From 三橋貴明@ブログ


マレーシアのマハティール政権が
公約通り消費税を「廃止」する
と発表しました。


『マレーシア、6月1日に消費税廃止
 総選挙で約束
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30587000W8A510C1FF8000/

 マレーシアのマハティール政権は
 16日、6月1日付で税率6%の
 消費税を廃止すると発表した。

 消費税はナジブ前政権時代の
 2015年4月に導入された。

 マハティール氏が率いた野党連合は
 総選挙のマニフェスト(政権公約)で
 消費税廃止を訴えていた。

 新政権は公約を直ちに実行に移すことで、
 国民からの高い支持を
 維持したい考えだ。

 ただ、安定財源となっていた
 消費税の廃止で、東南アジア各国の
 中では比較的高い政府債務水準などが
 さらに悪化する懸念がある。

 マハティール首相は16日、

 「歳出には大きな無駄があり、
  今後切り込んでいく」

 と語り、財政健全化に取り組む
 方針を改めて強調した。』




ちなみに、マレーシアで消費税を
導入したのはナジブ政権で、
2015年のことでした。


消費税とは、
実に忌まわしき税金です。

忌まわしさで消費税を上回るのは、
人頭税くらいしか思いつきません。


消費税は、

「課税によって人々の経済活動が
 影響を受けずに、民間の
 資源配分をかく乱しない」

という課税の中立性原則の観点から
一番望ましい税制である
といわれています。


確かに、何しろ人間は
消費しなければ生きていけないため、
消費税からは誰もが逃れられません。

また、高所得者も低所得者も、
消費をするたびに「同じ税率」の
税金を徴収されることになります。


まことに公正という話ですが、
本当にそうなのでしょうか。


当たり前ですが、どれだけ
所得が高い人であっても、
お腹が一杯になれば
それ以上は食べられません。

金持ちが消費を増やすとはいっても、
限界があるのです。

というわけで、高所得者層の
消費性向(所得から消費に回す割合)
は低くなります。


逆に、低所得者層は所得の
ほとんどを消費に
使わざるを得ないため、
消費性向は高まります。

つまりは、支払った消費税が
所得に占める割合を比較すると、
低所得者層の方が高所得者層よりも
高くなってしまうのです。


A氏
 年収1000万円
 消費性向50%
 支払った消費税 40万円

B氏
 年収200万円
 消費性向100%
 支払った消費税 16万円


一見、A氏のほうが税負担が
重いように思えますが、
所得に占める消費税の割合を計算すると、


A氏 4%

B氏 8%


と、所得に占める消費税の割合は、
B氏の方が二倍になってしまいます。
逆にいえば、所得が大きいA氏にとって、
消費税の負担感は相対的に低いのです。


消費税は間違いなく
「逆累進性」が強い、
格差拡大型の税制です。


ところで、財務省が消費税率引き上げを
主張する際に使われるレトリックに、

「消費税は安定財源」

というものがあります。

確かに、景気によって
上下の振れ幅が大きい
所得税、法人税に比べ、
消費税の安定感は抜群です。

消費税は増税時(97年、14年)に
対前年比で増加する(当たり前ですが)
のを除くと、ほぼ
「対前年比ゼロパーセント」
で推移しています。


増えもしなければ、減りもしない。

すなわち、安定財源です。


財務省としては、景気変動の
影響を受けない消費税は、実に
「扱いやすい」税収になるのでしょう。


とはいえ、そもそも所得税や法人税が
景気変動の影響を受けるのには、
それなりの理由があるのです。


税金には、好景気の時期には
高所得者から多く徴収し、
支出を減らすことで景気を鎮静化し、
不景気の際には、負け組である
失業者や赤字企業の税負担を
減らすことで復活を助ける
という役割があります。

いわゆる、税金の
ビルトインスタビライザー
(埋め込まれた安定化装置)機能です。


“安定財源”である消費税には、
スタビライザーの機能が一切ありません。

失業者だろうが、赤字企業だろうが、
消費税は容赦なく
徴収されることになります。


すなわち、消費税は元々が
国民の所得格差を拡大する
傾向が強い上に、かつ不況期に
「弱者に冷たい」税金なのです。


消費税を擁護し、あるいは
消費税増税を主張する人は、
日本国民に対し、

「国民の格差を拡大し、
 弱者が潰れされる国にしよう!」

と、主張しているのも同然なのです。