私がこのサイトを開設したのは、2004年の10月だった。そのころは確か、ようやくブログが流行し始めたころで、ツイッターのようなサービスなどまだ想像もできないころだったと思う。


私がサイトを作った理由は、ここで私が書いてきたような内容を話し合える友人が欲しかったためだ。実際の人付き合いの中では、芸術や、人の生死について、 大真面目に話し合うなんて、なかなかできない。そういうことに本当に興味のある人は少数だし、たとえいたとしても、現実に面と向かってそういう話をするの はかなり気恥ずかしい。


サイトに文章を書いていれば、文字を通じてそうした人に出会えるのではないか。残念ながら、その淡い期待は全くといってよいほど実現しなかった。メールを下さった方はほんの数人いたけれど、それもそのとき限りのやりとりで終わってしまった。逆に、既に知り合っている友人がサイトの内容を見て、こんなこと考えてたんだねと、話のネタにしてくれたことはしばしばあったけれど。


ネット上で人と出会うのは、本当に難しい。待っているだけでは誰ともつながらないのは現実と同じだが、自分で行動して友人を見つけるには、ネットはあまりに広すぎると感じる。


それに、ネットが普及して私が思い知らされたのは、多くの人がどんなにか言葉と文字をひどいやり方で扱っているかという事実だった。友人を探したくても、ネットに関する検索技術は、そのサイトの文章がどれほど真剣に書かれたものであるかまでは評価付けしてくれない。


だから私の話し相手は相変わらず、ごくごく少数の友人と、他人が書いた本と、自分のノートのままだ。
仕方がないとはいえ、少し寂しい。