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第三回 『小西正樹くん』(漫画コース)


『作劇的人々』

高田:本日はモコピーこと小西君に来てもらいました。

小西:よろしくお願いします。

高田:前からお聞きしたかったんですが、なぜ小西君はモコピーって呼ばれてるんですか?

小西:僕の描く漫画に出てくる主人公の名前なんですよ。気に入ったんで自分のホームページ の名前にしています。

高田:長年の謎が解けたところで、質問に入らせていただきます。現在、小西君はギャグ漫画を描かれていますが、前からギャグ路線に進もうと思っていたんですか?


小西:最初はファンタジーや恋愛、旅漫画やギャグなど、いろいろなジャンルの漫画を描いていたんです。でもギャグ漫画が一番、評判が良かったですし、あとはやっぱり好きだった事もあって、ギャグで行こうと決めました。

高田:元から人を笑わせるのが好きだとか、そういうところはあったんですか?

小西:やっぱりギャグを描き出してから意識が変わりましたね。“いかにして目の前の人を楽しませてやろうか”を考えるようになったんです。

高田:ギャグ漫画のネタの発想ってどこから来るんですか。

小西:映画とか小説を読んでというよりは、日常生活での体験が多いですね。だから僕はいろいろな人との出会いを大切にしてるんですよ。

高田:小西君は、変わった人を寄せ付けるタイプらしいですね。

小西:自然と寄ってきますね。それを拒絶してたらネタにならないんで、変な人が来たらプロレスじゃないですけど「技を受けてやろうかな」と、そういうスタンスで付き合います。あとなぜかゲイの人から好かれますね(笑)

高田:今まで何度かタイに行かれてますよね。率直な質問なんですけど、なぜタイだったんですか?

小西:物価が安いというものありましたけど、何より人が面白いんですよ。

高田:面白いというのはどんな風に?

小西:例えばタクシーに乗ってても、運転手が後部座席に座ってる僕に顔を向けて、延々と日本のアダルトビデオの話しかけてくるんです。しかも話に夢中でほとんど前を向いて運転してくれないんです。あの時は、マジで死ぬかと思いました(笑)。


高田:まさに命がけですね。他にはどんな話が?


小西:あとこれはニュースでやってたんですが、タイでクーデターが起きて、大統領の家が軍に包囲されるという事があったんです。その時に仮面ライダーみたいな格好をした、タイのオタク五人衆がやってきて「ここは我々に任せろ!」って叫んだら、軍の人にめちゃくちゃ怒られたりとかもありましたね(笑) 

高田:日常自体がもうギャグなんですね。

小西:そうなんですよ。非常に刺激的でした

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高田:話を聞いていると自ら動いて、いろんな人とどんどん絡んでいこうという感じがするんですが、昔からそうだったんですか?

小西:元々、凄い人見知りする方だったんですよ。でもそれではいけないというのもあって、自分から違う分野の人と会うように心がけるようになりました。「異分野の人との交流を持て!」というのは中山先生の教えでもありますしね。

高田:塾でやっている授業が自分に影響を与えているなと、感じる事はありますか?

小西:そうですね。大喜利みたいな感じでお題を与えられて、それを材料にどう描くかという授業があるんですよ。発想のトレーニングには持って来いですね。それから、面白い話しにするための構成を勉強できる授業を受けてから、漫画のストーリー作りにも自信が持てるようになりましたね。

高田:小西君は以前に、企業の漫画の依頼を受けて、描いていましたよね。そこに至るきっかけを教えて下さい。

小西:異業種交流会の集まりに参加した時に、経営コンサルタントの方と出会ったんです。「僕は漫画の勉強しています」とポートフォリオを見せたんですが、ちょうどその方も、自分の書いたシナリオを誰か漫画にしてくれないかと、探しているとこだったんです。その流れで仕事を頼まれました。

高田:依頼されたのは、何ページの漫画だったんですか?


小西:120ページです。

高田:かなりの量ですね。どれくらいの期間で完成させたんですか?

小西:恥ずかしい話なんですが、初めての仕事で締め切りも定められてなくて、どうしていいかわからなかったんですよ。結局、半年も掛かってしまいましたね。でも完成した漫画をクライアントに渡したときに、「僕の書いたシナリオより面白くてわかりやすくなってる!」と評価していただけたんで嬉しかったですね。今でも、そのクライアントさんには大変感謝しております。

高田:依頼されたものよりも、更にクオリティーの高いものを仕上げるというのは大事ですもんね。もしまた企業漫画の仕事の依頼が来る事があれば、やりますか?

