「『フーガの技法』を聞いていると、死を前にしたバッハのつきつめた努力に、音楽が今まで誰にも見せることのなかった深所の扉をひらくようにおもわれてく る。これは結局未完成に終わったが、それはことによったら、音楽に神があらかじめ定めておいた運命なのではないかという気持ちさえするのである。ともあ れ、バッハの最後の作品が、こうしたものであったことは、バッハと、そして音楽に対する私の信頼を一層深くしてくれるようである。」

― 遠山一行 (「名曲のたのしみ」より)