳、日本評論社)

 

(完)