Futenma questions and answers
普天間問題についての質疑応答
http://ow.ly/1B6Kl
2009年11月27日金曜日

 困難さを増す在日米軍基地問題は、歴史的経緯と現在進行中の社会機構及び政治風土の変化の中に深くもつれた根を張っている。スターズ&ストライプスの記者であり、1994年以来沖縄問題を追っているデイビッド・アレンが、普天間で渦巻く議論についてのよくある質問に以下の解答を提示する。

●普天間における重要な問題とは何でしょうか? ただの政治工作ではないのでしょうか? あるいは日米軍事同盟に対する深刻な脅威なのですか?

 DPJ(民主党)が圧勝した昨年8月の選挙に先立ち、現首相である鳩山由紀夫氏は、普天間の基地機能を日本の外とまでは言わないものの、沖縄の県外へと移転させるとその選挙公約に定めていた。彼はかつて合意について再考したいと語っており、また、この問題は現在、彼のリーダーシップにとっての試練と見なされている。彼が率いる中道左派の党は政権のパートナーとして、堅固な反軍思想を抱き米軍と自衛隊の存在の双方に反対する社会民主党と連立を組んでいる。普天間移転計画を再交渉し、海兵隊航空部隊を県外などに移転させようと彼が試み失敗するならば、来年の選挙で容赦ない反撃を受けるかもしれない。

●何故、航空基地を移転しなければならないのでしょう?

 基地は騒音の発生源であり、また危険でもある。さらには、沖縄県民が主張する『不公平な重荷』の象徴ともなっている。

 当時12歳の沖縄の女子学生に対する二人の海兵隊員と海軍衛生兵による誘拐強姦事件は、島内で大規模な反基地デモを引き起こし、米軍の影響を縮小せよとする要求を新たなものとした。これらの要求に従い米日合同委員会が発足され、1996年には基地が占める土地の約20%を県と地主へと返還する計画が立案されている。この計画の主要部分は宜野湾市の都市部中心に位置する普天間の閉鎖と、新たな基地のより影響の低い地域への建設から構成されていた。

 2003年、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)は沖縄を訪問し、普天間の滑走路上空を航過した。彼はその際、これまで事故がなかったのは驚くべき事だとのコメントを残している。その1年後、海兵隊所属ヘリが基地に隣接した大学のキャンパスに墜落し、普天間海兵隊航空基地を閉鎖せよとの要求は強くなる事となった。

●沖縄県民は何故、同島の米軍基地の移転と再編成に混乱しているのでしょうか?

 彼らはこの問題について、東京とワシントンを信用してない。沖縄には『米軍基地は日本と合衆国にとって最良の取引ではあるが、沖縄にとっては最悪の取引である』との言葉がある。
 日本は防衛費を節約する事が出来 ── これは日本が世界第二位の経済を築けた理由の一つである ──、なおかつ本州や九州といった、より人口が密集した地域から離れた場所に、米軍の約半数を置く事が可能となる。一方で合衆国は、西太平洋の潜在的な紛争地域に密接した場所に基地を得、同時にその費用の大部分を日本へと肩代わりさせる事が可能だ。そのため、沖縄は島の1/5を基地に占拠されたままとなっている。

 さらに、沖縄には独自の傾向が常に強固な物として存在している。多数の市民は第二次世界大戦の終了後、彼らの土地である家や農場を合衆国が必要とし、『銃剣とブルドーザー』によって奪い取ったと考えている。27年にわたる米軍の占領期間中、『軍隊から解き放たれた島』を要求する運動が活発に行われてきた。

 1972年に沖縄返還は実現したが、多くの米軍基地が残されたままとなっており、また、アメリカ人に放棄された他の基地を自衛隊が獲得したため、多くの沖縄県民は裏切られたと感じている。沖縄の一部の評論家は、日本全土に存在する米軍基地が占用している土地のうち75%が沖縄に集中されており、不公平な負担を強いられていると主張し続けている。
 基地の存在を支持する者は米軍からの収入が、観光に次ぐ2番目に大きな沖縄の収入源であると指摘しており、反基地論者は基地が経済発展を阻害していると反論している。

●日本の新政府の真の行動計画は、全ての米軍を日本から追い払う事なのでしょうか?

