どこの国でも理不尽なことなんていくらでもあるという、新移民の現実 の続きです。
戦おうと思うと乗り越えるのは大変でも、おとなしく言われた通りにしておけば、何の苦労もなく戦う必要もなくスンナリ乗り越えられちゃうことってのは、結構あるんだと思う。
この最初の会社は決して私の希望に合う仕事じゃなかった。
私の勤務場所は倉庫エリアみたいなところの、トレーラーハウスだった。
マンションの工事現場とかによくある、コンテナボックスの中をオフィスにしたようなやつね。
小綺麗な格好をしている人なんて誰もいない、土埃を上げて大型トレーラーばかりが行き来するような場所。
日本では、5つ星ホテルに泊まっちゃうようなヨーロッパ出張に行く華やかな部署で働いてたから、私にはそのギャップが大きすぎた。
最初の3か月はもうとにかく惨めで悔しくて、何かがプツリと切れてしまって帰宅するなり2時間泣き続けたこともある。
でも移民してからすでに半年近く経っていて、100以上の履歴書を送って面接までこぎつけたのがこの会社も含めてたった3件・・・っていうところで雇ってくれたのがこの会社だったの。
貯金ばかりが着々と減っていき、正直もう雇ってくれればどこでもいい!っていう状況で。
業界は全く違うけど、職務経歴としては私の経歴から逸れ過ぎない内容だったから採用意志を示された時はその場で飛びついたわ〜。
日本で何の仕事をしてたかは聞かれたけど、アメリカでの経験は問われなかった。
他の社員もみんな移民だったからきっと「アメリカでの職務経験がない」という理由で就職に苦しんだ上で入社した人も多かったと思う。
アメリカに来て間もない新移民に門戸を開いてくれるという意味で、(待遇は良くなかったとはいえ)この会社には今でも感謝してる。
私も含めて、この会社をいわば踏み石にして「アメリカでの職務経験」という実績を手に入れてステップアップした元社員はたくさんいると思う。
移民するということは、ただ好きな国に引っ越して、でも他のことはそのまま母国と同じレベル・評価をキープしたいというわけにはいかないのだね。
母国で築いた見栄やプライドは一旦捨てた方がいい。
その方が結果的に近道だから。
自分はもっと評価されるべきなのに、アメリカでの就労経験がないだけで話も聞いてもらえないなんて間違ってる!と息巻いて戦うより、ハードルを低く・・・もとい全部取っ払って、納得いかない仕事でもなんでもして、「アメリカでの経験が必要って言われたんで経験してきました!今度は話を聞いてもらえますか?」って出直した方がよっぽど賢い。
でもこれは後から振り返ってみて、やっとわかったこと。
最初の仕事を得るまであんなに時間もかかってどんどん落ち込んでいったのに、次の仕事はこれ!と思う求人見つけたら一発で転職成功でした。
収入は一気に1.5倍、数年で最初の仕事の2倍以上になりました。
最初の就職と転職の間が半年未満なので、その半年の間で私は何も変わってない。
変わったのは「アメリカの職務経験なし」だったのが「アメリカの職務経験アリ」になっただけ。
必要なのがそれだと言われたので、不本意に思いながらもそれを手に入れる努力をしたら、あっさり受け入れてもらえたわけです。
もちろん求人が出たタイミングとか、運も大きかったわけだけど。
それまで積み上げてきた経験と自信を全部捨てるって、大したモノを持ってない私ですら思ってる以上に辛いものだった。
母国で医者だったような人が低賃金の肉体労働に従事して家計を支えなきゃいけないとなったら、その辛さや惨めさは計り知れない。
でもそれが、移民の現実。