【内容】 マクロ経済に関する経済指標を集約・一元化して、分析・報告
日本・アメリカ・欧州・中国等について、金融・物価・雇用・消費・投資等の経済指標を収集・分析
【目的】 1.経済指標の集約・一元化→情報収集の効率化
2.経済指標の分析・報告→マクロ経済の動向の把握
【特徴】 1.客観性 経済指標というデータ=事実に基づき分析するため、報告内容に客観性がある
2.高精度 その経済指標の数が豊富(未掲載含め100前後)ゆえ、分析に偏りがなく精度が高い
3.分析力 大手銀行・コンサルティングファームでの財務他分析で培ったデータ分析力を活用
4.視覚化 分析結果を表・グラフ化=”見える化”しており、一目でわかる
【効果】 1.【目的】記載の通り情報収集の効率化・マクロ経済の動向の把握に役立ちます。
2.それにより会社経営・投資・ニュース視聴の際の判断材料を入手できます。
迅速・的確に経営・投資判断したい、テレビ・新聞の報道内容をうのみにせず自分で判断したい…そのときの判断材料としてぜひご活用ください。
米FOMC金融緩和を維持
アメリカは、雇用回復と物価安定に向けて、金融緩和(ゼロ金利と量的緩和)政策の維持を決定
FRB(連邦準備制度理事会)は14日、金融政策の基本方針を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)で、以下の2点を決定。
【決定内容】
1.ゼロ金利継続 最重要の政策金利=FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を、現行の年0~0.25%に据え置き。
2.量的緩和継続 前回会合で決定した6,000億ドル(=毎月750億ドル×8カ月(来年6月末まで))の国債購入実施を継続。
雇用・物価情勢に応じて、購入規模を調整する姿勢も維持。
【景気認識】
前回:「生産と雇用の回復ペースは引き続き遅い」
今回:「回復は継続している」=この点では認識を変更し、景気認識を引き上げた。ただし「失業率低下には不十分」とも指摘した。
上記金融緩和継続の方針は、この厳しい認識に基づくものとみられる。
【その他】
足元で上昇傾向にある長期金利の動向については、言及せず(※)。
※市場では、長期金利上昇について警戒感を示すと期待していた模様だが、言及がなかったため、引き続き国債が売られ長期金利上昇が続いた。
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以下FOMC声明の要旨
※()・太字・下線・改行・段開けなどは、私が独自に行っています。
(景気認識)
米景気回復は続いているが(※1)、失業率を引き下げるには不十分(※2)。
家計支出は緩やかなペースで増えているが(※3)、高失業率や緩やかな収入の伸び(※4)、住宅価格の下落(※5)、貸し渋りの影響で勢いは抑えられたままだ。
設備やソフトウェアへの投資は伸びているが、年初と比べ勢いは落ちている(※6)。
非住宅部門の建設投資は低迷が続いている。企業は依然として新規雇用には消極的。
住宅部門は引き続き落ち込んだ状態にある(※7)。
長期のインフレ期待は安定した状態を維持しているが、インフレは低下する傾向が続いている(※8)。
※1 実質GDP増減率(年率換算)2010年 Q1:3.7%→Q2:1.7%→Q3:2.5% 減速してはいるが、プラス成長は維持
※2 失業率 10/11:9.8% 前月比0.2%ポイント悪化 10%前後の危険水域で高止まり
※3 個人消費支出 10/10:前月比0.4%増加 09年以降概ね1%未満の微増にとどまる
※4 個人所得 10/10:前月比0.5%増加 09年後半以降1%未満の微増にとどまる
※5 S&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市) 10/9:前月比0.8%下落 3カ月連続下落
※6 製造業新規受注額・前年同月比 10/1:13.6%→10/10:8.9% 設備投資額は伸びてはいるが、年初に比べれば減速
