わたしは、この街を仕切っているボス猫の父と白くて美しい毛並みを持つ母の間に産まれた白猫。2歳と5か月。

 でも、わたしは自分自身や家族のことがあまり好きではない。その理由は、半年前にお母さんを病気で亡くしたときの父と兄姉の態度、そんな家族に何も言えなかった私自身の弱さ。それより以前から私は、一番最後に産まれ身体がほかの猫より一回りほど小さいのに一番お母さんに似ていたからという理由でほかの兄姉からいじめられていた。唯一助けてくれていたのはお母さんだけだった。

 わたしは何度も家族から離れてひとりで生きていこうかと思ったが、ひとりで生きていける自信がなく何より家族に見つかった時に何されるかわからなかったからだ。でも、そんな私にもひそかに楽しみにしていることがある。2週間前に出会ったこの町に住む唯ちゃんという女の子と一緒に過ごすこと。

 それは、何時間も一緒に過ごす日やほんの数分間というわずかな時間でもわたしにとっては家族と過ごすよりも大切な時間。

唯「今日ね、学校の先生にいつも頑張ってて偉いわねって褒められたんだぁ~。」

 唯ちゃんはお話をするとき、いつもにこにこと笑っている。そんな彼女の笑顔を見るのがわたしは大好きでこんな時間がずっと続けばいいなと思っていた。