先のブログで昭和大恐慌時代の遠野の厳しい現状の写真に関するhamaさんのブログの紹介をしたがこの事については現代のことなので本旨に戻って遠野物語について話したい。

遠野物語の中で私が特に興味を感じたのは

６９　オシラサマ（映画遠野物語になった話し）

１７、１８　ザシキワラシ。

６３、６４　マヨイガ　　　　　　の話である。

今回はザシキワラシにふれる。柳田国男の文章をそのまま載せてみます。

１７　

旧家にはザシキワラシという神の住みたまう家少なからず。この神は多くは十二、三ばかりの童子なり。をりをり、人に姿を見することあり。土淵村大字飯豊の今淵勘十郎といふ人の家にては、近き頃、高等女学校にいる娘の旧家にて帰りてありしが、ある日廊下にて、

はたとザシキワラシに行き逢い大いに驚きしことあり。これはまさしく男の児なりき。

同じ村、山口なる佐々木氏にては母一人、縫物をしてをりしに、次の間にて紙のがさがさという音あり。この室は主人の部屋にてその時は東京に行き不在の折なれば、怪しと思ひて板戸を開き見るになんの影もなし。暫時の間、座りをればやがてまたしきりに鼻を鳴らす音あり。

さては座敷ワラシなりけりと思へり。この家にも座敷ワラシ住めりといふこと、久しき以前よりの沙汰なりき。この神の宿りたまふ家は富貴自在なりという事なり。

さて、次の１８の内容は私が岩手県に住んでいた折、しばしば訪れたとおの昔話村

（平成２５年４月に遠野物語の館としてリニューアルオープン）で

宇野重吉の渋い懐かしい声で映像と共に語られていたことが心に残って忘れられない。

当時の、とおの昔話村での宇野重吉の語りにネットでもこうした同感の思いが掲載されていて嬉しい限りであった。今の館ではもう、これは上映されていないであろうか・・・・。

今でも、私にとって、これが遠野での最高の思い出となっている。

←とおの昔話村宇野重吉と息子寺尾聡・・声がそっくりという

１８　

ザシキワラシまた女の児なることあり。同じ山口なる旧家にて山口孫左衛門といふ家には童女の神二人いませりといふことを久しく言い伝へたりしが、ある年同じ村の何某といふ男、町より帰るとて留場の橋のほとりを見馴れざる二人のよき娘に逢へり。物思はしき様子にて、

こちらに来る。お前たちはどこから来たと問へば山口の孫左衛門が処から来たと答ふ。

これからどちらに行くのかと聞けば、それの村の何某が家にと答ふ。その何某はやや離れたる村にて、今も立派に暮らせる豪農なり。さては孫左衛門が世も末だなと思ひしが、それより久しからずして、この家の主従二十幾人、茸の毒にあたりて、一日のうちに死に絶え、七歳の女の子一人を残せしが、その女もまた年老いて子なく、近き頃、病みて失せたり。←可憐な女児のザシキワラシ

この原因となったことが次の１９で語られている。

遠野物語の中で１７～２０にかけての一連の

文章にはなぜか深い人間の運命を感じるものがある。

１９　

孫左衛門が家にては、ある日、梨の木巡りに見馴れぬ茸のあまた生えたるを、食はんか、食ふまじきかと男どもの評議してあるを聞きて、最後の代の孫左衛門、食はぬがよしと制したれども、下男の一人が言ふには、いかなる茸にても水桶に入れて苧殻（おがら）をもちてよくかき廻して後、食へばけっしてあたることなしとて一同この言に従ひ家内ことごとくこれを食いたり。七歳の女の児はその日、外に出でて遊びに気をとられ、昼飯を食ひに帰ることを忘れしために助かりたり。不意の主人の死去にて人々の動転してある間に、遠き近き親類の人々、あるひは生前に貸しありといひ、あるひは約束ありと称して、家の貸財は味噌の類までも取り去りしかば、この村草分けの長者なりしかども、一朝にして跡方もなくなりたり。

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１７～１９の話は座敷ワラシの去っていく家の未来が予言され、その語りの中に悲運に付けこむ人の酷さや一人残された非力な女の子の一生が淡々と物語られているのが悲しい。

以前に書いた岩手郡の山林王に嫁いだ曾祖母の家の光芒も髣髴として思い出されて来て

物悲しい思いが募った・・・。

・・・こうしてブログを暫くぶりに書けることが嬉しい・・

遠野物語・・やはり深いなあ・・。

遠野物語２