※7 住宅着工件数 10/10:前月比11.7%減少 ピーク時の3割にとどまる
※8 消費者物価指数(コア指数・季節調整前) 10/10:前年同月比0.6%上昇 10/4以降1%未満の低上昇率が続く
(雇用・物価見通し)
FOMCは雇用の最大化と物価安定の促進に努める。
失業率は高く、インフレはFOMCが長期的にみて2つの使命の達成に適当と判断する水準よりやや低い。
物価が安定した状態で、資源活用はより高いレベルに緩やかに回復していくだろうと予測しているが、その目標への進行状況はこれまでのところ失望するほど遅い。
(金融政策方針)
<量的緩和>
景気回復の勢いを強め、インフレが時間とともに確実に適当な水準になるように、FOMCは11月に発表した通り、証券の保有残高の拡大を続けると決定した。既に発表した保有証券の元本償還金を再投資する政策を維持。6,000億ドル分の長期米国債を1カ月当たり750億ドルずつのペースで2011年第2四半期末まで購入する。
FOMCは今後の経済活動から証券買い入れペースと規模を定期的に再検討し、雇用の最大化と物価の安定に最善であれば、必要に応じて資産購入策を調整する。
<ゼロ金利>
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は0~0.25%に維持。資源活用の水準が低く、インフレ傾向が抑えられ、インフレ期待が安定していることなどから、FF金利は今後も長期間、異例の低水準が正当化される可能性が高い。
FOMCは景気見通しや金融市場の状態を引き続き注視。景気回復を支援し、インフレをFOMCの使命を達成する水準まで確実に戻すため、必要に応じて金融政策手段を行使していく。
決定はバーナンキ議長ら10人の賛成による。ホーニッグ・カンザスシティー連銀総裁は反対票を投じた。
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(景気認識)について、実際にその通りなのか、実際のデータを引用して検証してみました。
FRBの景気認識は概ねデータ通りだと言えます(そうでないとまずいでしょうけど…)。
新聞記事・ニュース、要人発言など、「本当にそうなのか」という視点で、実際のデータに当たって確認してみると、自分なりの視点で判断でき、経済の流れが見えてくる気がします。
こんな読み方もたまにはいかがでしょうか。
米NYダウ平均11月は1.0%下落
~ドル安・輸出拡大と財政拡大・金融緩和で株価は回復が続くが、需要不足で低水準、11月はドル高で株価下落~
【10/11】NYダウ工業株30種(月末終値):11,006.02ドル 前月比1.0%下落
【09年以降動向】09年以降概ね上昇が続くが、10年後半は上下が続き、ピーク時・景気悪化前の8割にとどまる。
【今後の見通し】上昇要因(緩和マネー流入、減税延長による財政悪化・景気回復期待)と下落要因(ドル高・輸出減速、景気減速)が交錯し、10,000ドル前後で推移し、本格回復には時間がかかる見込み。
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<2010年11月について>
月末終値:11,006.02ドル 前月比1.0%下落
傾向:3カ月ぶり下落 水準:ピーク時・景気悪化前(13,265ドル)の8割にとどまる。即ち傾向・水準ともに問題がある。
【09年以降の基調】
以下の国内外要因から、景気は回復傾向にあり(※1)、株価は概ね上昇が続いたとみられる。
・国外要因:FRBが追加金融緩和実施(※2)→政府も事実上ドル安容認→ドル安基調(※3)→輸出拡大(※4)
・国内要因:民主党政権の財政支出拡大で、景気下支え
しかし以下の悪循環から脱しきれず、ピーク時・景気悪化前の8割にとどまっているとみられる。
・約27兆円と言われる需要不足→物価低迷(※5)→企業経営にマイナス→株価にマイナス
・上記流れから、新規雇用(※6)・賃上げ(※7)・新規設備投資(※8)が困難→消費・投資低迷(※9)=需要不足…