小西:もちろんやります! 画力、構成力、スピードは今の方が断然、上がってるんで、より良い物を作る自信があります。あと締め切りは絶対守ります。もし漫画描いてくれる人を探しているクライアントの方がいらっしゃいましたら、作劇塾までご連絡ください。僕が喜んでやらせていただきます。

『作劇的人々』

高田:最近、塾内で定期的にマンガの合評会をやっていますよね。具体的にどういう事をやっているのですか?

小西:二週間に一回のペースで、それぞれが作品を持ち合って批評し合うんです。ひとりプロの漫画家の人にも入ってもらって、意見をいただいています。


高田:どういうきっかけで合評会ができたんですか?

小西:自然な流れでしたね。中山先生の家で飲み会をしている時に、僕が「この日までにネームを描いてくる」みたいな話をしたら、じゃあ俺も、私もって感じで、みんなどんどん乗ってくれたんです。

高田:各々でやってくる課題が違うわけなんですか?

小西:やっぱり目指している賞がそれぞれ違うんで、それに合わせてという形ですね。

高田:主にネームを描いてくる?

小西:僕の場合、最近は二週間に原稿を一本仕上げるようにしています。プロに比べればまだまだ遅いのでもっともっと頑張りたいです。

高田:今、小西君はあるマンガ雑誌で担当が付いてるんですよね。

小西:はい。どんどんネームを送って見てもらっています。


高田:自分の中での手応えはありますか?

小西:以前から色んな人に竜頭蛇尾だという指摘を受けていたんですが、徐々にその弱点を克服できつつあるかなという感じがしますね。

高田:ますます今後の活躍に期待しております。


※次回は3月26日(木)アップ予定です。ゲストは小説コースの島奈世子さんです。





第二回 『青谷圭さん』(作家コース)


『作劇的人々』

高田:本日は“マシンガンお嬢”こと、青谷圭さんに来ていただきました。いつものようなマシンガントーク、期待してます。


青谷:誰がマシンガンお嬢なんですか? 私ほど、おしとやかな人はいませんよ!

(言いながらドンと机を叩く青谷嬢)


高田:ではそういう事にしておきまして(笑)。さて青谷さんはどうして作劇塾 に入られたんですか?


青谷:専門学校時代に中山先生に教えていただいていたのですが、卒業してからプロの方に見てもらう機会が減ったんです。その時、中山先生のやっておられる塾が頭に浮かびました。入塾前に中山先生に小説を見てもらう機会があったのですが、もっとご意見を聞きたいと思ったので、すぐに入ろうと決意しました。


高田:青谷さんは小説コースを受講されているわけですが、作劇塾小説の合評って、たくさん意見が飛び交うじゃないですか?


青谷:そうなんですよ。それも感情的な意見ではなくて、この作品をより良くしていくためにはどうしたらいいか? という建設的なものなんですよね。いろんな人の批評が聞けるので、俄然やる気になります。


高田:小説の合評というのは連載形式を取ってるんですよね。


青谷:そうです。みんなを納得させて、しかも中山先生のOKをもらわないと次の章には進めません。


高田:授業内で課題の小説を完成させたのは、青谷さんが最初だったんですよね?


青谷:はい。あとで数えたら合計枚数が三百枚(四百字詰め原稿用紙換算で)を越えてたんですよ。本を出版する時、基準となる枚数がだいたい三百枚ぐらいなんです。最初からそういう事まで想定している授業なんで、実践的だなと思いましたね。


高田:最近、毎月のように人が増えてきてるのもいいですね。


『作劇的人々』

青谷:やっぱり新しい人が入ってくると塾が活性化しますよ。色んな年代の人がいるというのも魅力ですね。大学や専門学校だと、同年代の人と接することが多いと思うのですが、十代、二十代の人もいれば、三十代以上の社会人の方もいらっしゃいますし、かなり幅広い年齢層ですね。


高田:青谷さんは、プロの方との交流を持つ機会が多いみたいですね。ある時期から急に増えたような気がするんですが、何かきっかけはあったんですか?


青谷:塾の方に『夢人塔』 のパーティーの誘いがあったんです。


高田:それはどういったパーティーなんですか?


青谷:クリエイターの交流会です。浅尾典彦さん という方が代表を務められる『夢人塔』が年に一度、関東と関西で開いてらっしゃるんです。その関西の方のパーティーに参加させていただきました。通常はプロのクリエイターじゃなければ、入れてもらえないんですけど、作劇塾の塾生ならという事で行かせていただいたんですよ。


高田:何でもそのパーティーでSF界の大御所である聖咲奇さん(雑誌『SF時代』を世に送り出したジャーナリスト)に噛みついたらしいですね。その辺りを詳しく教えてもらえますか?


青谷:私はファンタジーを書くのが好きなんで、聖さんにそのお話をしたら「ファンタジーは、いっぱい調べ物をしないといけないんで難しいよ」と言われたんです。


高田:それで何と返したんですか?


