霜月の.月初めに、岩手の親戚からお米が届いた。毎年の事だが只々合掌する思いである。

この７日に２歳になる孫が週に２～３回、私の娘（ママ）と来て夕食を共にしている。

この孫が食欲が旺盛で大人と同じ茶碗で、ご飯をけろりと平らげてしまう。　　　　　　　　　　　　

寝る子は育つというものだが、ご飯を食べる子は元気に育ってほしいものだ。

こんな米俵なら、この孫に背負わせたいほどだが、こんな俵の時代もあったのだなあ。

さて、岩手からの包みの中に一冊の本が入っていた。

「南部杜氏の源流」ー近江商人の源流（三島黎子著）である。

近江商人、南部杜氏というキイワードは私の関心を惹くに十分すぎるものだった。

送っていただいた息子の嫁さんのお父さんであるA氏に深く感謝しつつ、一気に読み通した。

自分も「岩手の人物風土記」に蔵元「鷲の尾秘話」というものを書いたことがある。

それは平成１４年の７月であるから約２０年も前のことである。

南部杜氏は石鳥谷が今ではそのメッカとなっているが、私がそのご自宅まで伺い、

取材した鷲の尾の杜氏佐々木久さんも石鳥谷の方だった。

鷲の尾の再建を成し遂げた佐々木さんは引退して石鳥谷の自宅で過ごされていた。

当時９３歳（平成１４年）であった。

佐々木さんから戦後間もない、コメが貴重な時代に米の三割削りを行い（今の大吟醸酒造り）

その原酒を惜しげもなく二級酒（当時）に投入した事をお聞きした事が鮮明に蘇ってくる。

危機だった鷲の尾が「一級酒より、二級酒の方が美味い」というお客の信用を得て

その蔵元は甦り今なお多くの人々に愛されているのである。

佐々木さんの手元には「南部杜氏自醸清酒鑑評会」二十五回連続優等賞の賞状、

そして昭和３１年に受賞した仙台国税局長からの特選賞の賞状が

ご自宅の部屋の片隅にほこりにまみれてあった事を思い出す。

「こんなものは息子たちはだれも見向きもしませんが・・・」と寂しそうに語る佐々木さん・・・

「いやそんなことはありません！あなたは凄いことを成し遂げたのです！」と叫ぶ私・・・

このように人知れず、凄いことをしている人と幸いにもその最晩年に出会えた事を

今は尚更懐かしく、思い出す。

私が「岩手の保健」という季刊誌に、この記事を掲載した直後、ご本人から

私の職場（当時宮古商業高校）に電話があり、

「佐々木です！今日、いつものように花巻の病院に行くと玄関で婦長さんが待っていて

すぐ院長さんのところに連れていかれました。

そして院長さんに～その記事を見ました＝あなたは凄い人だったのですね！～

と褒められました。

もう何時死んでもいいと思ったほどです、ありがとうございました。」

・・・・・・この時の思いは今でも忘れられない・・・・

今回のこの本の作者は女性であり、私より１歳年上の方である。

女性がこうした南部杜氏のことを調べて書いたことは凄い事だと感じ入った。

近江商人・・・

藩政時代の頃から近江琵琶湖の西岸の大溝と言われる地域から、この岩手に来住し、

現在に至るまでその一族郎党と言える掛買いの無い人々との絆を結び

それをつないできたこの人々のことを改めて知る事となり深い感慨をを覚えた。

・・・・村井新七～村井市左衛門～小野主元（権兵衛）の盛岡近江商人の三始祖・・・

この著作を読んで遠く近江（今の滋賀県）から陸奥の果てともいえる岩手に

やってきたこれらの人々を思えば想像を絶することであったと思われてくる。

この中の白眉は小野主元（権兵衛）という人物が八戸藩の飛び地であった

岩手県中央にある穀倉地帯の志和地区の四か村、五千石程）に進出したことであった。

（片寄村、上平沢村、稲森村、土舘村）

延宝五年（１６７７年）志和の八戸藩代官所に権兵衛は酒造業の開業を願い出た。

当時、盛岡藩が上方商人にその城下で商いをさせ、城下の殷賑をもたらしていることを

知っていた八戸藩は最初にその代官所に商いの申請をした近江商人権兵衛に

代官所東隣の千坪ほどの敷地の永代使用を認めたのである。

そして、権兵衛は郷里近江の大溝の兄の配慮で澄み酒造りの本場池田から

５人の腕の立つ職人を紹介され、志和に連れ帰り、

濁り酒しか造れなかった陸奥に澄み酒（清酒）造りを創業したというのである。

現在も志和地区には銘酒が多いがその由来を初めて知った次第である。

さて、昨日の親友hamaさんのブログに遠野の殿様の事が書かれていた。嬉しく拝見した。

そこで、この話の途中に八戸にある二つの城跡とその事について触れておきたい。

上が八戸城址であり、下が根城址である。

八戸藩は寛文四年（１６６４）、盛岡藩から分立して二万石の石高で成立した。

これは三戸から盛岡に移った二十七代の利直が寛文二年（１６３２）に亡くなり、

その後を襲った重直が病没したことにより、廃藩の危機に陥った時（後継者無届の為）

幕府の配慮で重直の二人の弟、重信と直義の二人に相続を認めるという内容であった。

結果として、南部十万石はそのうちの二万石が弟の直義に与えられ、八戸に領土となった。

しかし、八戸が寒冷地で稲作には不適な地なので実質二万石には届かなかったので

その飛び地として穀倉地帯の志和地区の四か村を八戸領とした背景があった。

（片寄村、上平沢村、稲藤村、土館村の五千石程度）

一方、根城にあったのは三戸南部氏（盛岡に移住）と共に南北朝時代に

南朝の為に獅子奮迅の活躍をして陸奥守、鎮守府将軍の北畠顕家から

北奥州統治の根本の城という意味でその名を与えられたという謂れの城である。

（この事は自著の「人物風土記」に記述している。）

その遠野の殿様は南部実長、実継、長継、師行、政長、信光、信政、政光であり、

現在も遠野市の南部神社に祀られている。（太字は南部勤王五世）

その根城南部家は盛岡の南部利直によって長年の領地であった八戸根城の領地から

遠野への移封を命じられたのです。嘉永四年（１６２７）のことでした。

南北朝時代～秀吉の時代に　三戸の南部家と八戸根城の南部家は

共に共存して時代を乗り越えてきた歴史がありました。

しかし、この転封を境に遠野の根城南部家は盛岡南部家と同格の大名としてではなく、

伊達藩との国境の警備を行うために遠野領一万二千五百石の領地支配を任された

いわば、代官的存在として明治の時代を迎えたのです。

毎年、五月の連休の初めに遠野では「さくらまつり」が行われるのですが

私も嘗てその祭りを一度見た事があります。

八戸から遠野への、あの非情な転封を再現した大名行列がありました。

その時、最後の殿様であった直義公が白馬にまたがっている姿が再現されていました。

そしてその馬に乗っているのは現職の遠野市長でした。

（当時は菊池市長・・遠野は南朝由来の菊池姓が多い）

これは清心尼という実際の功労者であった女性

今日はここまでとします。

岩手からの大包み届く