朝八時半。いつもと同じ音色で鳴り響くインターフォンの呼び鈴が、穏やかな日常を切り裂いた。
花子はちょうどベランダで洗濯物を干していた。「みつけーてーあげるよっきみーのやるーきスイッチ~♪」CMソングを口づさみながら、夫の肌シャツをパシンッとはたく。
ピンポ~ン
あら?宅急便かしら。
手早くシャツをハンガーにかけてしまってから、慌ててモニター画面に駆け寄る。
「はぁい、どなた様ですか?」
「あ、管理人の田中です」
玄関ドアを開けると、初老の管理人が申し訳なさそうな顔をして突っ立っている。
「おはようございますぅ、あのぉ、旦那さんいらっしゃいます?」
「おはようございます。主人はもう出勤してしまいまして・・・」
花子は思った。管理人が夫を訪ねてくるということは、きっとマンションの管理組合の用事だ。
花子の暮らすマンションは、都心から電車で二十分ほどの郊外にあった。いわゆるベッドタウン。六階建てでワンフロアの世帯数は六つ。こじんまりとした物件だったが、間取りと外観のすっきりさが気に入っていた。
住人で結成している管理組合の理事はくじ引きで決められる。今年は不運な事に花子の夫が理事長の役回りを引き当てていたのだ。
「管理組合の事なら、主人に申し伝えますが?」
「いやいや、うーん、いらっしゃらないなら仕方ないかぁ。奥さん大丈夫かなぁ?」
「・・・何かありました?」
花子は嫌な予感がした。日頃のんきな性格だが、不穏な空気はいち早く察知するのだ。
「いやね、ちょっと私と一緒に来てもらえます?」
「はぁ・・・」
花子はおもむろにエプロンをはずすと、ガスを点けてはいないことを頭の中で確認しながら、サンダルに足をつっこんだ。
不安な気持ちで管理人の後ろをついていくと、行き着いたのは四階非常階段の踊り場だった。
「これなんです。」
管理人が示した先には、信じられない光景が広がっていた。信じられないというのは、見たこともない珍しい物があったというわけではない。むしろ、これにご対面したことは何度もあった。健康な人なら一日一回は必ず目にするような、凡庸極まりない物。ただ、それが存在している場所だけが問題だった。
※食事中の方はここでご遠慮下さい。
そう、そこにあったのはうん○だった。
「あの・・・これはうん○ですか?」
なんて間抜けな質問だろうと思いながらも、そう聞かずにはいられなかった。
「そうですね、うん○ですね。しかも、明らかに人のやつですね。」
「そうですわね、これは人のやつですわね・・わんちゃんやねこちゃんならもっと小さいから・・」
花子は唯一の手がかりである自分の「それ」を思い出しながら、数秒間だまって実況見分をした。その結果、目の前のブツと頭の中の「それ」は、大きさ・形・付属物とかなりの点で一致を見た。
「間違いないですわね、誰か人がここでしたんですね」
「そうでしょう?実はこれで二回目なんです。」
「二回目?」
「前回は片付けちゃったんですよ。ほら、酔っぱらって間に合わなかったのかなと思いまして」
「まぁねぇ・・間に合わないというのならねぇ・・」
「そうなんですよ、それならまぁちょっとしたミスってことでね」
「そうですわねぇ、一応はがんばられたわけだから・・」
何の話をしてるんだ?しっかりしろ!花子は自分に言い聞かせた。
「でも・・これはミスじゃないですわねぇ?」
「はい。ここでしてやるぞ!というはっきりした意思を感じますね」
「そうするとこれは・・」
「完全に、嫌がらせ行為ですね」
目眩がした。
ついさっきまでは、洗濯物を干していた。いつもと変わらない平和な日常。それがこの先もずっと続くはずだった。それなのに、今花子はででんと横たわる人糞の前で、底知れない他人の悪意と向かい合っている。
「くっくっくっ・・・そんな面すんなよw」
うん○は、困り果てた花子を見上げてほくそ笑んだ。
「掃除する前に理事さんにも現場を見ておいてもらった方がいいと思いましてね。」
うん○証人。花子は自分がとんでもない重責を負ったことに気が付いた。
「あの、写真とか撮っておいた方がいいです?」
「そうですね、証拠になりますから」
花子は自宅に戻って携帯電話を持ってくると、写メを撮ろうとかがみこんだ。光の加減を調整しながらフレーム越しにうん○を覗きこむ。泣きそうな気分だった。
なんでこんなところで?・・なんで・・なんで・・・。
トイレでさえしてくれれば・・・。
一筆でいい、謝罪を残しておいてくれれば・・・。
そうすれば私の平凡な日常は、今すぐにでも戻って来るのに!