青谷:「難しくても大変でも、私はファンタジーが大好きなんで書きますよ!」ってついつい言っちゃいました。でもその後、聖さんが認めて下さったのかわからないですが、ファンタジーを書く上で役立つ、貴重な資料をいただいたり、プロの方たちの集う食事会に呼んでいただいたりしております。


高田:中山先生は常々、プロの人と交流を持つように言われてますよね。


青谷:以前からプロの方とどう関わればいいのかというのを教わっていたので、ただパーティーに参加するだけで終わらなくて良かったです。


高田:実際に、そこから交流が広まってますもんね。僕もよく驚くんですが「なんでこの人にお会いできるの? お話できるの」って感動するぐらいの有名なクリエイターの方が、塾にいらっしゃる事があるじゃないですか?


青谷:そうなんですよ。ハリウッド監督の清水崇さんが来られた時は、驚きましたね。一瞬「本物なんだろうか? 背中にチャックでも付いてるんじゃないか?」って疑っちゃいました(笑)。


高田:気持ちは非常にわかります(笑)。さてこれまでに何度か、小説の持ち込みをされている青谷さんですが、小説の場合、持ち込みとなると、編集者の人と面識がなければ難しいじゃないですか? それはどうやってお知り合いになったんですか?


青谷:これも実は『夢人塔』 がきっかけなんです。編集者の方が近くにいらっしゃったので、声をかけさせていただいたんです。そしたら偶然、その方の出版社がファンタジーを扱っている所で「ぜひ持ち込みさせて下さい!」と直談判しました。


高田:「自分は人見知りする性格だ」と普段よくおっしゃてますけど、話を聞いていると全然そんな感じがしないですね。


青谷:不思議とそういう状況になったら、人見知りがどっかへ吹き飛んじゃうんですよ。やっぱり、それよりも本を出したいという気持ちが上回っているんだと思います。


『作劇的人々』

高田:なるほど。最近、携帯の方で小説を書かれているらしいのですが、その経緯を教えて下さい。


青谷:塾生のBOMさんと一緒にやっているホームページ があるんです。BOMさんはそこにイラストを、私は小説を載せているのですが、ある日ホームページの方に『携帯小説を書きませんか?』という依頼のメールが送られてきたんです。条件を聞かせてもらったら、今後のステップアップになるかなと思えたので、書く事を決めました。


高田:現在、四本の長編小説を並行して書かれているそうですね。僕なんか一本書き上げるのに結構な時間を費やしてしまうんですが、どうしてそんなに量産できるんですか?


青谷:やっぱり“書きたいものがたくさんある”これに尽きると思います。最近では、書いている小説のキャラクターが、夢に出てくる事もあるんですよ(笑)。


高田:最後に今後の目標を教えて下さい。


青谷:今年中にデビューしたいです。一冊だけではなく、できれば年内に二冊、本を出したいですね。


※次回は3月19日(木)アップ予定で、ゲストは小西君 (漫画コース)です。


第一回 『武層新木朗さん』(作家コース)


『作劇的人々』

高田:本日は武層新木朗さんに、お越しいただきました。



武層:どうも、お手やわらかにお願いします。



高田:お聞きしたところ、新木朗の“朗”は中山先生の“市朗”から取られたそうですね。



武層:だからですかね。この名前にしてから怪奇現象に会う確率が高くなったんですよ。



高田:そんなところまで受け継がれたんですか。そもそも武層さんはなぜ作劇塾に入られたんでしたっけ?



武層:一昨年の夏『ゴー傑P』という大阪で人気のラジオ番組中山先生がゲストで 登場したんです。夏なので怪談を聞こうという回でした。私が中山市朗という名前を知ったのは、その時が初めてでして。



高田:その前から、怪談に関心はあったんですか?



武層:ほとんどなかったんですよ。でもその時に話された京都のお寺の出現する座敷童の話が、あまりにもリアリティに溢れていてグングン引き込まれました。なんだこの話術は? なんだこの人は? という感じで興味を持ったんです。それで先生の著書である『新耳袋』を読み出したら止まらなくなって。これは何かあるぞ、ということで

中山先生がゲストに来るというイベントの二次会に参加したんです。そのときに作劇塾の存在を知りまして。



高田:それがきっかけだったんですか。



武層:その後、作劇ネトラジ の配信も知り、聴いてみたらこれも深い。「これは塾に入らなあかんやろ」と。これだけ面白い話をする人なんだから、自分の人生の役に立たないはずがないと思いましたね。



『作劇的人々』


高田:武層さんは以前に、パソコン雑誌の方で漫画家デビューをされてましたよね?