※1 実質GDP増減率(年率換算)2010年 Q1:3.7%→Q2:1.7%→Q3:2.5% プラス成長維持
※2 11/2~3FOMCで、6,000億ドル米国債購入による量的緩和決定、開始済み
※3 円/米ドルレート 10/4:93.43円/米ドル→10/10:81.80円/米ドル 11.63円円高=ドル安進行
※4 輸出額・前年同月比 09/12以降11カ月連続増加
※5 消費者物価指数(コア) 10/4以降8カ月連続で低上昇率(1%未満)にとどまる
※6 失業率 10/11:9.8% 依然10%前後の危険水域で高止まり
※7 個人所得 10/10:前月比0.5% 09年以降減少or1%未満の微増にとどまる
※8 製造業新規受注額・前年同月比 10/1:13.6%→10/10:8.9% 10年以降減速傾向
※9 個人消費支出 10/10:前年同月比0.4% 09年以降1%未満の微増にとどまる
【10/11下落の要因】
主に以下の要因からドルが買われたため、ドル高円安となり(※10)、輸出企業の採算悪化し、株価下落したとみられる。
・アメリカの11月発表の経済指標のうち、雇用・個人消費等で改善が見られ、ドルが見直されドル買い要因となったこと(※11)
・新興国中心に世界から、米「金融緩和→ドル安→輸出拡大」(通貨安競争)が批判されていること
・アイルランド財政危機が改めて表面化し、欧州信用不安でユーロが売られドル買い要因となったこと
・中国がインフレ・バブル防止のため金融引締実施し、景気減速懸念が出て、人民元が売られドル買い要因となったこと
・北朝鮮の韓国砲撃で、「有事のドル買い」要因となったこと
※10 円/米ドルレート 10/10:80.68円→10/11:84.03円 3.35円(4.2%)ドル高に戻った
※11 10月 【非農業部門雇用増減数(速報値)】15.1万人増加(5カ月ぶり増加) 【小売売上高】前月比1.2%増加(4カ月連続増加)
<今後の見通し>(私見)
以下の上昇・下落双方要因が交錯し、10,000ドル前後で推移し、ピーク時・景気悪化前に戻るには時間がかかる見通し。
【上昇要因】
・11月以降実施のFRB追加金融緩和マネーが、株式市場に流入すること
・オバマ政権が共和党と大型減税(ブッシュ減税)2年延長で合意したため、財政悪化と景気回復期待で国債から株式へ資産シフトしていること
【下落要因】
・通貨安競争への世界からの批判、南欧財政危機、北朝鮮の砲撃等で、ドル買い要因が重なり、輸出採算悪化すること
・欧中景気減速懸念(※10)(→欧中株安)から、輸出減速(※11)
・中間選挙で民主党敗北し、今後は(上記減税除けば)財政支出拡大が困難となり、景気下支えが薄れる懸念
・上記悪循環の解消には時間がかかる可能性が高いこと
※10 実質GDP増減率(年率換算)2010年
【ユーロ圏】Q2:3.9%→Q3:1.9% 減速傾向 アイルランドの信用不安含め今後も減速懸念
【中国】Q1:11.9%→Q3:9.6% 減速傾向 今年7回目の預金準備率引上げ(金融引締)で今後も減速懸念
11月は円安による景気回復期待で国債売られ長期金利上昇
~11月は円安による景気回復期待で長期金利は上昇に転じたが、依然1%前後で低位推移が続く~
【10/11】新発10年国債利回り(月末値):1.190% 前月比0.253%上昇
【09年以降傾向・水準】09年前半は上昇→後半以降上下→10年後半は低下。ピーク時を5%以上下回る。
【今後の見通し】資金は溢れているが、景気は民需主導の自律回復に至っていないため、当面は安全資産の国債が買われ、利回りは1%前後で低位推移する見通し。
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<2010年11月について>
月末値:1.190% 前月比0.253%上昇
傾向:7か月ぶりに上昇に転じた 水準:ピーク時(6.619%)を5.429%下回る。
【09年以降の基調】
