滑稽噺と人情噺とがある

昨年新春の

毎月数回は何かしらの落語会を観賞、という生活でまだ飽きない、熱しやすくなかなか伝導せず冷めやすい性格で

長く続いている娯楽は毎朝の長めのお風呂とウォーキング、お茶を少々

これに落語が加われば理想のジジイになれる、毎日できるルーティーンにならないものはなかなか続かない

みなメジャーな噺家さん、花緑さんの噺に泣けた、ドラマや映画のように映像があるわけではないのに

落語マイブームが四年目、講談と浪曲浪花節にまで派生して長い趣味になりそう、どの会も未知の演目が一つあるかないかくらいになった

多感な時期に聴いた歌は郷愁はあっても今は好んで聴きたいとは想わなくなった、平成の芸能に至っては興味がない、なぜか？

歳をとったせい、だと一言で片付くのかも知れない

演歌やフォークやロックは時代を共に生きていないせいか心に響くものは今もない、昭和の香りは苦手

ヒッピーに倣った長髪に長い襟シャツと裾広ジーンズという姿の映像は観るだけで目眩がする、対して任侠物は遠い世界の出来事として観れても

素手で喧嘩したら強いぞと言わんばかりの青年活劇も苦手、いい大人が煙草くわえて殴り合いの喧嘩か〜当時はカッコよかったんだろな、としか観れない

今年の正月から

戦後の洋楽の歌詞や格好は自由（反体制）の象徴で奇妙な映像に観えてしまう、それを真似たグループ・サウンズは滑稽に映る

なぜ和服姿に三味線という和芸能のテレビ映像が少ないのか？

戦後、講談をはじめ歴史噺の興行を一切禁止したという、講談はテレビ放映されることはなく著しく衰退した

戦前まで流行った義太夫節や浪花節と演歌とは似て異なる音曲

演歌は良くて以外はダメというラジオコードやプレスコードがあったことになる、演歌は純粋な日本音曲では無いような気すらする

講談界は女性講談師が半数を超過したという

ドリフや吉本新喜劇の昭和のお笑いドタバタも今観て苦笑いはしても笑いのツボには響かない

70〜80年代の懐メロを聴けばときめくかと想っているがやはり心に響くものはあまりない

平成の漫才は時代の流れにマッチしていたからこそ笑えた、ボケとツッコミという型が面白いわけではなかった、むしろあざとくうっとうしい

たけしタモリさんま欽ちゃんはテレビはその番組しかなく時代にマッチしていたのだろうが

今は心の底からは共鳴しない、莫大な芸の資産があるからこそ彼らの才能は今も支持できる

落語には林家三平ブームがあったようで、かすかに覚えているが今観聴きしても響いてこない

昭和の香りが芳ばし過ぎて、今の時代にマッチしていない、初期の笑点も同じ

今の笑点は私がまだ適齢に達していないのかも知れない、そもそもテレビの片方向タレ流しは身体に入って来ない

視聴者個々の感性にマッチしていないと面白味は感じない、大衆芸能や趣味の裾野は広がった

ネタになるような野球には興味のない人もいるし信長秀吉家康を知らない層もいる

日本の戦国時代を知らなくても三国志を知っていたり忠臣蔵の武士道がマイナーだったりする

古典芸能は誕生こそ古いが世代を越えてその時々に受け入れられたものだけが残っている

故に多くの人々の心に響く何かが存在している

アメリカンジョークや欧米のクールなギャグは、だから何？とシラケることが多かった

文化社会や歴史背景や習慣の異なる欧米のウィットに合わせることもなくピンとこなかった

タブーで笑いを誘うより箸が転んだだけでも、つまずいてコケた形や表情だけでも笑いをとる

その芸人さんが登場しただけで、笑いが溢れるのが日本のお笑いのいい所で世界に通用する可能性があるのかも

郷に入れば郷に従う、という諺が世界中にあるように、ここは日本ですからという反論がまかり通るようになってきた

快適な生活を世界標準の水準に下げる必要もないし、よりGDPの低い不便な海外で余生をおくる利点もなくなってきた

日本版ガラパゴスは新標準として見直されてきている、昭和平成標準だった真夏のネクタイスーツ姿は消えつつある

平成の子供たちは昭和の玩具ゲームやテレビ番組に熱中するという、知らないはずなのに親が面白かったモノは世代を超えて面白いようだ

同じような事が私にも起こっている、昭和を遡って近代・近世の芸能に興味がある

近年惹かれた落語や講談には新鮮味がある、私の身体の中に流行った時がなかったからなのだろう

しかしテレビで活躍していた噺家さんの創作新作ネタは私が生きた昭和の時代を感じる

テレビは流行った時期で止まっている、古典として残っている噺は世代を超えて共感するものがある、クラシック音楽のように

昭和平成の新作噺が古典となって数百年先まで残っていくかどうか？

社会風刺やボケとツッコミの原型は中世の狂言に観られ、時代劇やドラマの原型は歌舞伎や講談に見られる

お笑いの原型は近世の落語や川柳にたくさん観られる、明治の欧化政策で多くの日本古典芸能が衰退した

戦後のテレビはプレスコードや戦勝国への配慮と放送法での規制があった

現在は人権規制が厳しく外資やスポンサーへの配慮の自主規制もあるようだ

テレビ芸能は政治風刺の表現が厳しく政治経済歴史ネタに対して思考停止し一億総白痴化社会現象にまで至った

芸や芸人自体より芸能事務所や協会や業界の暗黙のルールが現代の一般社会常識から乖離したムラ社会に根本原因があるのかも知れない

南蛮欧米の道化師のピエロの役割は日本では幇間の太鼓持ちが近代までたくさんいたようだが現在は絶えた

明治から七十五年で戦後それから七十五年、古典芸能も欧米芸能の日本化も成熟し、残る芸のみが生き残ってきた

近世芸能全盛期には幕府公認の総元締めが存在した、将軍のお膝元の江戸では浅草弾左衛門が全業界を仕切っていたという

歌舞伎は弾左衛門から独立した歴史を辿っているという、戦後のテレビ芸能の芸能界や歌謡界お笑い業界さらに相撲や野球やサッカー等のスポーツ業界が今後も生き残るのかは興味深い

落語は笑えるし泣ける