武層:はい。4コマですが。



高田:でも漫画コースではなく、小説コースを受講されてましたよね。その理由を教えて下さい。



武層:得意な部分を伸ばすよりも、不得手なことを学んだ方が吸収することが多いかなと思ったんです。



高田:これを得られたという具体的なものがあれば、教えていただきたいんですが。



武層:やはり、授業第一回目に学んだ「作家性」が真っ先に来ますね。自分はこのコンテンツで何を伝えたいんだ? というのを打ち出すことが最重要だと。優れた作品には、場面設定から構図から全てにおいて、血脈のようにテーマがいきわたっているんですね。その理論を初代ゴジラと平成ゴジラ映画を見比べながら説明してもらいました。あれはわかりやすかった(笑) 。



高田:塾で得たものというのは、ファミ通で連載を持たれたとき、役立ちましたか。



武層:そうですね。かなり塾で学んだことが生きたんで、真面目にやっておいて良かったと思いました。



高田:ファミ通で連載を勝ち取るまでの、経緯をお聞きしたいのですが。



武層:編集部に「昔のゲーム機に流れる思想を探る、連載なんてどうでしょうか?」と企画書を持ち込んだんですよ。単なる構想ではなく、具体的な形で。



高田:それで見事にその企画が通ったわけですね。中山先生のお話では企画を100、200持ち込んでも、通るのはやっと1つか2つ。それぐらいの低確率らしいです。ちなみに武層さんは何回目の持ち込みで?



武層:修正を含めて2、3回くらいでしょうか。



高田:それってすごいですよね。



武層:たまたまですよ。タイミングが良かっただけです。



高田:謙虚ですね。



武層:だって僕より頑張っている人なんていくらでもいますよ。ちょうどファミ通が読み物を強化したいと考えていたときに、僕が偶然そこにいたというのが大きかったのでしょう。



高田:ファミ通でファミコンに至るまでのテレビゲームの歴史についてを連載形式で書かれるわけですが、それは別に連載のためとか、書籍化しようとか、そういう目的で調べられていたのではないんですか?



武層:それが不思議でね。未だに自分がなぜそれにこだわっているのか、正直言ってよく掴めていないんですよ。



高田:あえて理由を見つけるとすれば?



武層:「誰もかゆいところをかいてくれない。とほほ、自分で書くか」というね。世間の冷たさが僕を強くしてくれる(笑)。



高田:人がやっていないことを見つけるというのは大事ですよね。



武層:だから取材するしかないんですけれどね。けど、取材って面白いですよ。昔の開発者にここだけの話をガンガン教えてもらえる。



高田:ラッキーという要素もあるでしょうけど、やっぱりそれは行動されたからですよね。



武層:そうだと思いますよ。ま、中山先生のおっしゃるとおりに動いただけですけど。



高田:先生がよく言われるのは、武層さんはサラリーマンを経験しているから、営業の大切をわかっているということなんですが。



武層:先生のおっしゃることを聞き逃さない。これだと思うんですよ。授業料を払って、何をしに作劇塾に通っているかと言えば、当然ですけど学びに来ているわけです。だから先生が、これはやっておくべきだとされることを、実行するのは当然だと思うんですけどね。



高田:おっしゃる通りですね。僕もちょっと耳が痛いですが(笑) 武層さんにとって作劇塾を一言で表現するとすれば?



武層:“道場”だと思いますね。



高田:道場?



武層:はい。格闘家でも、強くなる人間っていうのは間違いなく道場で練習してるしょ? 練習して真面目にやった人が勝つんです。ものすごく単純なことですよ。



『作劇的人々』


高田:そう言えばファミ通の連載ページに武層さんの似顔絵を載せる欄があって、そこに描いてみないかと塾のOBや塾生に声をかけてましたよね? それで何人かが誌面デビューを果たしたわけですが、あれは塾への恩返しですか?


武層:強い組織っていうのは一枚岩だと思うんですよ。まず、前提としてみんな画力がある。プロの現場で描いている人もいる。だから、みんなで上にいければいいなというのが、頭の片隅にずっとあって、それで声をかけさせてもらったんですよ。余談ですが、この提案を一斉メールで、塾生に送信したのが「ど」の付くくらいの真夜中だったんです。ものの3分もしないうちに「やりたいから、さっそくカットの仕様を教えてくれ」と返信してきた塾生が何人もいた。あれは頼もしかったですね。



高田:クイックレスポンスというやつですね。



武層:こちらのテンションも上がりましたよ。負けてられないぞ、と。



高田:お互い刺激し合える環境というのが、作劇塾の良いところですよね。


※次回のアップは3月12日(木)で、ゲストは青谷圭 さん(小説家コース)です。


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