景気は回復傾向にある。しかし以下の国内外要因から、民需主導の自律回復には至っていない。
・国内:依然約15兆円と言われる需要不足→デフレ→企業経営にマイナス→雇用・投資に慎重→消費・投資低迷=需要不足…
・国外:欧米景気減速懸念+円高→輸出減速懸念
そのため…
・政府:税収不足を国債増発でカバーして資金調達し、財政支出を行っている(※1)。
・日銀:金融緩和継続(ゼロ金利・量的緩和)し、民間に資金を大量に流している(※2)。
ただし上記の通り民需不足→資金需要が低迷→銀行は貸出増やせず(※3)→低利承知で国債で運用。
※1 一般会計(当初ベース):前年比について 09年→10年
税収:-13.9%→-18.9%(減少) 国債発行額:31.3%→33.1%(増加) 一般歳出:9.4%→3.4%(増加)
すなわち、税収不足が続くため、国債増発を続け、(社会保障費等中心に)一般歳出増加を賄っている
※2 マネタリーベース・前年同月比 10/10:6.4% 26か月連続増加
マネーストック(通貨供給量)・前年同月比 10/10:2.0% 15か月連続2%台増加
※3 国内銀行貸出平均残高・前年同月比 10/10:-2.0% 11ヶ月連続減少
以上を踏まえると、以下の状況にあるといえる。
政府(発行者)の国債増発が続いているが、銀行等(購入者)に国債購入余力・意欲がある。よって、国債が買われて価格が上昇し、利回りは概ね1%台で低位推移が続いている。
【11月の上昇の要因】
11月の為替・株価・金利は以下の流れにあった。
ドル高円安(※4)→輸出企業の採算改善→景気回復(少なくとも悪化回避)期待→国債売られ株価上昇(※5)→国債利回り上昇
※4 米経済指標の改善、通貨安競争批判、アイルランド財政危機で欧州信用不安、中国金融引締で景気減速懸念、韓国砲撃など、ドル買い要因が
重なり、ドル高円安に振れた。詳細は「外国為替相場・2010年11月」の記事 に記載。
※5 日経平均株価 10/11:9,937.04円 前月比8.0%上昇
<今後の見通し>(私見)
12月上旬時点では、「円安・株高・国債利回り上昇」傾向が続いている。
しかし、上記基調に加え、以下の流れも考えられ、再び国債が買われ利回りが低下し、1%前後で低位推移する可能性が高い。
外国為替相場・対米ドル・ユーロ:2010年11月
~11月は南欧財政危機でユーロ安円高が続く一方、米雇用改善・通貨安競争批判等でドルが買われドル高円安~
【10/11】(東京市場・月末日終値)円/米ドル:84.03円 前月比4.2%円安 円/ユーロ:108.58円 前月比3.2%円高
【09年以降の傾向・水準】円/米ドル:09年円高→10年前半円安→後半再び円高。景気悪化前より3割(約34円)円高。円/ユーロ:09年以降概ね円高。景気悪化前より3割(約57円)円高。
【今後の見通し】ドル売り買い双方要因交錯し円/米ドルは80円台前半で推移、南欧財政危機でユーロ安が続き110円前後で推移する見通し。
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<2010年11月について>
円/米ドル:84.03円 前月比4.2%円安 傾向:7カ月ぶり円安 水準:景気悪化前(06年:118.92円)に対しては3割(34.89円)円高。
円/ユーロ:108.58円 前月比3.2%円高 傾向:2カ月連続円高 水準:景気悪化前(07年:165.71円)に対し3割(57.13円)円高。
すなわち、傾向としては(円/ユーロでは)円高が続き、米ドル・ユーロいずれに対しても3割円高となっている。
【09年以降の基調】
主に以下の国内外要因から、09年以降は米ドル・ユーロいずれに対しても1割円高となっている。
・国外要因:米景気回復のため、FRBが追加金融緩和実施し、政府も事実上ドル安容認→ドル安円高基調
・国内要因:約15兆円と言われる需要不足→物価下落継続(デフレ)→通貨価値上昇=円高基調
【11月の「ドル高円安」「ユーロ安円高」の要因】