 とんでもない。万が一他国からの攻撃を受けた際、日本を適切に防衛するための条約である現在の日米安保同盟を、鳩山政権も大部分の日本人と同様に支持している。

 鳩山氏も彼の閣僚も、安保条約が国の中心的方針の一つであると繰り返し明らかにしている。

●再編成の批判者は代替案を提示しているのでしょうか? 提示している場合、なぜそれらは合衆国に受け入れられないのでしょう?

 長年の交渉の過程で、普天間の代替地は数多く提案されてきた。その中には硫黄島、グアム、ハワイ、本州の自衛隊基地、嘉手納空軍基地、そして沖縄県内の二つの離れ島などが含まれているが、それらは全てが否定されている。佐世保の水陸両用艦隊に近く訓練地であり中国と北朝鮮に近い沖縄に、海兵隊の航空作戦能力を残す必要があると合衆国は主張してきた。
 遠く孤立した島に基地を移転させるのはコストが高く、また、嘉手納空軍基地に海兵隊と空軍の作戦機能を置くには手狭すぎる。
 キャンプ・シュワブが位置する辺野古半島の沖合約2マイルの海上に海兵隊航空基地を建設する計画は、小型のモーターボートやカヤックまで持ち出して建設予定地への環境調査を妨害しようとする、反基地団体や環境保護団体による激しい反対運動を受けたために破棄されてしまった。

 日本が支払うべきコストと西太平洋における戦略地政学的な位置、このの双方の観点から沖縄は最良の場所であり続けると合衆国政府当局者は主張している。

●合衆国は何故、2006年の協定に対する変更に、これほどの抵抗を見せているのでしょうか?

 合衆国政府当局は長年にわたる交渉が2006年の『再編実施のための日米のロードマップ』として結実し、日米両国にとって最良の取引になったと合衆国政府当局は主張している。沖縄の部隊規模は8000人以上の海兵隊員とその家族の分が削減され、また、日本はグアムへと移転する海兵隊員を支えるために必要な、インフラ建設費用の大部分を負担する事に合意した。

●沖縄の米軍の規模はどの程度なのでしょうか? また、日本政府は彼らの維持のためにどの程度の費用を負担しているのでしょうか?


 現在、沖縄には43,400人の軍関係者が存在している。これには22,300人の現役軍人、2,100人の国防総省の文官、そして19,000人の彼らの家族が含まれている。この数には時折沖縄へと訓練のために一時的に配備される、海兵隊員は含まれてはいない。

 日本政府は2009年に米軍を日本へと駐留させるための費用として、52億ドル以上の資金提供を行った。これには施設メンテナンスと改良工事、日本人職員への給料、そしてその他で必要とされる費用が含まれており、この資金のうち16億ドルが沖縄での軍への支援に用いられている。

 また、その他にも税金や軍事作戦時の道路料金や、港湾使用料の免除などの間接的な支援が行われており、日米地位協定の適用下にある人員は、車両に対する税金も日本国民より減額されている。

●8000名以上の海兵隊員を沖縄からグアムへと移転させるのは、沖縄の海兵隊航空基地移転とどのような関係があるのでしょうか?

 それは航空作戦能力をキャンプ・シュワブ近辺へと移転する計画を売り込むための方策と見られる。取引を沖縄県民にとって魅力的なものとするため、東京による数百万ドルもの公共事業助成金の他にキャンプ・キンザーや那覇軍港、キャンプ・レスターの残存部分の閉鎖、そして海兵隊の主要部隊のグアムへの移転を約束する必要があった。

 保守的な自由民主党が政権を握っている間、計画は当然のものとして進められており、辺野古港で過去5年にわたり野営していたような一部の抗議グループを除き、沖縄県民の大多数は不承不承ではあるもののこれを受け入れていた。

●普天間問題とグアム問題を分離するのは何故不可能なのでしょうか?

