昔、世界は巨大な戦争により荒廃していた。
人々は、神の力を自在に操り、互いの領地を奪いあい、壊しあっていた。
それを見かねた神は、世界を分断することにした。
そうして、世界はいくつかの世界に分断され、それぞれの世界で、それぞれの文明、文化を築き上げていった。
ビッグバン
後にこの出来事は、「新世界の始まり」と呼ばれた―――
これは、分断された世界の中の、ある一つの世界での物語。
「よし、じゃぁ、今日も特訓を始めるぞ!」
「「「はいっ」」」
とあるお城の前に、6人の人影があった。
「じゃぁ、今日は最後の特訓だから、戦闘演習兼、第九代目神聖国王後継ぎ任命式をする。じゃぁ、鞠(まり)と惨(ざん)からだ!」
鞠と呼ばれた少女と、惨と呼ばれた少年が、近くにあった円形の砂場の中央に向かい合って立った。
「では・・・はじめ!」
それを合図に、鞠は体に風を纏い、惨に拳を放った。
惨はそれを難なく避け、右拳に炎を纏わせ殴り返した。
その拳は命中したかと思われたが、鞠がいたはずの場所を空振った。
刹那、惨の背後から、風でできた矢が降り注いだ。
ズガガガガガガァァァ!!!
風の矢は、惨もろともそこの地面を砕いた。
「っ・・・」
惨は体に無数の傷を負いながら、瞬時に手から棒状の炎を出し、一本の刀を造形し鞠に向け振った。
それを、軽々避け、鞠は瞬時に風の剣を造形して、惨に向け振った。
惨は、それをあとちょっとのところで避け、左手から、直径2mほどの火柱を出した。
ゴオォォォォ
その火柱は、鞠をも飲み込み、数十m伸びたところで消えた。
すると、そこには、軽い火傷を負った鞠がしゃがみこんでいた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
そこで――――
「やめっ!!」
教育係の銀(ぎん)が戦いを止めた。
「この勝負は、惨の勝利だ!」
「よっしゃぁ♪」
惨はすごくうれしそうに、ガッツポーズをした。
しゃがみこんでいる鞠のところへ、教育係の零(れい)が歩み寄り、声をかけた。
「大丈夫?まぁ、貴女のバトルスタイルと惨のスタイルじゃ、元々相性はよくなかったのよ。落ち込むことはないわ♪」
その優しい言葉に更に悔しさが募った鞠は悔しそうにうなだれながら、小さく返事をした。
「・・・はい」
「うんうん♪じゃぁ、回復してあげるわね」
そう言うと、零は鞠に両手をかざした。
すると、零の両手が幽かに光を帯び、鞠の火傷がみるみる内に治っていった。
「はいっ、これでよしっと♪じゃぁ、一緒に惨と煉(れん)の戦闘演習を見学しましょっ」
鞠はコクリと頷き、零の後ろを着いていった。
ビッグバン
―――この世界の人々は、「新世界の始まり」の時に存在した、神の力を使うことの出来る人の遺伝子が活性化、強化され、世界の約3分の2ほどの人々が神の力、あるいは、独自に進化した特殊な能力を使うことが出来た。
それ故に、この世界は三つの巨大勢力によって完全に支配されていた。
しんせいこく
一つは、煉、鞠、惨などのいる、世界平和をシンボルをして掲げる『神聖国』。
だあくこく
もう一つは、世界独裁をシンボルとして掲げる『堕悪国』。
はざまこく
そして、最期は神聖国、堕悪国を隔て、世界の均衡を保つことをシンボルとする『狭間国』。
狭間国は、どちらの見方でもない中立の存在であり、どちらもこの世界の不必要素だとゆう考えかたおしている。
神聖国と、堕悪国はお互いのシンボルが正反対なことから、冷戦が続いていたが、最近、狭間国に潜伏していたと思われる邪悪国の刺客がたびたび現れるようになったことから、緊張状態が続いていた。
―――場面は戻って、神聖国のお城の前
「じゃぁ、次!煉 対 惨の戦闘演習を始める!」
3人目の、教育係、雹(ひょう)が声を張り上げた。
ザザッ
煉と惨が対じする。
「では・・・はじめ!」
その合図と共に、惨は先制攻撃をしかけようと、煉の居たところに一気に大きな炎を立ち上げた。
ボフッ
「あっ!!」
周りでみていた鞠が思わず声を出してしまった。
だが、教育係の3人は静かにその行方を見守っていた。
炎が上がって、1~2秒経つか経たないかという、刹那。
ブシュゥゥゥゥ
炎は一瞬にして掻き消され、水蒸気が立ち昇る。
「なっ!?」
すでに勝ったと、早とちりしていた惨は目の前の光景が信じられずに、驚きの声を上げる。