結局うん○は管理人が片付けてくれた。しかし花子の携帯には、未だにうん○写真が重要な証拠として保存されている。
※これは、うちのマンションで起こった実際の事件をもとにしたお話です。誰か、うん○野郎をとっ捕まえて下さい・・(泣)
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花子はちょうどベランダで洗濯物を干していた。「みつけーてーあげるよっきみーのやるーきスイッチ~♪」CMソングを口づさみながら、夫の肌シャツをパシンッとはたく。
ピンポ~ン
あら?宅急便かしら。
手早くシャツをハンガーにかけてしまってから、慌ててモニター画面に駆け寄る。
「はぁい、どなた様ですか?」
「あ、管理人の田中です」
玄関ドアを開けると、初老の管理人が申し訳なさそうな顔をして突っ立っている。
「おはようございますぅ、あのぉ、旦那さんいらっしゃいます?」
「おはようございます。主人はもう出勤してしまいまして・・・」
花子は思った。管理人が夫を訪ねてくるということは、きっとマンションの管理組合の用事だ。
花子の暮らすマンションは、都心から電車で二十分ほどの郊外にあった。いわゆるベッドタウン。六階建てでワンフロアの世帯数は六つ。こじんまりとした物件だったが、間取りと外観のすっきりさが気に入っていた。
住人で結成している管理組合の理事はくじ引きで決められる。今年は不運な事に花子の夫が理事長の役回りを引き当てていたのだ。
「管理組合の事なら、主人に申し伝えますが?」
「いやいや、うーん、いらっしゃらないなら仕方ないかぁ。奥さん大丈夫かなぁ?」
「・・・何かありました?」
花子は嫌な予感がした。日頃のんきな性格だが、不穏な空気はいち早く察知するのだ。
「いやね、ちょっと私と一緒に来てもらえます?」
「はぁ・・・」
花子はおもむろにエプロンをはずすと、ガスを点けてはいないことを頭の中で確認しながら、サンダルに足をつっこんだ。
不安な気持ちで管理人の後ろをついていくと、行き着いたのは四階非常階段の踊り場だった。
「これなんです。」
管理人が示した先には、信じられない光景が広がっていた。信じられないというのは、見たこともない珍しい物があったというわけではない。むしろ、これにご対面したことは何度もあった。健康な人なら一日一回は必ず目にするような、凡庸極まりない物。ただ、それが存在している場所だけが問題だった。
※食事中の方はここでご遠慮下さい。
そう、そこにあったのはうん○だった。
「あの・・・これはうん○ですか?」
なんて間抜けな質問だろうと思いながらも、そう聞かずにはいられなかった。
「そうですね、うん○ですね。しかも、明らかに人のやつですね。」
「そうですわね、これは人のやつですわね・・わんちゃんやねこちゃんならもっと小さいから・・」
花子は唯一の手がかりである自分の「それ」を思い出しながら、数秒間だまって実況見分をした。その結果、目の前のブツと頭の中の「それ」は、大きさ・形・付属物とかなりの点で一致を見た。
「間違いないですわね、誰か人がここでしたんですね」
「そうでしょう?実はこれで二回目なんです。」
「二回目?」
「前回は片付けちゃったんですよ。ほら、酔っぱらって間に合わなかったのかなと思いまして」
「まぁねぇ・・間に合わないというのならねぇ・・」
「そうなんですよ、それならまぁちょっとしたミスってことでね」
「そうですわねぇ、一応はがんばられたわけだから・・」
何の話をしてるんだ?しっかりしろ!花子は自分に言い聞かせた。
「でも・・これはミスじゃないですわねぇ?」
「はい。ここでしてやるぞ!というはっきりした意思を感じますね」
「そうするとこれは・・」
「完全に、嫌がらせ行為ですね」
目眩がした。
ついさっきまでは、洗濯物を干していた。いつもと変わらない平和な日常。それがこの先もずっと続くはずだった。それなのに、今花子はででんと横たわる人糞の前で、底知れない他人の悪意と向かい合っている。
「くっくっくっ・・・そんな面すんなよw」
うん○は、困り果てた花子を見上げてほくそ笑んだ。
「掃除する前に理事さんにも現場を見ておいてもらった方がいいと思いましてね。」
うん○証人。花子は自分がとんでもない重責を負ったことに気が付いた。
「あの、写真とか撮っておいた方がいいです?」
「そうですね、証拠になりますから」
花子は自宅に戻って携帯電話を持ってくると、写メを撮ろうとかがみこんだ。光の加減を調整しながらフレーム越しにうん○を覗きこむ。泣きそうな気分だった。
なんでこんなところで?・・なんで・・なんで・・・。
トイレでさえしてくれれば・・・。
一筆でいい、謝罪を残しておいてくれれば・・・。
そうすれば私の平凡な日常は、今すぐにでも戻って来るのに!
結局うん○は管理人が片付けてくれた。しかし花子の携帯には、未だにうん○写真が重要な証拠として保存されている。
※これは、うちのマンションで起こった実際の事件をもとにしたお話です。誰か、うん○野郎をとっ捕まえて下さい・・(泣)
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