 キャンプ・シュワブでの新しい基地開発を排除しては、沖縄に残る海兵隊員の多くは身の置き場を失うであろう。交渉開始の時からこの問題に当たっていた合衆国の当局者は、普天間の代替施設こそが合意の鍵だと語っている。

●何故合衆国は海兵隊を単純にグアムへと移転させる事が出来ないのでしょう? 合衆国の統治下にある自治政府は、海兵隊の移転とそれに伴う経済発展を歓迎すると思うのですが。

 再編計画の下、日本政府はグアムへの流入に対応する施設をグアムに建設するための費用のうち、61億ドルを支出すると約束した。このうち28億ドルは現金で支払う事が予想されている。残りの額は時間と共に償還されるであろう、日本による投資によって賄われるであろう。しかし万が一再編計画が頓挫したならば、基地施設や隊員の住宅建設、そしてインフラ整備に必要とされる全費用 ── 総額106億ドルで計画されている ── が、合衆国の納税者の背にのしかかってくるかもしれない。

 ツイッターで要望ありました、普天間問題の米軍機関紙によるFAQを訳してみました。参考になれば幸い。
 普天間問題は過去のエントリーで散々語ってますので特に付け加える事が思いつきませんが、この記事が書かれた日時に注目を。
 …昨年の11月末に書かれたにも関わらず、問題が何も解決されてないのに愕然としますね。
 やはりツイッターでフォロワーさんと「この問題、去年の記事でも日付書き換えれば昨日出た記事とか言っても違和感ないよね」とか話してたんですけど…いやはや。

 さて、鳩山首相ようやく『職を賭す』とまで言ったようですが…

■首相「普天間含め職を賭す」(夕刊から)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A96889DE2E4E0E3E3E0EBE2E0E1E2E6E0E2E3E29F9FE2E2E2E0;at=ALL
2010/4/23付

 鳩山由紀夫首相は23日午前の参院本会議で、沖縄県の米軍普天間基地移設問題について「すべての政策に職を賭す覚悟で臨んでいるのは当然のことだ。その中に普天間の移設先の問題も当然含まれている」と表明した。首相が自ら約束した「5月末決着」に進退を懸ける考えを示したことで、実現できない場合、首相の進退問題に発展するのは避けられない情勢だ。

 自民党の山本一太氏への答弁。首相は21日開いた自民党の谷垣禎一総裁との党首討論では、政策の対象を特定しない形で「すべての政策の実現に職を賭して努力するのは言うまでもない」と発言していたが、23日は普天間問題を含めて「職を賭す」と踏み込んだ。

 えー…5月末に決着なんて絶対無理だと思いますが…現行案に戻したとしても、反対に転じちゃった沖縄を再説得するのには時間が掛かりすぎると思うんですけどね。
 つまり、こう言っちゃった以上は、辞任は確定。辞任しなかったら嘘吐きって事になりますが…どうせグダグダと職に留まり続けそうではありますが…あ、民主党への支持率回復を狙った辞任はあり得るかな?

 まあ、首相の辞任はともかく、どうあがいたって5月までの決着がほぼあり得ない状況なのは確か。合衆国も普天間の継続使用を平然と口にするようになってますし、沖縄県民の苦悩は続く事になりそうです。正直、日本の失われた国際的な信用の事を見なかった事にしたとしても、沖縄県民に対する仕打ちだけで首相辞任くらいで責任取れるもんじゃないと思うんですけどね。
 国民に対する負債、どれだけ積みあがってるのか一度考えてみてはどうでしょうか? これは別に首相に限った話じゃありませんが。


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