随分と久しぶりの訪問になってしまった。
1年とちょっと空いた内に変わったこともあるし変わらない事もある。

料理に関して言えば、
やはり「トロワグロ」であり
やはり、シェフが変わったと感じさせる。一年前とは違った個性を放っている。

ランチコースの料理を一度味わっただけではどこが新しいシェフの個性なのかを厳密に選別することは出来ないのだけれど
全体的な印象からすればフルーツや酢の酸味を活かした料理はこの店らしくある点は共通項。


印象に残った料理は前菜前に出てきた"イカとマンゴー“のシンプルな一品
イカとマンゴーの食感がクニャッとしていて、儚くも両者の味わいが溶け合っていく楽しさは飽きがこない。

フォワグラの前菜はフォワグラに存在感がある所がなによりいい。
パイナップルとの組み合わせはそれ自体は良いけれどうしても缶詰の印象が拭えないのが庶民舌のなせる業。
柚子胡椒の出過ぎない塩梅が程よい。

鯵の一皿は魚料理と言うよりは野菜の前菜で主菜にこれだけを選ぶと少々物足りないかもしれない。
それぞれの野菜がそれぞれに楽しいけれど飲まない人には少し味付けが強いのかなとも感じた。

牛肉は最近好きなので自分的にタイムリー。
アンチョビとバジルのペーストが効果的で印象的。

デザートはどちらも初夏のランチとすれば爽やかで良いのだけれど個人的な好みを言えば
デザート2皿目はやはり爽やかさよりも力強さを求めてしまうのは飽くまで好み。



システムとして変わっていた大きなポイントとして「パン」の事がある。
パンが料理の邪魔をしないシンプルなパンのみになっていた。

パンを選べる楽しみと捉えるか、
パンを料理に対する脇役と捉えるかは
飽くまで店とシェフの哲学によるものでどちらが良いと言う事は無い。

ちなみにバターはあの一輪挿しだけれど緩めだったような気がした。


久しぶりだけど久しぶりに感じられない
やはり魅力的な店だと思う。$ねあるこのひとり昼からのんだくれ
$ねあるこのひとり昼からのんだくれ
$ねあるこのひとり昼からのんだくれ
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2006年のオープン当初からCMTのヘッドシェフとして活躍していたリオネル・ベカがこの店を去ることになった。
いつか来るだろうと思っていたその日がとうとう来たわけなのだけれど、
その話を知って寂しさよりも期待の方が上回った。

いつ伺ったときも素晴しい料理を提供してくれる店なのだけれど
人は慣れるもので“慣れ”はそれはそれで一つの魅力なのだけれど
CMTに、リオネルに、今の私は“慣れ”を求めていなかったのかもしれない。

リオネルがCMTを旅立つ事は、
リオネルにとっても、CMTにとっても、必然であって必要だったのだと思う。

寂しさが無いもう一つの理由はリオネルが日本に残るという事もある。
この事については噂以上の事は知らないので今後の展開を楽しみに待つしかない。

そのリオネルとの1ヶ月程の引継ぎ期間を終えてCMTを任されたのが、ピエール・アルトベリ
メゾン・トロワグロ出身と言うわけではなく、既に日本のレストランでも働いた事があるそうで
龍吟に籍を置いていた時期もあるらしい。

厨房に姿を拝見した方がその方だと思うのだけれど
リオネルに劣らず見栄えのするシェフだった。

この日、新しいシェフ・ピエールと言葉を交わす機会は無かったのだけれど
フランスからミッシェル・トロワグロがいらしていて言葉に迷い無く太鼓判を押していたので期待したい。

前段が長くなってしまったけれど、この日は昼の訪問。
男二人という色気の無い訪問になってしまったけれどそれはそれで面白いランチとなった。

食前酒を頂きながら小さな3品を頂く。
どれもはじめていただく品ばかり、新しいシェフの作品になるのだろうか?
確認はしなかったけれどどれもCMTらしさを感じさせてくれる。
なかでも黒い一品は口に入れて噛んだ瞬間に笑顔を呼んでくれる一品だった。
できれば三品の最後に頂きたい。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ

