　岩手県の広さについては先のブログで書いたことがある。県都、盛岡の高校で9年勤務した次の赴任先の高校は宮古市にあった。小学生の男の子二人と乳飲み子の娘を連れて山口団地というちょっと小高い場所にある住宅を紹介してもらってそこに引越した。いまだからアタリかもしれないが、やはり、三陸沿岸では津波が来ると言われていたのでちょっと小高い場所を選んだのである。もともと、高校の教員用の住宅は高浜と言われる場所にマンション風の住宅があった。赴任前にその場所に住む先輩を表敬訪問した時である。なんとその住宅の前に津浪避難道の案内図があったのである。結果として先の小高い丘にある住宅にしたことは家族の事を思えば当然だったかも知れない。約30年後の2011年あの大津波が襲った時、その高浜地区にあったマンション住宅は2階付近まで水が押し寄せたというのだから・・・。

宮古市重茂（おもえ）灯台に押し寄せる太平洋の荒波

　さて、宮古の土地柄は穏やかな人柄が多く、なんと近所のおばあさんが、さりげなく

「おおきに～」と言っているのである。新鮮な魚介類も10分も歩くと魚菜市場というところでいつでも手に入った。さて、新しい環境に慣れてきた6月のある夜の事であった。二人の男の子たちと布団に入って昔話の本を読み始めた時、家の近くでものすごい爆竹の音がさく裂し始めた。子供たちは怯えて、私に抱き着いてきた・・。

「大丈夫！お父さんがいるから・・」こう言いながら私はこの土地にもやはり、ツッパリみたいな連中がいて、鬱憤を晴らしているのだろうと半ば怒っていた。

　次の日、職場に出かけ、仲間との懇談の中で私は昨夜の爆竹事件の事を憤慨した表情で話した。すると、宮古出身の人柄の穏やかなS先生が「あのなっす（あのね）昨日の晩はお盆の前の行事で各家の前で爆竹を鳴らすんでがんす（ならすんですよ）・・・」

「それよりなっす（それよりも）お盆の時はお墓の掃除をした後にその墓の前で爆竹を鳴らすのがこの土地では当たり前でがんすよ」・・・・この話を聞いて私は早速、1時間目の授業の時まず最初に生徒たちに「君たちの中でお盆の時、お墓の前で爆竹を鳴らしたことがある者は手を挙げなさい！」と問うてみた。（実は私は日本史の教師であった）

結果は驚くべきものだった。なんと八割以上の生徒が「やったことがある。今もやっている」と答えたのである。岩手県の内陸生まれの私にとってご先祖さまの墓前で爆竹を鳴らす事などはあり得なかった。もし子供がそんなことでもしたら、お爺さんあたりから猛烈に怒られるのは必定だったのだから・・・。「何故だ？岩手の内陸部と海岸部でこんな違いがあるのなぜなのか？」そしてあることに思い当たった・・・。

　「そうか！」「そうだったのか」・・・続きは次回に・・

爆竹事件と異なる文化について