その隙を逃さず、煉は一瞬で約10mはあったであろう間合いを詰め、勝ち誇ったような表情を浮かべたかと思った瞬間、惨の顔に強烈な横蹴りを決めた。
「ぐっ・・・」
煉の蹴りを受け、数m吹っ飛んだ惨は、しっかり受身を取り、煉の追い討ちをかわし、炎を纏う、強烈な右フックを繰り出す。
そのフックは煉の顔を捉えたと思われたが、次の瞬間。
スカッ
「えっ?」
ビキィィィィン
惨のフックは、空中を思い切り空振り、勢いでよろけた惨の背後から、巨大な氷塊が現れ、惨の体が宙を舞う。
「うっ・・・」
ドシャッ
不快音が響き、惨の体が地面に叩きつけられる。
それを見た煉は、勝ちを確信し、惨に駆け寄った。
そして、教育係が決着の合図を出そうとした瞬間―――
ボゥッ
惨の身体を巨大な炎が覆い、惨に触れようとした瞬間の出来事に、煉は反応しきれず、もろに炎に包まれてしまった。
「うっ・・・」
煉は一瞬のけぞったが、すぐに体制を整え、地面に両手をつき、瞬時に炎もろとも惨の身体を氷漬けにした。
「っふー・・・」
煉はやっと終わったというように大きく一息つき、氷を消し、教育係の方を見た。
教育係の銀が、終わりの合図を出した。
「そこまで!この勝負、煉の勝利!」
「っしゃぁ!!」
煉は天高く拳を上げた。
零はすぐ惨に駆け寄り、治療を行った。
―――そして
「よし、これでお前らの特訓はお終いだ。今まで、よくがんばったな。戦闘演習の成績から、お前らのチームは、煉をリーダーとし、惨は副リーダーだ!」
「はいっ」
「はい・・・」
はきはき返事をする煉に対し、惨はさっき負けたことを引きずり、かなり暗い声で返事をした。
「お前・・・いや、もう特訓が終わった今となっては、王子をお呼びするべきか・・・。なんだか、調子が狂うなッ、はは!」
銀は、少しかしこまり、高笑いした。
―――煉、惨、鞠の三人は、神聖国王の子孫であり、後継ぎであった。
鞠は、性別からもともと国王にはなれなかったが、煉と惨はどちらがなるかを決めなくてはならなかった。
そして、今回の戦いで勝利した、煉が後継ぎに正式に任命された。
―――場面は変わって、神聖城、王室
「うむ。それで、煉が私の後継ぎになるのか」
低く、威厳のある声が静かな王室に響く。
「はい、そうです。私の目から見ましても、煉は偶然勝利したのではなく明らかに、国王に相応しい能力、可能性を持っていると思えます」
煉たちの前とは違う、かしこまって礼儀正しい銀が国王に話していた。
その後ろでは、煉、惨、鞠、零、雹が立っていた。
「そうか。・・・では、煉、惨、鞠の三人には先日報告したように、レッドオーブ、グリーンオーブ、ブルーオーブの回収、保護に行ってもらう。いままでの、銀、零、雹との特訓で学んだことを活用、応用し、安全且つ、迅速に任務を遂行することだ!」
「「「はいっ!」」」
―――世界というのは、神によって作られた様々な色のオーブによって構成されたものだった。
オーブの中には、「異能」と呼ばれる、神の力ではあるが、この世界の人々が使っている神の力とは異なる、数々存在する神々が、一人一つしかもっていなくて、しかも、同じものはもう一つと存在しない、まさにその神特有と言える能力が封じ込められているのが、このオーブであった。
この世界だけでなく、ほとんどの世界が、レッドオーブ、グリーンオーブ、ブルーオーブからできている。
世界を作っているものというだけあって、もし、そのオーブが一つでも欠けてしまえば、世界はたちまち歪み、神のいる世界。
神世界へと、人々、動物などすべての物質が、はじき出されてしまい、神世界の特殊な大気などで、一瞬で消滅してしまうと言い伝えられている。
―――旅立ちの時
神聖城の前には無数の影が群がっていた。
「じゃぁ・・・行ってきます!」
煉たちは、城の中から、お見送りに来た人々に向かって、手を振った。
「おぉ、いってこい!」
「いってらっしゃい!」
「絶対戻ってこいよ―!」
「無事を祈っているわ!」
など、いろいろな声が上がった。
最後に――
「煉、惨、鞠。私はお前たちの父親だ。本当はお前たちをこんな危険な旅はさせたくなかった・・・。初めに謝っておく。すまない。どうか、無事に帰ってきてくれ」
コクッ
三人は頷き、そして、人々に背を向け歩きだした。
三人の辛く厳しい旅は、始まったばかりだ。