(1)ドル高円安
主に以下の要因からドルが買われたため、円高が一服し、ドル高円安になったとみられる。
・アメリカの11月発表の経済指標のうち、雇用・個人消費等で改善が見られ、ドルが見直されドル買い要因となったこと
・新興国中心に世界から、米「金融緩和→ドル安→輸出拡大」(通貨安競争)が批判されていること
・アイルランド財政危機が改めて表面化し、欧州信用不安でユーロが売られドル買い要因となったこと
・中国がインフレ・バブル防止のため金融引締実施し、景気減速懸念が出て、人民元が売られドル買い要因となったこと
・北朝鮮の韓国砲撃で、「有事のドル買い」要因となったこと
(2)ユーロ安円高
上記の通り、アイルランド財政危機でユーロが売られ、円/ユーロの関係では円買い要因となったこと
<今後の見通し>(私見)
【1】当面
(1)円/米ドル
11月の上昇要因のうち、通貨安競争批判、欧州信用不安、中国景気減速懸念、北朝鮮有事等のドル買い要因は残る。一方12月発表の経済指標
で雇用回復の遅れが浮き彫りになり、ドル売り要因もある。そのため当面はドル売り買い双方要因が交錯し80円台前半で推移する見通し。
(2)円/ユーロ
アイルランドの他にも南欧諸国(ポルトガル・イタリア・ギリシア・スペイン)は財政危機にある。そのため欧州信用不安がくすぶり、当面はユーロ安
円高となり、110円前後で推移する見通し。
【2】基調
日経平均株価・2010年11月
~株価は、11月は円安で上昇に転じたが、基調としては円高・輸出減速とデフレ継続で減速が続く~
【10/11】日経平均株価(月末終値):9,937.04円 前月比8.0%上昇
【09年以降の傾向・水準】09年前半は回復続いたが、後半以降減速続き、ピーク時の3割・景気悪化前の6割どまり。
【今後の見通し】当面はドル売り買い双方要因交錯し、1万円前後で推移。基調は円高・輸出減速とデフレで低迷が続く見通し。
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<2010年11月について>
月末終値:9,937.04円 前月比8.0%上昇 以下の通り傾向は改善したが水準に問題がある。
傾向:2カ月ぶり上昇 水準:ピーク時(38,915.87円)の3割、景気悪化前(17,225.83円)の6割どまり。
【09年以降の基調】
景気は回復傾向にある(※1)。しかし以下の通り、国内要因(デフレ)で民需主導の自律回復に至っておらず、加えて国外要因(欧米中景気減速懸念・円高基調)で景気減速懸念が重なり、株価は低迷が続いているとみられる。
(1)国外要因
・欧米中景気減速懸念(※2)で輸出減速(※3)
・アメリカ景気回復のため、FRBが追加金融緩和(※4)実施し、政府も事実上ドル安容認→ドル安円高基調(※5)→輸出採算悪化(※6)
(2)国内要因
・約15兆円と言われる需要不足→物価下落継続(デフレ)(※7)→企業経営にマイナス→株価にマイナス
・上記流れから、新規雇用(※8)・賃上げ(※9)・新規設備投資(※10)が困難→消費・投資低迷(※11)=需要不足…
※1 実質GDP増減率(年率換算)2010年 Q1:6.6%→Q2:1.8%→Q3:3.9% プラス成長維持
※2 同指標 【アメリカ】Q1:3.7%→Q3:2.5% 【ユーロ圏】Q2:3.9%→Q3:1.9% 【中国】Q1:11.9%→Q3:9.6% 足元減速し、今後も減速懸念
※3 輸出額・前年同月比 10/2:45.3%→10/10:7.8% 8カ月連続増加ペース鈍化(減速)
※4 11/2~3FOMCで、6,000億ドル米国債購入による量的緩和決定、開始済み
※5 円/米ドルレート 10/4:94.18円→10/11:84.03円 10.15円(10.8%)円高進行
※6 10年度大企業製造業想定レート(短観) 9月時点:89.66円/米ドル 上記10/11レートに対し5.63円円高
※7 消費者物価指数(コア) 10/10:前年同月比-0.6% 20カ月連続下落
