200929 五文の話
◇◇◇◇◇『五文の話』秋田県男鹿市戸賀提供 フジパン株式会社 むかし、あるところに話の好きな婆(ばんば)さまいたと。 あるとき、 「飽(あ)きるまで話聞かせてける人、いねぇべか。聞かへた者さ五文くれてやる」て、いったと。 ある人、婆の家さ行って、 「飽きるまで話聞かへるども、必ず五文呉(け)るのか」て、いうわけだ。 「ああ、呉る。早く聞かへれよ」 「ンだか、へば、聞かへる」とて、 「そろり、そろりと、あきしない。窓(まど)から顔(つら)など伸(の)べしない」 こういって、何遍(なんべん)も繰(く)り返すわけだ。 婆、 「それからよ」て、言っても、また、 「そろり、そろりと、あきしない。窓から顔など伸べしない」て、一晩(ひとばん)繰り返すわけだ。挿絵:かわさき えりとうとう婆、 「ああ、飽(あ)きた、飽きた。もう戻(もど)ってけれ、戻ってけれ」て、いったば、 「婆、約束(やくそく)だ、五文けれ」 「ああ、呉てやる、呉てやる」とて、五文呉てやったと。 婆、 「何と高けぇ話だ。金かかった話だもんだ」と、思って、 「そろり、そろりと、あきしない」て、ぶつぶつ一人でしゃべっていたと。 そこさ、盗人(ぬすっと)はいってきたと。したら、 「そろり、そろりと、あきしない」て聞こえるわけだ。挿絵:かわさき えり「なんと婆、まだ起きてたか」て、耳立てると、 「窓から顔(つら)など伸べしない」て、聞こえてきたわけだ。したら盗人、 「おや、わかってしまったか」とて、逃(に)げて行ってしまったと。 とっぴん ぱらりのぷう。 ※※※※※※※※※※