「魂」を受け継ぐ者 『天地明察』/冲方丁 | み~くまのひとり言

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み~くまです。こぐまが2匹のおかあさんです。
ファンタジー、ミステリー、古典、歴史物から児童書まで、本なら何でも大好き♪
本との一期一会・・・今日はどんな本と出合えるかな☆

「中秋の名月雲月を数日過ぎてしまいましたが
先日になってようやく名月雲月を眺めることができましたラブラブ

澄み渡った夜空に 凛と佇む月

本当に綺麗ですよねぇ~(///∇//)

これだけ月明かりがあると、
普段なら星星が霞んで見えなくなってしまうのですが
この季節は、しっかり星々の姿を見ることもできます。

秋の夜だからこそ味わえる
          贅沢なひと時・・・
キラキラ

そんな美しい星空星空に相応しい
「天地」の絆に纏わる物語をご紹介したいと思います。


時は江戸時代。
戦乱の世がようやく幕を下ろし、
日本は4代将軍家綱の御代を迎えていた。

泰平の世を迎えつつも、
未だ戦乱期の傷を内包したままだった日本で、
一つの極秘プロジェクトが産声をあげようとしていた。

日本独自の暦を作る

そこには、
誤謬が明らかとなった古い暦を廃するだけでなく、
武家と公家、士と農、天と地との絆を結び、
日本を真の「文治国家」へと変革させるという
多いな願いが込められていた。

その一大事業を託されたのは、
碁打ちの名門に生まれた一人の若者。

江戸幕府碁所・安井算哲の長男として生まれながら、
義兄である算知への遠慮から父の名を継ぐこともできず、
彼は与えられた安穏の日々に倦んでした。

いつしか、自らに「渋川春海」という名を与えた若者は、
泰平の世を築かんとする幕府の要人たちに見込まれ、
やがて広大な星の海へと漕ぎ出すことになる。

24年にわたる歳月をかけて成し遂げられた改暦の儀。

そこに至るまでの春海の苦悩と成長の道のりを、
彼を支えた多くの人々の姿を織り交ぜながら描いた
みずみずしくも重厚な歴史絵巻。

時代小説家 冲方丁 ここに誕生ビックリマーク

主人公の「渋川春海」という人物。
彼が実在の人物であったことを、
読み終わった後で知りました。

今日、私達は当たり前のように「太陽暦晴れの恩恵を受けていますが、
その基盤を生み出したのは西洋人だとばかり思っていました。

今から300年以上も前の日本で
その「理」を明らかにした人が居たなんて・・・叫び

それを想うだけで、もう、鳥肌ものですキャッ☆

Wikipediaに掲載されている彼の経歴を見ると
彼がいかに「天才キラキラであったかを思い知らされます。

渋川春海[by Wikipedia]

しかし・・・

この物語に登場する「渋川春海」は、
まるで「春の海辺」のように温かくて穏やかな人物。
瑞々しい感性をもった、少年男の子のような人物でした。

「天才」たる自負もなく、気負いもなく、
一歩一歩「明察」の瞬間を得るために努力し続ける・・・

もちろん、何度も何度も挫折を体験しています。

その時に彼を支えたのは、
若い頃に彼を教え導いた人々との約束・・・

特に、21歳に体験した「北極出地」
彼を導いた二人の人柄は素晴らしく、
一人の読み手である私まで魅了されてしまいました。

春海の江戸帰還を待たずに病死した「建部昌明」
「頼みましたよ」という言葉を遺した「伊藤重孝」

彼らとの約束を果たすために、
春海は生涯をかけて難問に挑みます。

「人生50年」といわれた時代に、
24年もの歳月をを改暦の成就に捧げた春海。

21歳 北極出地
28歳 第1回改暦請願 「不吉」として却下
34歳 第2回改暦請願 「日食」が外れ却下
45歳 第3回改暦請願 「貞享暦」として採用

この「貞享暦」が後の太陰暦晴れの基本となるのです。

この功績により、
一介の「碁打ち」だった春海が武士に取り立てられ、
幕府の要人である「天文方」に抜擢される。

それはまさに、
日本が「文治国家」へ生まれ変わった瞬間でもありました。

これだけでも既に「鳥肌もの」だったのですが、
この改暦の時代を生きた多くの学者たちの存在に、
さらに胸を打たれました。

「三平方の定理」に「ピタゴラスの法則」

私たちが義務教育で習う「法則」や「定理」だけでも
覚えきれないほど沢山ありましたよね。

でも、その一つ一つの「定理」や「法則」には
それを「発見した人」が居る。

そしてその人たちは、

たった1つの「真実」を手に入れるために生涯をかけた・・・

ごく当たり前のことなんだと思います。

でも、その当たり前のことを、
私は今まで一度も意識したことがありませんでした○| ̄|_

渋川春海が、「和算」の開祖といわれる「関孝和」と初めて対面するシーン

この場面で私が受けた衝撃を
どのように説明すれば良いのか・・・



多くの学者たちが血の滲むような想いで解き明かした術式を
春海は惜しみなく「改暦」のために流用します。

そんな春海のことを、「盗っ人めビックリマークと罵倒するんです。

学者にとって「術式」は「命そのもの」キラキラ
まさに学者の「魂」です。

その「魂」を盗むだけ盗んで
新たに何も成し遂げることができなければ
「盗っ人」と呼ばれても仕方の無いこと

そんな2人のやり取りに触れて、
私自身、思わずハッとしました。

先人から多くの「魂」を無償で受け取りながら、
その有難みに全く気付くことなく
無為に学生時代を過ごしてしまった自分が
たまらなく恥かしくなりました(/ω\)

そして、建部

「精進せよ。精進せよ。」

という言葉が蘇ってきました。


私達は、多くの先人達から「魂」を受け継ぐ者キラキラ

彼らの「魂」を受け取った上は
精進し、何かを成し遂げる責任があります。


どんな道を行くにせよ
そのことを忘れてはいけない
流れ星

 今を生きる私達に、春海がそう語りかけているような気がしました。

前半は、ただ美しいだけの物語に思えるかもしれませんが、
ラストの2章は涙なくしては読めない感動が待っています。

美しい星空星空のもと、
広い星の海を渡った先人に想いを馳せながら
じっくりと読んでみてほしい一冊です。

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