※8 完全失業率 10/10:5.1% 依然5%前後の危険水域で高止まり
※9 所定内給与 10/10:前年同月比0.1% 09年以降減少or1%未満の微増にとどまる
※10 機械受注額(船舶・電力除く民需) 10/9:-10.3% 09年以降一進一退(増減)続き、ピーク時の6割どまり
※11 2人以上世帯消費支出 10/10:前年同月比-0.4% 10/2以降特殊要因除き減速傾向
【11月の上昇要因】
主に以下の要因からドルが買われたため、ドル安円高が一服し(※12)、輸出企業の採算改善し、株価上昇したとみられる。
・アメリカの11月発表の経済指標のうち、雇用・個人消費等で改善が見られ、ドルが見直されドル買い要因となったこと(※13)
・新興国中心に世界から、米「金融緩和→ドル安→輸出拡大」(通貨安競争)が批判されていること
・アイルランド財政危機が改めて表面化し、欧州信用不安でユーロが売られドル買い要因となったこと
・中国がインフレ・バブル防止のため金融引締実施し、景気減速懸念が出て、人民元が売られドル買い要因となったこと
・北朝鮮の韓国砲撃で、「有事のドル買い」要因となったこと
※12 円/米ドルレート 10/10:80.68円→10/11:84.03円 3.35円(4.2%)円安に戻った
※13 10月 【非農業部門雇用増減数(速報値)】15.1万人増加(5カ月ぶり増加) 【小売売上高】前月比1.2%増加(4カ月連続増加)
<今後の見通し>(私見)
(1)当面
11月の上昇要因のうち、通貨安競争批判、欧州信用不安、中国景気減速懸念、北朝鮮有事等のドル買い要因は残る。一方で12月発表の経済指標で雇用回復の遅れが改めて浮き彫りになったため(※14)、ドル売り要因もある。
そのため当面は、ドル買い・ドル売り双方要因が交錯し80円台半ばで推移し、それに伴い株価も1万円前後で値動きが続く見通し。
※14 11月 【非農業部門雇用増減数(速報値)】3.9万人増加(増加ペース鈍化) 【失業率】9.8% 前月比0.2%P悪化
(2)基調
実効為替レート指数・年次
実効為替レート
1.定義
ある通貨について、幅広い主要通貨に対する総合的な価値を示す合成レート
※一般的な為替レート:ある通貨について、特定の通貨に対する価値を示すレート(2国間での通貨の交換レート)
国際的にドルが基軸通貨ゆえ、ドルとの交換レートを示すことが多い
2.目的
一般的な為替レートでは、特定の通貨に対する価値はわかる。しかしその通貨の世界各国・地域における総合的な価値(実力)はわからない。
円がドルとの関係では価値が高い(円高ドル安)としても、ユーロとの関係では価値が低い(円安ユーロ高)の場合もある。そこで、円について、ドル・
ユーロ等幅広い通貨に対してどの程度価値があるのか、わかるようにする。
3.種類
(1)実効為替レート指数
日銀が算出する主要58通貨の実効為替レート(2005年=100)
名目:物価変動の影響を調整せずに算出 実質:物価変動の影響を調整して算出
(2)日経通貨インデックス
日経新聞社が算出する主要24通貨の実効為替レート(2005年=100)
4.方法
その国・地域の貿易額等に応じて、複数の通貨に対する市場レートを加重平均し、基準時点を100として指数化
5.ポイント
・指数が上昇(低下)=通貨価値が上昇(低下)=通貨高(通貨安)
・その通貨の指数だけが高い(低い)=その通貨が幅広い通貨に対して買われている(売られている)=独歩高(独歩安)
・名目と実質の関係 レート=R
物価上昇(下落)=通貨価値低下(上昇)→名目R低い(高い)→ただし物価上昇(下落)除くと、通貨価値低下せず(上昇せず)→実質R高い(低い)
例:バブル期(89年)=物価上昇(インフレ)=円の価値低下(円安)→名目R低い(74.83)
→ただし物価上昇除くと、円の価値低下せず(円高)→実質R高い(122.79)
例:世界同時不況(08年)=物価下落(デフレ)=円の価値上昇(円高)→名目R高い(117.58)
