ここ数ヶ月本がなかなか読めません。

会社で必要に迫られて英語の文献を読んだりはしますが、趣味として読書を楽しむことがなかなかできません。

考えてみれば、うつを発症した時に最初に感じた異変は通勤中に本が読めなくなったことでした。

そんなわけで私の通勤鞄にも何ヶ月も同じ本が入りっぱなしになっていました。

それを今日やっと読み終えました。

澁澤龍彦 幻想博物誌
$メランコリー徒然草
澁澤氏はサド文学の翻訳で有名ですが、数多くのエッセイも遺しています。
この本はタイトル通りに、スフィンクスやクラーケンと言った幻想性物から、サイみたいに実存する動物まで、氏好みの趣くままに、中世ヨーロッパを中心に古今東西の文献を引用し、独特の魅力溢れる語り口調で解説してくれます。

面白いと思ったのは、有名なスフィンクスですが、実は2種類いるのです。
つまり、エジプトにある像で有名なスフィンクスと、ギリシア神話で有名なスフィンクスです。

エジプトのスフィンクスは人間の顔と獅子の体を持つ、王権の象徴だったらしかったそうです。
といいますのは、余りにも起源が古すぎて、紀元前1400年ほど前のトトメス4世王朝時代にもいろいろな伝説があっていろいろな解釈があったとされています。

ギリシア神話のスフィンクスはオイディプスへの問いで有名でしょう。
「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足であるくものは?」
このスフィンクスはエジプトのそれとは全く違って、女性であり立派な乳房を持っています。さらに翼まで持っていて、グリフォン的な要素を兼ね備えています。

歴史的な流れから言えば、明らかにエジプトからギリシアへと伝わったものです。

それと、面白かったのはサイの逸話です。
サイはインドの動物ですが冒険家として有名なバスコ・ダ・ガマがこれを捕らえてポルトガルに持ち帰りました。
これを当時の有名画家アルブレヒト・ヂューラーが書いたのがこの版画です。
$メランコリー徒然草
サイらしいと言えばサイらしいけど微妙に変です。
逸話によれば、長期間の航海で皮膚病を煩ってしまい、そのためにおかしな模様が書かれたようです。

ちなみに、この本の表紙に載っているのは、スキヤポデスというインドに住むという一本足の種族だそうです。