注文はシンプルにランチコースとなった。
初訪問となる同行者はリオネル最後のランチコースメニュー。
私は新シェフ・ピエール氏のランチコースメニューを選んだ。
ただし、就任から間もないのでピエール氏の色はまだ出ていないようだ。

【アミューズ】
小さなアイスクリームのような塊がフォワグラ。
フォワグラといってもテリーヌのようなこってりとした味わいではなく
鴨からとったスープの味わいが良く感じられて初めの一品としてふさわしく感じる。
右に添えられたグレープフルーツとの取り合わせもいい。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ


【帆立貝のシャルロットと雲丹】
Wikipediaによると、シャルロットとは女性の帽子に見立てた洋菓子との事。
つまりは皿の上の白い帽子が帆立貝のシャルロット、その上に雲丹がまぶしく乗る。
帽子にナイフを入れると帽子の中からスープが出てくる。

「王様のレストラン」に出てきた“びっくりムース”はこんなイメージかな。
と懐かしい記憶が呼び出された。

帽子を形作っている部分も中のスープもアッサリとしていて、
というよりはアッサリとし過ぎているように感じて印象にも薄い一皿だった。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ


【イトヨリ鯛 モンドリアンカラー】
モンドリアンカラーとはオランダ出身の“ピエト・モンドリアン”の名前から採ったそうだ。
抽象画家である。
水平・垂直に交わる直線とその直線によって作られた長方形に彩色したもはやデザインのような作品。
そのピエト・モンドリアンの作品をイメージした料理。

イトヨリ鯛の美しい肌を隠してしまうのは勿体無い気もするけれど
その肌を鮮やかに三つのソースで色分けしている。

ここまでやったなら色と色との境界を黒い線で区切るともっとイメージに近づくのに・・・
というのはレビューを書く段になって“ピエト・モンドリアン”の作品を見てから思ったこと。

卓上でソースがかけられて料理として完成。
しっとりとしたイトヨリ鯛の身に彩々のソース
見た目にも味わっても魅力的な一皿。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ

【シャラン産の鴨 スパイスの香りと金柑】
コンガリとした皮目に淡いピンクの身、実に見事な火入れの具合。
その一言に尽きるような一皿は添えられたソースがこの店にしては、あっさりと仕上がっていて。
それもまた絶妙に感じた。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ


【プレデセール】
味のバランス、食感ともに申し分ないプレデセール。
惜しむらくは、ちょっと冷たかった。歯にしみた。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ


【アプリコットのパスティラ パン・ド・エピス】
新しいパティシエさんは日本の食材を好んで使うようで
このデザートには求肥が使われている。
この求肥が求肥を感じさせながらも単に求肥で終わることなく仕上がっている点が
求肥の分量が程よいこともあるし表面に火が入って香ばしさがある点もあるし
カダイフを添えることによって別の食感を合わせている事もあると思う。
シェフ同様、パティシエも替わったばかりなので本領発揮はこれからだと思うけれど、次が楽しみになる一皿。

ねあるこのひとり昼からのんだくれ


レモングラスのハーブティーで小菓子を摘みながら食事を終えた。


ねあるこのひとり昼からのんだくれ

初訪問となる同行者にも店の魅力が伝わったようで嬉しかったが
その同行者が選んだランチコースがまた魅力的だった。
見ているだけでその魅力が伝わってくるほど。

こうして二つのコースを比べるとやはり「リオネルの料理」には独自の色がある。

「青は藍より出でて藍より青し」

そんな事を言ってしまったらシェフ・ミッシェルがすねてしまいそうだけれど
リオネルの日本で綴る第二章が今から楽しみでならない。

そして、新しいシェフ・ピエールさんの料理がこれからどんな色を出していくのかも同じように楽しみでならない。

CMTのレストランとしての素晴しさは変わらない。