→ただし物価下落除くと、円の価値上昇せず(円安)→実質R低い(107.41)
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以上一般論を踏まえて、実際の動向をみると、以下の通り。
80年代以降の30年間で、円の総合的な実力は上昇している。ただしデフレの影響が大きく、実質的には殆ど上昇していない。
・名目R:42.19(80年)→113.03(09年):2.6倍に上昇(円高) 長期傾向では物価下落(デフレ)→通貨価値上昇(円高)
・実質R:87.00(80年)→99.36(09年):1.1倍の上昇にとどまる 長期傾向では物価変動を除けば、通貨価値は殆ど上昇していない。
外国為替相場・年次・円/ドル・円/ユーロ
東京外国為替市場:円/ドル(各年12月末日・17時時点)
80年代前半は円安(1.3倍 84年:251.58円)。80年代後半~90年代前半は概ね円高(4割 94年:99.83円)。90年代後半~00年代前半は概ね100円~130円で推移。00年代後半は円高(8割 08年:90.28円)。
株価・金利(政策金利(短期金利)・国債利回り(長期金利))・為替レート・景気動向との関係は、論理的には以下のように考えられる。日本を例にとる。
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以上を踏まえて、実際の為替レートの動きを見ていく。
1.80年代前半:不況→好況<円安>
70年代以降経済成熟で低成長→その流れを受けて80年代前半は不況
「不況→好況」の流れで、好況となる。
2.80年代半ば:好況→不況(円高不況)<円高>
米国:80年代前半”双子の赤字”
・不況→減税・歳出拡大で好況→財政赤字拡大
・インフレ→金融引締(利上げ)→ドル高→資本流入・輸出採算悪化→経常赤字拡大→”貿易摩擦”
→85年プラザ合意:ドル安方向への協調介入(円買い)=円高
この背景のもとで、「好況→不況」の流れで、不況となる(円高不況)
3.80年代後半:不況→好況(バブル)<円安>
「不況→好況」の流れで、好況となる。加えて…
米国:経常赤字拡大懸念・利上げ観測→87/10米国株価暴落(ブラックマンデー)→日本株価も暴落
→景気減速回避のため金融緩和継続→大量資金放出(カネ余り)→インフレ・バブル(物価・資産価値高騰)
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4.90年代前半:好況→不況(バブル崩壊)<円高>
「好況→不況」の流れで、不況となる。加えて…
政府:不動産総量規制→資産価値下落→企業の不良資産・金融機関の不良債権増加→経営危機→不況深刻化
5.90年代半ば:不況→好況<円安>
「不況→好況」の流れで、好況となる
6.90年代後半:好況→不況(アジア通貨危機・不良債権処理遅れ・消費税増税)<円高>
不良債権処理遅れに加え、消費税増税、アジア通貨危機
「好況→不況」の流れで、不況となる。
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7.00年代初:不況→好況(ITバブル)<円安>
「不況→好況」の流れで、好況となる。
特に日銀:99年ゼロ金利実施。米国:90年代末からIT投資盛ん→日本にもある程度波及(ITバブル)→景気回復に寄与
8.00年代前半:好況→不況(ITバブル崩壊)<円高>
「好況→不況」の流れに加え、不況となる(ITバブル崩壊)。
9.00年代半ば:不況→好況(いざなぎ超え)<円安>
「不況→好況」の流れで、好況となる。加えて…
特に日銀:01~06年ゼロ金利実施。政府:大規模な円売り為替介入→景気回復に寄与。
10.00年代後半:好況→不況(世界同時不況)<円高>
「好況→不況」の流れで、不況となる。加えて…
米国の住宅バブル崩壊→金融危機→実体経済悪化→景気悪化に拍車。
11.00年代末:不況→好況<円安>
「不況→好況」の流れで、好況となる。ただし民需主導の自律回復とは言い難い。